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2023夏アニメ感想まとめ

2023夏アニメの感想をランキング形式でまとめています。


<31位> 白聖女と黒牧師

評価:B

お気に入りキャラ:セシリア

お互いに想い合っているのが周りからはバレバレなのに、本人同士だけがその一歩を踏み込めないなんとももどかしい”いちゃラブコメ”。大量に砂糖を吐き出しそうな展開の連続に胸焼けは必至だが、こういうのが正直一番感想に困るのもまた事実。”聖女”という立場がどうやらもうそれだけで職業として成り立っているようで、ほとんどニートのような様相すら時に呈しているセシリアであるが、「(大前提)セシリアは可愛い→(小前提)可愛いは正義」の三段論法に乗っ取れば、「セシリアは正義」なのである(論理の飛躍)。というか、セシリアは我儘でもなく図々しくもない文字通りの聖女であるので、むしろお世話をさせてもらうのがローレンスにとってもご褒美になっているのが真実である。作品としてキャラを立てようとするとかえってそういう方向に行きがちになってしまうが、そこをグッと我慢して素直な可愛さを愛でる方向に進んだのは正解だったといえよう。


<30位> 彼女、お借りします

評価:B

お気に入りキャラ:桜沢墨

まさかの3期…と言いたいところであるが、原作は世界累計1,000万部突破という偉業を成し遂げているそうなので順当な判断ではあるのかもしれない。正直、“レンタル彼女”という舞台装置を前提とした主人公とヒロインズの相関関係は2次元であるということを考慮してもやはり無理があり、主人公は(特に瑠夏との関係性において)クズ男以外の何物でもないはずなのだが、ヒロインズの可愛さでそれらを全て吹き飛ばしている感じだろうか(なお、千鶴の祖母の話についてはコメントは割愛)。いつも登場が唐突な癒し枠の墨ちゃんは相変わらずの愛らしさだったが、3期になって登場した大学の後輩のお隣さんの”みに”もユーチューバーよろしく現代風の設定ながら前のめりで面白いキャラであった。このようにヒロインズは各々一騎当千の実力を持っているので、“レンタル彼女”という舞台装置が本当に必要だったのかは議論の余地が大いにあるのではないだろうか。


<29位> フェ~レンザイ -神さまの日常-

評価:B

お気に入りキャラ:リュウメ

中国で大人気を博したらしい中国古代の伝説に登場する神仙妖怪たちが現代社会に溶け込んだ(?)ワチャワチャ感を楽しむショートギャク作品(の日本語吹き替え版)。お国柄、日本のアニメ制作に携わる機会も多いだろうし、研究という観点からも最後まで視聴継続した次第。日常系作品と言えなくもない内容であるのだが、これが日本の作品であったなら高確率で全員女性キャラになっていたであろう辺り、露骨な萌え要素は控えめに感じた。”放送規制”という表現は大袈裟かもしれないが、やはり心のどこかでブレーキがかかるのだろうかと考えると、我が国のクリエイターたちが「HENTAI」という服を着て下半身丸出しで堂々と歩いている様はやはり世界的にも特異点なんだなと改めて実感した。いや、ホント日本に生まれて良かった(表現の自由バンザイ)。この先、中国の作品のオリキャラで『あずまんが大王』の木村みたいなキャラが爆誕する日は来るのだろうか…?


<28位> ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜

評価:B

お気に入りキャラ:リラ・ディザイアス

25周年を迎えた「アトリエ」シリーズの人気作、『ライザのアトリエ』が満を持してアニメ化。そのムチムチでパツパツなライザの太ももには、「これが噂の太ももか~」と思わず凝視不可避だったのだが、露骨すぎず控えめにもなりすぎずという色々な方面に配慮したであろう制作陣の苦労と繊細な仕事が垣間見えて思わず「お疲れ様です!」と声を掛けたくなってしまった。ただ、華美な装飾が過ぎる衣装や様々なミッションを繰り返しながら錬金術師として成長していく過程など、ゲーム前提のキャラデザとストーリーは明らかにアニメ向けとは言えず、最初のインパクト以降は先細り感がどうしても付いて回った。これならいっそ一つのイベントにテーマを固定して、そこにアニメオリジナルの演出を加えることで世界観を深掘りした方が良かったのでは。安易な映画化はあまり好ましくはないのだが、本作品についてはそちらの方が良かったのではないかと思えてしまった。


<27位> ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜

評価:B+

お気に入りキャラ:三日月しずか

日曜の夕方にこんなブラックな内容をやるとは挑戦的な…という導入部(『小さい先輩』との格差よ…)からのゾンビ・パンデミックであるが、仮に本作品のような絵に描いたようなブラックな職場が本当にあったとして、それをこんな”現実逃避”で解消されても…という思いになる人がほとんどなのでは。ヒロインの閑を筆頭にキャラデザは抜群に良く、アニメーションとしての質は高かったのだが、その後も度々挟まれるブラックな職場を想起させるエピソードは気持ちの良いものとは言えず、そこからの解放というカタルシスは自分にはあまり実感できなかった。よって総合的には、社会人の立場からはエンタメ作品としては今一つであった。そして、その良質な作画を維持するためではあるのだろうが、終盤の数話は放送延期となり今期の作品としてはより微妙な立ち位置となってしまった。結局、社会人に見て欲しいのかそうでないのか良く分からない作品なんだよなぁ…。


