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私の父は年下

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私の父の記録
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私の父は年下 5

私の父は年下 5

結局祖母は間に合わなかった。
連絡付かずで
父が亡くなったあと
叔母に祖母のいる家まで連れていってもらった。

朝方で
やけに静かだった。

隠してあった勝手口の鍵を手に取り
鍵を開けた。

落ち着いているような
焦っているような
変な感情だった。

「おばあちゃん、
…お父さんが死んじゃった…」

祖母は
慌てるふうもなく、
出掛ける準備をし出した。

「夢見とった。
○○(父の名)が遠くに行く

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私の父は年下 4

私の父は年下 4

…なんか騒がしい…
パタパタパタ、と…
誰かが走ってる…?

「…どうしよう…、お父さん…」

消え入りそうな震えた母の声で
一気に覚醒した。

ここは病室。
私は父の病室で寝ていた。

「〇〇さーん!」
カチャカチャとなにやら音が聞こえる中
女の人が
うちの苗字を呼ぶ。

時々、
鼻をすする音がする。

お父さんが危ないんだ、と感じた。

なぜかその時、
私は寝たふりを続けた。

そして、ひたす

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私の父は年下 3

私の父は年下 3

私が中学1年生の秋。

その頃父は
もう以前の父ではなかった。

釣りをすることも
パチンコに行くことも
麻雀をすることも
旅行に行くことも、

それどころか
会話をする事も
笑い合うことも

できなかった。

病院の個室のベッドの上で

天井を見つめるか
寝ていることがほとんどだった。

急にそうなったわけではない。
徐々に、
徐々にそうなっていった。

癌が
脳に進出してきたためだった。

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私の父は年下 2

私の父は年下 2

あれは
私が幼稚園年長の頃の2月。

もしかしたら
私の記憶違いかもしれないけど、

寒い、たくさんの雪があった
そんな時だった。

父は癌だと診断された。

幼稚園児の私が
癌というもを理解できてるわけもなく、
でもお父さんは病気なんだと
言う事は理解出来ていたと思う。

当時、父は33才。
母は27才だった。

その頃、たぶんまだ癌は若い人がなるのは
稀だった。

「まだ若いのに」
「ムスメち

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私の父は年下 1

私の父は年下 1

私の父は
40才でこの世を去った。

私が13才になる手前。

怒ったら怖いけど、
私に甘々な優しい父だった。

釣りが好きで
船を持っていて
何度か私も乗せて貰った。

パチンコが好きで
私も連れて行かれ
店の周りで
1人で遊んでいた記憶がある。
今なら考えられないけど。

麻雀も好きだった。
行きつけの雀荘もあって
なんとなくそこに行った記憶も
ある。

動物好きな父は
なんでも拾ってきてしま

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