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あきない世傳金と銀

ゴールデンウィークの真ん中くらいに、東京から通訳仲間が浦河まで遊びに来てくれた。彼女は通訳の仕事が忙しい中、茶道を本格的にやっていて、なんと我が家までお茶の道具を持ってきてお茶を点ててくれた! 桜咲く浦河の季節に合わせた綺麗なお菓子も持参してくれた。

上の桜の花びらのお菓子は薄氷本舗五郎丸屋のもの。とても薄いのだが、口当たりはどこかマカロンに似ており、不思議な触感、上品な味だ。金平糖もわざわざ3色をまぜてガラスの容器にいれてくれ、これがまたとてもおいしかった。色だけでなく、味も違う3種類の金平糖だった。とても丁寧に作られているという印象。そして美味だった。茶器の写真を撮り忘れているが、茶器も桜の模様で、薄茶を点ててくれ、とてもおいしかった。

こちらは桜の和三盆。箱を開けた瞬間、わぁっと声が出て、手元でお花見

我が家でお点前のおもてなしを受けるなんて、思いもよらぬことで、大興奮。お点前に招かれるのが初めての私は勝手が色々わからないものの、あれこれ質問をして、とても美味しくいただき、様々興味深く、楽しいひと時だった。

彼女とは毎年数回開かれるイベントの通訳で良く一緒になり、色々な話から、茶道をしていることやよく着物を着ることを知り、高田郁の『あきない世傳金と銀』という小説を紹介した。この本は呉服屋の話で、着物が分からない私でも面白いのだが、着物の柄や素材の話が出てきたときに、もっとわかる人が読んだら、より楽しめるのではないかと思って彼女に薦めてみたのだった。すぐに彼女もこの本を読んでくれて、楽しんだようで、それがとても嬉しかった。

その印象があったからか、彼女が帰った後、図書館で『あきない世傳金と銀』の13巻・完結編を見つけ、借りてきて一気に読んだ。どうやって完結するのだろうとずっと思っていたのだが、想像していたのとは全然違った。このシリーズの展開はいつも想像もつかなくて、それが面白かったのだが、最後まで楽しませてもらった。

このシリーズは半年に1冊のペースで刊行されていた。次がすぐにも読みたいのに、半年待たねばならなかった。13巻で完結だから、6年半に及んだわけだが、私はいつも図書館で借りており、人気がある本なので、東京では予約を入れても、なかなか順番が回ってこなかった。見たら、13巻は昨年8月に発行されていた。(東京だったら、予約してもまだ読めてなかったかも。それくらい待つんです。)

最初に読んだ高田郁の小説は『銀二貫』で、これがすごく良かった。次に読んだ『みをつくし料理帖』シリーズにすっかりはまってしまった。この本に出て来る料理(著者は必ず登場する料理は自分で考案、実際に料理してから書いていたそうだ)も、人物も大好きだった。いずれもTVドラマになって放送されていたと思うが、私は観ていない。本の雰囲気が好きで、それをこわしたくなかったからだ。どこか山本周五郎の小説のような雰囲気があって、ほろりときたり、胸のあたりがほっこりと暖かくなる場面がいっぱいあるのがとても良かった。

『あきない世傳金と銀』は、いとう呉服店(今の松坂屋)の十代目店主が女性であるところから着想を得て書いたのだそうだ。女性がビジネスをすることがなんら珍しいことではなくなっている今とは違い、色々な困難にぶち当たり、乗り越えて行く。でもやっぱり山本周五郎のような雰囲気があって、辛抱して時を待つとか、真向から戦い勝つというのとは違う、知恵としなやかさ、そして決して変わらぬ、主人公の商いの神髄を守り通す姿が良いのだと思う。

友人が来てくれるだけでうれしいのに、もてなすはずがもてなされ、共通の話題だった本まで思いがけず読むことができて、幸せなGWでした。

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