<26位> うちの会社の小さい先輩の話

評価:B+

お気に入りキャラ:片瀬詩織里

こんな色んな意味で恵まれ過ぎている”甘々”な職場が世の中に存在するはずがないのは百も承知であるが、就活生には『SHIROBAKO』のような業界のリアルを見せるぐらいなら、本作品を推奨した方が良いのかしら…?当初はそうした内容にイライラとしていたが、そこに気分を害するのはもはや『キン肉マン』の物理法則にツッコむぐらい野暮なことだと悟りを開いた後は、完全に先輩の小動物的な可愛さを愛でる方向に頭のギアをシフトチェンジした。というわけで、本作品は「この物語はフィクションであり…(以下略)」のテロップを冒頭に入れるべきファンタジーであり、間違っても上司が率先して仲の良い男女の部下に有休をとって旅行に行くのを勧めた挙句、ついでに自分も同行してしまうというような状況は現実ではあり得ないことに注意されたい。作者が万一サラリーマン出身であるのなら、よほど辛い出来事がその時代にあったのだろうと愚察する次第である。


<25位> はたらく魔王さま!! 2nd Season

評価:B+

お気に入りキャラ:クレスティア・ベル/鎌月鈴乃

新しいキャラデザにも大分目が慣れてきて、一番映えるのはやはり鈴乃だという実感が深まった後半戦であるが、恵美を連れ戻すために魔王と相棒のように行動したり、”新生魔王軍・悪魔大元帥”を自ら名乗るようになったりと、どことなくヒロインムーブの匂いも漂ってきたのは嬉しい限り。バトルシーンよりも日常シーンが面白い作品であるというのは初期から変わらずの認識であるが、こうしたラブコメ色を演出してくれるならシリアスな展開にも見所を見出すことができた。反面、”異世界エンテ・イスラ”が絡む話になると影が薄くなりがちな千穂については、ヒロインレースからは逆に一歩下がってしまったという印象であり、最もキャラデザ変更のダメージが大きかっただけでなくストーリー上でも扱いが小さくなってしまったのは気になるところ。ED映像では相変わらず優遇されているものの、個人的には完全に鈴乃の方に気持ちが傾いてしまっている今日この頃である。


<24位> SYNDUALITY Noir

評価:B+

お気に入りキャラ:エリー

最近、めっきり影が薄くなったような気がするロボット系作品。その系統の作品は1話の時点で「あ、これは(見なくても)いいかな…」というハードルを乗り越えるのが最初の関門になることも多いのだが、本作品はポンコツメイガスのノワール、歌姫メイガスのシエル、幼馴染のエリー、エリーの姉でメカニックの師匠でもあるマリア、謎のグラマー美女のクラウディアなどなど、主人公の周りに魅力的な女性キャラが溢れ、適度に恋愛要素もあったので非常に見やすかった。また、歌姫メイガスのシエルについては『ラブライブ!スーパースター!!』の葉月恋役である青山なぎささんの歌唱力が光り、同作品をきっかけにこうしてキャリアを積み重ねているのはファン目線からも嬉しかった(なにげに初の他作品への出演だった模様)。反面、ロボット系作品としてのドラマはそこまで印象に残るものではなかったのだが、分割2クールということなので本当の山場はこの先にあると信じたい。


<23位> レベル1だけどユニークスキルで最強です

評価:B+

お気に入りキャラ:エミリー・ブラウン

他のステータスは壊滅的だが、ドロップスキルだけはSランクの主人公がなんやかんやレベル1のままでチート能力を獲得していく異世界転生もの。主人公の周囲に集まるヒロインたちが転生前の地獄のサラリーマン生活との対比の描写もあり非常に温かく感じられ、自然とほっこりするのでなんかやめられずに最後まで視聴してしまった。実際、ストレスフリーの実質的俺TUEEE系作品であるので、テンポ良く話を進めてもらうだけで十分だったのだが、最初(かつメイン?)のヒロインであるエミリーが(主人公のおかげで生活水準が激変したという恩義はあれど)男にとって都合が良すぎるぐらい純粋に主人公を慕ってくれて、かつ次から次へとヒロインを囲ってハーレム状態になっていくことに全く抵抗を示さなかったのにはちょっと物足りなさも。たまには嫉妬みたいな感情も描写してくれたらもっと魅力的なヒロインになったのに…と感じたのはきっと自分だけではあるまい。


<22位> ライアー・ライアー

評価:B+

お気に入りキャラ:姫路白雪

最強主人公が学生同士でランクを決める決闘ゲームにおいて頂点の7ツ星セブンスターとして無双するイキリちらかす…という建前の下、実は最弱ランクの落ちこぼれである主人公(虚勢や演技ハッタリの才能はあり)がイカサマやハッキングなど不正手段のバックアップを受けながら、とある目的を果たすために偽りの王者として君臨する物語。大筋では『ノーゲーム・ノーライフ』を見ている感覚にも近しいものがあるのだが、如何に不正カラクリを駆使して勝利するかの仕掛けの妙よりも、とにかく上手く相手を嵌めてやったぜという爽快感を味わう方向性に注力している感じであり、好みは分かれるかもしれない。特筆すべきは、主人公のお付きのメイドである姫路の一途な忠誠心と健気さであり、もうこの子さえ味方でいてくれるなら他は全員敵でも構わないと本気で思えてしまうほど。BD1巻のカバーイラストの姫路は珠玉の逸品であり(下記URL参照)、絵師のきのこのみ氏の描く太ももに一気にファンになってしまった。


