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大学進学に意味はあるのか

「とりあえず大学には進学してほしいと言われて・・・」

高校生から進路の相談を受ける時によく耳にする言葉。
彼らのその言葉の裏には、自分の想いと周囲の大人たちの期待に揺れ動く、複雑な感情が垣間見える。

現在の高校生の進学事情は、われわれ大人たちが経験した時とは大きく変わってきている。学校基本調査によると、過年度卒業者を含めた大学進学率は、今から30年前の1988年、現在48歳の方が高校3年生だった頃は25.1%、4人に1人が大学進学をしていた。一方で、2018年の過年度卒業者を含めた大学進学率は56.8%、つまり2人に1人は大学に進学している計算になる。「とりあえず大学には進学してほしい」という大人たちの想いは実を結んでいることになる。

大学進学率増加の裏で・・・

しかし一方で、問題も発生している。
一つは貸与型奨学金の返済問題だ。貸与型奨学金とは、返済義務のある奨学金のこと。つまり進学するための費用を一時的に借りることができる。

平成28度学生生活調査によると、大学昼間部の奨学金受給状況は全体の48.9%となっており、実に大学生の2人に1人は奨学金を借りている状況になっている。平均貸与総額は、日本で一番利用されている日本学生支援機構(JASSO)の場合、無利子の場合で236万円、有利子の場合で343万円だそうだ。この貸与額は大学卒業後に返済をしていく必要があるため、就職状況によっては返済が苦しくなるケースもある。

もちろん多くの場合は完済することが出来るのだが、中には返済が滞り自己破産をする人もいる。多額のお金を借りてまで、大学に進学する意味はあるのだろうか。


もう一つの問題は、高校進路指導の成果が「大学への進学率」で測られていることだ。NEWVERY「進路指導白書2017」調査結果によると「進路指導の成果がどのような要素で評価されているか」という問いに対して「非常に重視」と述べた割合が「国公立大学への合格実績が増えた」が34.9%、「入試難易度の高い大学への合格実績が増えた」が32.2%としており、調査項目の中で上位2つを占めている。

つまり大学進学そのものが高校進路指導の目標となっている傾向があり、結果として高校生自身にやりたいことがあったとしても大学進学を進めてしまう可能性がある。

大学入試が変わって何が変わるのか

2020年度、大学の入試制度が変わる。

今までの知識を問う内容から、思考力を問う内容へと変化する。
様々な情報が飛び交う中、高校生だけでなく保護者や教員も右往左往している。

それでも大学に行く。

大学進学しないと将来安定しない。
大学進学しないと将来お金で苦労する。

奨学金はいわば借金であり、返済する義務がある。そこまでして大学に行く理由はあるのだろうか。
お金を借りて無理して大学に行って、就職した企業を辞めたくても奨学金の返済があるから辞められないという話を聞いた。果たして、将来お金で苦労するとは。

入試制度を変えても、進学に対する考え方を変えないと変わらない。
外側ばっかりよくしても、中身が伴わないといけない。

どのように中身を変えるか。つまり、どのように進学を考えるか。

進学する理由を考える


なぜ大学に進学するのだろうか。そして周囲の大人たちは、なぜ子どもたちを大学に進学させたいのだろうか。子どもの幸せのため、将来のため、就職のため…?
大学進学をしないと優良企業に就職することができないと言われる。しかし昨今では大手企業と呼ばれる会社であっても経営危機に陥り、安定企業と言われていた会社であっても社員を減らす事態になっている。

先行きの見えない時代の中で、なぜ進学をするのか。

答えを出すよりも、まずはこの問いを進学しようとする全ての人に投げかけることから、進路相談は始まると思う。



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