煙草の煙が運んでくる、ほろ苦くも愛おしい想い出たち。
なんとなく憂鬱な帰り道。
コンビニの喫煙スペースの前を通る。
生ぬるい風が煙草の煙を運んでくる。
喫煙スペース以外でモクモクと、煙草の煙を吐き出すような人に出会ったときは、全力で息を止めて心の底からその人の不幸を願う。
そんな私だけど、吐き出された煙から風に運ばれてやってくるその香りだけは、実はそんなに嫌いじゃない。
儚げで、すぐに消えてしまう
ほろ苦い香り。
色んなものを1人で背負って、今にも潰れてしまいそうだった友達。けど、私は何もできなくて、ただ話を聞くだけで。そんな友達がいつも吸っていた煙草の香り。
本当はずっと好きだったけど、結局言い出せなくて、近くて遠かったあいつが吸ってた煙草の香り。
上手くいかないことがばかりで、毎日生きづらくて、でも誰にも頼れなくて、ベランダ1人、夜空に消えてく煙を眺めながら吸った煙草の香り。
煙草の香りが思い出させるほろ苦い想い出たち。
どうにかしたいのに、どうすることもできなくて、ただただ自分の無力を嘆き続けた過去。
けど、そんな過去すら今はどこか愛おしい。
いっぱいもがいて、いっぱい失敗して。
自分の弱さに絶望して、何度も立ち止まって。
自分の弱さを受け入れられず、全部誰かのせいにしたりもした。
戻りたい過去なんて、1つもない。
けど、そんな過去のおかげで今の私がある。
たぶん「今日」という日も、いつかの私にとっては、そんな風に思える日が来るんだろう。
そうやって、今日はまた新しい過去になる。
そうやって、今日という過去がまた1つ私の一部となっていく。
ありがとう。さよなら。またね。
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