<21位> ホリミヤ -piece-

評価:B+

お気に入りキャラ:河野桜 綾崎レミ

2021冬アニメにて完結した『ホリミヤ』の未放送エピソードの詰め合わせ。完結作品の延長戦としては理想的な一手なのだろうが、どうやら自分は本作品のストーリー性に惹かれていたようで、改めて登場人物のワチャワチャ感を深掘りされてもあまり刺さるものがなく、こと恋愛要素については結論が既に固まっているので先への期待感もなく、本当にキャラ萌え(男性キャラ中心)を求めているファンへのご褒美だと感じた。本編放送時は「石川×桜」のカップリングが好きで桜推しだったのだが、ストーリー性が皆無の本作品においては只の引っ込み思案の少女になってしまい、画面に登場する度に賑やかで容姿も愛らしいレミの瞬発力の方がむしろ魅力的に思えてしまった。ストーリーに仕掛けがあった作品のその裏話というわけでもない関係上、今回はこのような感想になってしまったが、試みとしては賛同したいので他作品でも同様の企画があれば是非進めて欲しい。


<20位> わたしの幸せな結婚

評価:A-

お気に入りキャラ:辰石幸次

”幸せ”とは何かということを改めて問う古き良き時代を思わせる純愛物語。ただ、どうしても自分には旦那様と美世の当事者同士にとっての…という意味合いが過ぎるような気がしてしまい、つまるところ只々幸次が不憫すぎるということである。本作品は、彼目線からは正真正銘のNTR物語であり、望まぬ婚約を受け入れた後にその相手からも用済み扱いをされるという(=ある意味二度目のNTR)あんまりな展開に憐れを通り越して愛しさすら込み上げてきた。香耶の至極自分本位な言動はともかくとして、美世がかつて虐げられていた時代にほのかに幸次に淡い感情を感じていたのもかかわらず、いざ”旦那様”という超絶ハイスペック王子様と懇意になると、私とあなたの間に何かありましたっけ?と言わんばかりのポカンとした表情を彼の前で浮かべたのにはほぼイキかけた。その時、自分だけは何があっても彼の味方でいようと固く心に誓ったのは言うまでもない。


<19位> ダークギャザリング

評価:A-

お気に入りキャラ:寶月夜宵ほうづき・やよい

本来、個人的には訴求力に乏しいジャンルであるはずのオカルトホラー系作品。それでも視聴継続に至ったのは、ひとえにキャラデザのポップな感じに惹かれたのは否定できない。これは、きっとキャラデザが自分の趣味趣向にどストライクだった『ソウルイーター』味に違いないだろう(特に夜宵の眼球の表現)。幼馴染の詠子えいこもヤンデレ&ストーカー気質の非常に良いキャラをしており、主人公への執着心がこれまたお気に入りの『未来日記』の某ヒロインを想起させるものがあり、色々と絶妙な噛み合い方をしてくれていた。一方、ホラー要素は割とガチ目の描写で恐ろしく、スプラッタとまではいかずとも呪いや血飛沫が飛び交う一歩間違えば即死のハラハラとするものであり、だからこそ悪霊たちに対して一見沈着冷静に淡々と対処する夜宵の異質さ(とある意味カッコ良さ)が際立っていた。総じて、ホラー要素以外での上げ幅が殊更に効果的だった作品だといえよう。


<18位> 死神坊ちゃんと黒メイド

評価:A-

お気に入りキャラ:ヴィオラ

坊ちゃんにかけられた呪いの真相には徐々に迫りつつも核心には中々至らず、何とももどかしかった2期。そんな中でもキービジュアルにも表れているように、”カフとザイン”、”ウォルターとダレス”という二組のカップリングがグンと進展したのは好材料であり、特に自称喪女のダレスが残念なイケメン次男のウォルターにゾッコンになってしまったのは、双方のキャラにとって良い影響しかないナイスな展開。これによって、ウォルターの夢見る乙女にとっての王子様気質が光るようになり、それに対して毎回顔を真っ赤にしてウブな反応を魅せるダレスが可愛くて仕方がなかった。彼女の顔のキズもチャームポイントのように思えてきたぐらいだが、これについては2次元的な要素が強いのかもしれない。3期も順当に決定したようで、いよいよ物語もクライマックスを迎えそう。今回の2期もむしろそのための下地作りとして受け取っているので、”二人”の行く末を楽しみに待ちたい。


<17位> デキる猫は今日も憂鬱

評価:A-

お気に入りキャラ:仁科理央

かつてゴミ屋敷生活をしていた仕事はできるが生活能力が壊滅的な会社員の女性主人公が、家事を完璧にこなす巨大な二足歩行の賢い黒猫と同居する話。猫の「諭吉」は擬人化されているというわけではなく、見た目は着ぐるみという感じであり言葉は話せない(理解はできる)のだが、『小林さん家のメイドラゴン』の亜種を見ている感覚に近いだろうか。段々と、これはもはや”共依存”というべきなのではと思えてくるような幸来さくと諭吉の互いにベッタリな関係性であるが、せっかく仕事のみならず生活能力も高い女性としてモテている(後半はほぼ諭吉のおかげ)のに本人にその気が全く無いのは、妙齢の女性としては非常に勿体無い限り。巨大な二足歩行の黒猫という存在を訝しがりながらも普通に受け入れている周囲も含め、様々なツッコミどころを収集するには最後は盛大な夢オチで締めるのもむしろアリなのではと思えてしまったのは自分だけだろうか…。


<16位> てんぷる

評価:A-

お気に入りキャラ:ミア・クリストフ

『ぐらんぶる』の吉岡公威先生原作によるかなりちょっぴり煩悩にまみれたドタバタラブコメ(『ぐらんぶる』の2期も待ち遠しい…)。尼寺への「出家もの」という新ジャンルを開拓したといえば聞こえはいいが、前期の『女神のカフェテラス』に引き続いての某五等分作品の亜種認定待ったなしのハーレム系作品である(ただし、連載開始時期の差は1年程度)。また、ヒロインの数も「5人」という黄金数を遵守しており、出版業界では企画マニュアルにその数字が確信めいて記載されていることもそろそろ本気で疑ってかかるべきかもしれない。この“5人全員”が“正ヒロイン”という絶対的正義は「推し」という要素を尊ぶ現代のオタク界隈の風潮に見事にマッチしてしまっていると言え、今後の考察課題にもしていきたい。お気に入りキャラに挙げたミアは髪型といい、若干頭が残念で騙されやすいところといい(褒め言葉)、某グリザイアのヒロインを彷彿とさせられて特に可愛かった。


<15位> 自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う

評価:A-

お気に入りキャラ:ラッミス ヒュールミ

異世界転生ものもついにここまで来たかと唸らされるタイトル出落ち系作品。碌に話もできない自動販売機に転生した主人公が少しずつ商品のバリエーションを増やしながら、異世界の住人に重宝されるというトンデモストーリーは、その実「その世界の常識を覆す新たな価値観」(=新鮮なリアクション)を愛でるというお仕事系異世界転生もののツボはしっかりと押さえている。そのため、多分に色物でありながらもそのユニークな内容に思いの外楽しめてしまった。自動販売機と一口に言っても、各種食べ物や風船やエ○本、掃除機や洗濯機、挙句の果てには酸素など、ありとあらゆるものを扱えてしまう多様性には雑学として勉強になる点もあり、作者の自動販売機への大いなる偏愛が見てとれる(褒め言葉)。放送時期的にも、本作品に刺激を受けて自動販売機のバリエーションや歴史について自由研究をまとめてしまった小学生もひょっとしたらいたかもしれないな(笑


<14位> るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

評価:A

お気に入りキャラ:高荷恵

大学時代に一度だけ原作を最後まで一気読みしたことがある勢なのだが(アニメは完全未見)、個人的には特に思い入れの強い作品というわけでもなかったので、『うる星やつら』の時のような懐かしさを内包するような感慨には至らず。そして、本作品も広義では「俺TUEEE」系作品に属するのかもしれないが、おそらくそれを是とするファンはどこにも存在しないであろう。それは、剣心が明治の世において自分のためではなく他人のために剣を振るう理由そのものであるであろうし、同時に「逆刃刀」という得物にその意味が凝縮されている所以である。アニメ作品としては、長編のバトルものである以上週一回のみの放送がもどかしくも感じられるのだが、果たしてどこまで続けてくれるのだろうか。制作方針によっては相当の長期放送になるかもなので途中で脱落しない保証はないのだが、粛々と一世を風靡した浪漫譚を現代社会において引き続き復習していきたい。


<13位> 青のオーケストラ

評価:A

お気に入りキャラ:小桜ハル

後半戦については、前期の感想でも指摘した”人間ドラマとしての脚本”や”音作りへの拘り”が、ようやく芽吹いてきた感はあった。しかし、「四月は君の嘘」や「響け!ユーフォニアム」に見られたような見る者を惹き込む”私とあなた”を軸にした感情表現や、「ピアノの森」に見られたような”演奏家”としての感受性などと比較すると双方共に弱く、あくまでも”オーケストラ”という舞台と素材としての面白さからは抜け切れていないように感じた。本人の努力は認めるし、父親の生き方に振り回された家庭環境にも同情はするが、天才の血を引く主人公はどこまでも”持っている”側の人間であり、その高みで普通の男子高校生のように悩んだり苦しんだりされても感情移入はしづらいものがある。そういう意味で、”等身大としての主人公”と”天才肌としての主人公”がどっちつかずとなっており、魅力として突き抜けるにはもう少し冒険をする必要があったのではないだろうか。


<12位> BLEACH 千年血戦篇ー訣別譚ー

評価:A

お気に入りキャラ:バンビエッタ・バスターバイン 井上織姫

原作最終章の「千年血戦篇」を最後までアニメ化してくれるという心意気に引き続き感謝であるが、単なる映像化にとどまらない現在のアニメ技術を惜しみなく投入したハイクオリティな作画・演出のみならず、そこかしこから”作品愛”が漏れ出ているように感じられるのが何よりも素晴らしい。それは、オサレスタイリッシュなOP映像と限りなくタイアップに近い(=過剰に作品の世界観に寄り添わない)楽曲をあえて選択するなど、これまでのアニメ作品としての『BLEACH』をもリスペクト&オマージュしている忠実さと誠実さであるからこそ、これだけ心地よく感じられるのだろう。そうした”分かっていて、弁えている”スタッフの自信と謙虚さに裏打ちされた制作環境があるのなら、この先も何も心配することなく安心して視聴していきたい。そして今更であるが、ベテラン声優陣の面々は壮観の一言。久々に折笠富美子さんや松岡由貴さんの声を聞けるだけで涙が出そうだぜ…。


<11位> もののがたり 第二章

評価:A

お気に入りキャラ:岐兵馬くなと・ひょうま

第一印象最悪の出会いからの婚礼調度たちとの和解やぼたんとのこそばゆい関係性へ至る過程など、エモさの伸びしろがあった1期と比較すると、バトル描写が中心となった2期は個人的にはちと物足りなかった。「ぼたんを守り通してみせる」と何度も覚悟を重ねがけする兵馬はその度に男前が過ぎラブコメの波動も半端ないし、婚礼調度たちのぼたんへの想いもグッと胸に来るものがあるのだが、1期の時点でそれはもう十分伝わっているので、もう少し変化球があっても良かったなと(具体的には、婚礼調度たちの誰かが兵馬に惚れてしまうなど…)。兵馬の兄と姉の命を奪った宿敵の姿も明らかになり物語としては核心部分に迫りつつあるが、上述のエモさを本作品には求めたくなるのが常なので、やはり最後の盛り上がりどころは婚礼調度たちが本懐を遂げるシーンになるかと。原作は全16巻で完結しているとのことなので、3期にて有終の美を是非とも飾って欲しい。


<10位> 幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-

評価:A

お気に入りキャラ:ヨハネ

個人的には、本コンテンツは劇場版をもって綺麗に幕を閉じて欲しかったため、願望の斜め上を行くようなイロモノを今更何故制作したのか…というネガティブな論調の感想になることを覚悟していた。しかし、キャラデザは何なら本編よりも自分好みであるし、あくまでも本編の予備知識ありきであるが「Aqours」のメンバーが”ヌマヅ”の世界の住人としてワチャワチャしているのを見るのは、ある種の”演劇”としては楽しかった。本編を知っていると、ほぼスベっていた記憶しかない”ヨハネ”の設定が普通に周りに受け入られていたり、その当人が礼儀正しく敬語で喋っていたりするだけでもう面白いのよね。また、これはテコ入れと言っていいのかもしれないが、表情に暗い影を落としたマリや、ミニサイズの妖精化したルビィのキャラ付けは実にハマっており、本編をリスペクトしつつキャラの魅力を再発掘する設定の改造改変の妙が光る想定外に優秀なスピンオフ作品であった。


<9位> 政宗くんのリベンジRリターン

評価:A

お気に入りキャラ:小岩井吉乃

”師匠”が可愛ければもうそれでいい。そう思えるぐらい後の要素はオマケに過ぎなかったというのが、個人的な所感であった。読者(視聴者)人気に押されての展開だったのかもしれないが、”豚足”発言の真相もなんのその、それすら逆に彼女の内に秘めた恋心といういじらしさをブーストさせる要素にしかならなかったのは作者も狙ってのことなのか。こうしてみると、やはり本作品もヒロインの階級に差異があった作品であったと言わざるを得ず、言うまでもなくその最上位に君臨していた愛姫と政宗が結ばれるのは既定路線であったのかと惜しい気持ちになる。そして最後に愛姫が髪を切り彼女と同じ髪型になったのは、作者の心ばかりの気遣いであったのかもしれない。”横恋慕”かつ”秘密の共有”、そして”巨乳”という強いカードを切り続けた”師匠”こと小岩井吉乃は最初から最初まで本作品の真の主役であり続けたと言えるであろう(原作もこれで終わりなのかな?)。


<8位> MIX MEISEI STORY 2ND SEASON ~二度目の夏、空の向こうへ~

評価:A+

お気に入りキャラ:西村勇&西村拓味(西村親子)

原作勢として前期から既に心に影を落としていた「とある展開」には辛い気持ちになるものがあったが、これをあだち充作品のセルフオマージュとして捉えるのはやはり早計なのだろう。ここまで来たら”信者”と言われても構わないとすら思っている自分であるが、これには投馬を筆頭とした「立花家」のドラマとしての意味と意図がきちんとあったのだと信じることとしたい。もう少しで原作に追いつきそうな辺りまで2クールの2期として放送してくれたのは近年のアニメ市場の実情を鑑みると破格の待遇と言って差し支えなく、何はともあれ満足感が一番上の感情となったのには感謝したい。こうしてみると、ドラマとしての面白さがやはり作品の魅力の根幹であり、作画や演出の素晴らしさといった要素はその土台の上に付随して成り立つものだとつくづく実感する。こうした”作家性”を前面に押し出せるクリエイターが、これからの時代にも引き続き求められていくのだろう。


<7位> 好きな子がめがねを忘れた

評価:A+

お気に入りキャラ:染谷成海

まず、目を惹かれたのはキャラデザの作画カロリーの高さ。ヒロインの三重さんの髪の毛の描き込みぶりはよくこれをアニメーションでいけると思ったなと感心するレベルであり、その絶妙にクシャっとしたボリューム感を毎回堪能させていただいた。原作絵とのギャップには賛否両論はあるかもしれないが、これもいわゆる「高木さん系」の作品と言ってよいだろうから、ヒロインの所作一つ一つにこれだけ注目したくなるキャラデザで描き上げた制作陣の心意気には拍手を贈りたい。そして、ド近眼の三重さんの小村くんへの(物理的な)距離の詰め方はピュアな中学生男子には刺激が強すぎるだろうから、家では我慢できていたんだろうかと下衆な勘繰りも…。総じて、自分を特別扱いして懐いてくれる女の子はどうしたって可愛いという王道を進みつつ、もはやわざととしか思えない三重さんのうっかりに象徴される”変な子”の魅力が満載のフェチズムに溢れた作品であった。


<6位> トニカクカワイイ 女子高編

評価:A+

お気に入りキャラ:有栖川かなめ

「こういうのを待ってた」を地で行く『女子高編』。「校」ではなく「高」なところにも大いに拘りを感じるが、ひたすらに星空ナサと司の甘いイチャラブを描き続けてきた本作品において、マンネリ化を打破する非常に効果的な”味変”になっていた。これがくっ付く前の話なら回り道にも取れてしまうのだが、改めて星空の基礎スペックの高さを浮き彫りにする「女子高の先生」という約束された勝利の展開にはニヤリを通り越してニンマリであったし、すっかり星空の愛情に慢心してしまっていた司の心にも焦りが生まれ、可愛らしいヤキモチや健気なアピールが見られるなど、正に「効果はバツグンだ!」の一言。若いエネルギーに満ちた女子高の教え子たちもゲストキャラにしておくには惜しい逸材の宝庫であり、特に銭湯回での髪下ろし姿は俺得が過ぎた。「可能性」が否定されているからこその下心皆無の王道展開は本作品ならではの強みでもあり、非常に良い試みの新作であった。


<5位> Lv1魔王とワンルーム勇者

評価:A+

お気に入りキャラ:魔王

復活した魔王が女性(基本幼女形態&外出時はムッチリ美少女に変身)だったのと、大空直美さんの小気味よいアフレコにより視聴感は上々。魔王を倒して10年後という月日の流れを盛大に感じさせる勇者のワンルーム生活は、さながら夢から現実に戻った落伍者であり、相応の年齢の視聴者が何かを感じ入るには十分すぎる絵面であった。その環境ですっかり不貞腐れた勇者がなし崩し的に魔王のお世話と激励を受けながら、今なお求心力を失わないかつての仲間たちと邂逅した後に、燻らせた何かをぶつけるように歪んだ世界にみっともなく歯向かう様は、腐っても”勇者”の姿であり一つのドラマであった。総じて、魔王と勇者のある種腐れ縁的な同棲生活や、かつての仲間とのやけぼっくいのロマンスを期待してしまった展開の妙などは見事であり、ダークホース枠として着実に評価は上がっていった次第。…というか、結局押入れの女性の幽霊は何だったんだ?(笑


<4位> 夢見る男子は現実主義者

評価:A+

お気に入りキャラ:芦田圭 佐城楓

この雰囲気を『俺ガイル』に例えるのはちと乱暴な気はするが、主人公の自己評価が低く冷めて達観の域に達していながらも言いたいことはハッキリという小気味良い性格がまず中心にあり、その周囲を魅力的な各ヒロインとの相関関係で包囲するという構図の完成度が非常に高かった。愛華メインヒロインの親友の圭は主人公との距離感が近い気さくな悪友ポジであり、デレる日横恋慕が待ち遠しかったのだが不発に終わったのはちと残念。また、主人公の姉の楓も『俺妹』の桐乃がもし姉だったら…を地で行く本当は弟が大好きなのに素直になれずに我儘で横柄な態度を取ってしまう愛すべき同類コンパチキャラであり、実はこれこそが最適解だったのではと今更ながらに深く感じさせられた。総じて、各ヒロインの立ち位置に明確に役割を持たせた作者の手腕が光る意欲作であり、ゲーム化によるルート分岐によりそのポテンシャルは花開くと確信できるので、関係者には是非前向きにご検討いただきたい。


<3位> 呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変

評価:S-

お気に入りキャラ:釘崎野薔薇

これだけMAPPAの本気を見せつけられたら評価せざるを得ない作画カロリーの高さには毎回のように唸らされるばかり。正に社運を賭けたといっても過言ではない気迫が伝わってきて、大ヒットした劇場版を経てストーリーそのものは基より作品としての”格”が確固たるものになってきたのを深く実感する。過去の話における五条と夏油の関係性というエモさは男性視聴者である自分には刺さり切らなかったところはあるのだが、”最強”となった五条とそれに伴う本人、そして周囲へと付加された歪みは本作品のメインテーマともなり得るべき事項であり、そのドラマ性は大きな見せ場になったといえるだろう。余談ではあるが、”制約と誓約リスクとリターン”という概念が呪術においても常識であるかのようにさらりと描かれるなど、やはり某作品の影響がそこかしこに見られるのは然りニヤリといったところで、その妙も味わいながらいよいよの”主人公(元祖)”のターンを楽しみにしていきたい。


<2位> 無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~

評価:S

お気に入りキャラ:エリス・ボレアス・グレイラット

あくまでも(オタクの)男性目線に振り切った評価という前提であるが、その”スケベ心”、”内なる悩み”、”黒い本音”など、大っぴらにはできない首肯すべき事項を重厚シリアスな物語に昇華させる作者の手腕は健在。今回の2期前半戦については、ほぼ全編を通じて”ルーデウスのEDの治療”が主要テーマとなっており、もはやナニが小さいやら大きいやら分からない矮小かつ壮大な物語であった。そこでの注目点はやはり、ロキシーとエリスという2大ヒロインが離脱し、言ってしまえば”後釜”は誰になるのかという点であったが、新たに登場したヒロインのサラはルーデウスと視聴者の双方にとって少し物足りないほぼ確信的な配置となっており、結末は苦々しくも案の定であった。シルフィについても個人的には同じ結末となるのではと予想していたが、前半戦終盤ではまさかの飛躍。このまますんなり彼女ルートに進むとは微塵も感じていないので、後半戦も引き続き非常に待ち遠しい。


<1位> BanG Dream! It's MyGO!!!!!

評価:S+

お気に入りキャラ:千早愛音

「バンドリ」シリーズの新バンド「MyGO!!!!!」の結成の過程を描いた新作アニメ。バンドとしての結束とはほど遠いギスギスストーリーがほぼ全編を通じて描かれるのだが、それがびっくりするぐらい面白く吸引力が抜群なのである。それはおそらく、相手を嫌悪して遠ざけるのではなく各々が自分の信念・心情を頑なに曲げない頑固さをぶつけ合う”迷子”であるから故であり、単なる”喧嘩”とは全く質が異なるからなのだろう(ある意味、バンドとしてのリアルという面からはむしろ然るべきと首肯できるもの)。これは正に脚本の偉大な力であり、ここに来て焼き直し感の全く無い「心地よいギスギス感」という新しい引き出しを「バンドリ」という作品の枠を越えて見せてくれたことに新鮮な驚きを感じた。これには関係性オタクは歓喜であったろうし、ほぼ『【推しの子】』で当確だと思っていた年間王者の座をがっぷり四つに組んで競い合える強力なライバルが出現したと言えるだろう。

【MyGO!!!!!メンバー総評】

高松ともり(Vo.)
独特の感性を持つ繊細な性格ながら極端な卑屈さは感じられず芯はしっかりしており、”弱さ”と”強さ”を同時に体現している不思議ちゃん。ボーカルにはバンドの”顔”としての役割が求められるが、彼女の放つ心の叫びが力強く周りのメンバーを引っ張る力を持っており、何よりその歌声を聴いた人間の心に深くグッサリ突き刺さる。

千早愛音あのん(Gt.)
自分の最推しキャラ。華やかでコミュ強のいわゆる”勝ち組”オーラを醸し出しているが、その実何かと不憫な役回りに陥ってしまうギャップがたまらない。立希からは強く、そよからは静かに邪険に扱われており、メンバー内のギスギス感の楔的存在。願わくば、変に仲良くならずにずっとこのまま変わらない関係性でいてもらいたい。

要楽奈かなめ・らうな(Gt.)
自分のしたいことだけをしたい時にしかしない野良猫そのものの燈以上の不思議ちゃんかつ自由人。ある意味ロックな性格とも言えるが、あのオーナーの孫ならなんか納得できてしまう。”おもしれー女”の燈に(一方的な)興味を示すだけでなく、本能的に頼れる存在だと感じたのか何気に立希に懐いており裾クイが非常に可愛い。

長崎そよ(Ba.)
本バンドの悪魔元帥ラスボス。一見、人当たりの良さそうな柔らかい物腰とは裏腹に内面はドロドロの毒舌腹黒ネキ。それもかつての「‎CRYCHIC‎」への強い執着故ではあるが、それ抜きにしても元々素質があったのは否定できそうにない。「なんで春日影やったの!?」は視聴者に大きなインパクトを与え、ネット上には単独で記事が作られた。

椎名立希たき(Dr.)
舌打ち常習犯で分かりやすく口も態度も悪いが、いもうとだけは大好きでドロドロに甘やかす優しいジャイアンお姉ちゃん。愛音に対しては、会話の返しが体感90%以上「は?」から始まり、燈を懐柔しようとする敵としてしっかり認定している模様。しかし、根は優しく映画版ジャイアンのように突如漢気溢れる姐さん化する可能性は存分に感じられる。


<劇場版3位> アリスとテレスのまぼろし工場

評価:B+

お気に入りキャラ:佐上睦実むつみ

岡田麿里脚本・監督による最新作。映画らしい映画として手堅くまとまっていると言えなくもないのだが、エンタメとして楽しもうにもメッセージ性のあるテーマを受け取ろうにも双方共に芯がはっきりしておらず、終幕後に純粋に「で、それがどうしたの?」という身も蓋も無い言葉が浮かんでしまったのが全てを表しているかと。鑑賞後に”ラブストーリー”というカテゴライズを目にして初めて「ああ、それがやりたかったのね」と思ってしまったぐらい恋愛要素も既視感アリアリの展開かつ中途半端であり、五実いつみ目線で語るべき恋愛作品だったのだと最後に気付いても時既に遅しだったのである。また、タイトルもどういう作風の作品か分かりづらいイマイチなものであったのは非常にもったいなかった(アリスとテレスとは?)。総じて、これを1クールアニメとして放送していたら虚無感に拍車がかかるだけだったろうし、まだ映画で良かったとまで思えてしまったのは誠に残念。


<劇場版2位> 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~

評価:A+

お気に入りキャラ:久石奏

2024春に放送が予定されている3期に繋がるショートストーリー。実質的に久美子の部長としての序盤戦となるが、若干頼りなさを残しつつも部員の課題点を見極めて実力を引き出す”観察眼”は、これまでもなんだかんだ揉め事に関わって来た「黄前相談所」たる所以か。本シリーズについては原作を一通り履修してしまったので、「う~ん…」となる部分も少なくはないのだが、”京アニだから何があっても安心”という意識を持たない数少ない視聴者でいようとはとりあえず心に決めた。具体的に言えば、つばめの弱点克服のくだりは原作に準じてもう少しじっくり描写すべきであったし、希美とみぞれの今の関係性についても描写を改変&端折ったせいでみぞれ側の一方通行の描写になってしまっていた。また、肝心の”アンコン”の演奏シーンもほぼ割愛されているなど、色々と省エネ感を感じずにはいられなかった。やっぱり、個人的には山田尚子成分が欲しくなるなぁ…。


<劇場版1位> 五等分の花嫁∽

評価:A+

お気に入りキャラ:中野二乃

初見ではまず時系列の確認から始まる、TVシリーズでは描かれなかった原作エピソードの映像化。特に、唯一最後まで風太郎に恋をするには至らなかった五月の姉妹たちに対するその想いと零奈の影武者としての四葉とのやり取りが改めて明るみになったのは、サービス映像以上の価値があったといえるだろう。その他、二乃&三玖のオープンラブ勢のこれからなんとしても落としてやるというバチバチ感はニンマリであったし、メタ的には”最後に選ばれる者”であることが周知の事実となった四葉の公園のブランコでの零奈の正体としての独白など、結末を知っているからこそより感慨深く感じられるシーンの数々はやはりサービス映像に留まるものではなく、多分に商業的な観点も匂わせながらも物語の補完要素としても非常に意義のある映像化であった。ただ、一花だけはさしたる見せ場も無くあっさり流されてしまっていた気がしたのは少し気の毒だったかなぁ…。


<2023夏アニメ総評>


今期は、個人的には『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』の一強と言っていいぐらい、その存在感は鮮烈の一言であった。これだけ、毎期に渡って多くの作品の感想を書いていると、過去にどこかで使ったような言い回しの引き出しを繰り返し使っているだけなんじゃないかという気分にもなってくるのだが、そのどれにも該当しない”心地良くてゾクゾクするギスギス感”という全く新しいエンタメ要素を提示してくれたのは称賛…いや、絶賛に値する。こうした過去に例のない試みをする際には、往々にして”奇をてらう”という表現が付いて回ることも多いのだが、なぜそれがこれまでになかったのかという理由を改めて知ることになったという結果に終わることもまた多い。しかし、これだけ多くの作品が溢れかえっている中で、既にほとんどの選択肢がやりつくされて頭打ちになっているんじゃないかという不安を吹き飛ばしてくれるような新鮮な面白さをここに来て味わうことができたのは素直に嬉しかった。正に、本作品は薄々気付いてはいたアニメ業界における閉塞感を打ち破った救世主的な存在となったのである。

今期の楽曲面でも、それをリードしたのはやはり『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』。OPの壱雫空ひとしずくはイントロの力強くて軽快なギターがあまりにもカッコ良くて一気に惹き込まれた。

前期において『僕の心のヤバイやつ』のヒロインの山田杏奈のCVを担当した羊宮妃那さんのボーカルによる、自分は世界からズレていて周りとは違う生き物なのかもしれないといった青春時代の孤独感や寂寥感に溢れる内向きな感情を「それでも…‼」と静かに力強く歌詞とメロディーに乗せた楽曲は大いに心に刺さるものがあり、ここに来てバンドリ史上最も自分の趣味趣向に合致したバンドが誕生したと本気で思った。ウィスパーでありながらしっかりと芯は感じられるそのボーカルは、もはやバンドというよりはアーティストと呼んだ方が相応しい気もする。ボーカルが必至すぎてなにが悪い。自分はその”心の叫び”に雷に打たれたような衝撃を受けたのである。

通り過ぎる時を 待つだけじゃなくて
僕は見つめていたいんだよ
無色でもそこにあるもの

【MyGO!!!!!「壱雫空」】

そして、実はそれ以上に気に入っているのが「春日影」。ストーリー上の楽曲の立場を考慮すると100%入り込むことは中々難しいものがあるのだが、あまりにも歌詞もメロディーも素晴らしすぎて本編のライブシーンは何度も見返してしまった。1stアルバムでは正式に「MyGO!!!!! ver.」として収録されるようなので、とても楽しみにしている。


『無職転生Ⅱ』のOP「spiral」も非常に素晴らしかった。OP映像はもうなんか冒頭から男の妄想丸出しみたいな感じで大いに気持ち悪かったが、それも含めて本作品の良さだと思っている。

その歌詞にも表れているように、『無職転生』は物語の重みが数多の異世界転生ものとは段違いである。転生前の不幸な人生描写はほとんどの作品での定番であるが、転生後もしっかりとシリアスシーンを煮詰めてくるのはさすがとしか言えない。そして、ルーデウスがそこから立ち直り涙を拭おうとするシーンでポケットから取り出すのがハンカチじゃなくて御神体ロキシーのパンツなのだから、そのセンスは正に神懸っている(笑

その他、お気に入りだったのは、『五等分の花嫁∽』のED「たからもの」。本作品の楽曲としては、ぶっちぎりでお気に入りである。正に集大成といった趣の楽曲であり、五つ子たちが順番にボーカルをリレーしていく構成がエモくてたまらない。下記の歌詞もベタな演出だけど、こういうのやっぱ好きやねぇ…。

一途な思いは 虹より美しく
さんざめき呼んでいる
ごらんよ輝きを

【中野家の五つ子「たからもの」】


今期は9月後半から忙しくて、記事の完成が遅れてしまいましたが、無事投稿できて一安心しました。そして、その間に秋アニメの新作がものすごい物量と勢いで積み重なっていって戦々恐々としている最中…(汗 これから巻き返していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。


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