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体験デザインのつぎ、「感情デザイン」(Customer Emotion)という考え方

が流行るか流行らないかはわからないが、そういう視点で仕事をしてみると良さそう、という話。

「感情の時代」が来る。

つまり、私たちはより五感に敏感になるし、快を求めるようになる。

そんな時代に、プロダクトやサービスはどのようにデザインされるべきだろう?なんてことを考えてみる。デザイナーではないですが、石川俊祐さんが『日本人とデザイン』で「すべての人がデザイナーだ」と書かれている通り、仕事をしている人ならばどんな人でも考えた方が良いと思うのです。

プロダクトやサービスの価値が、機能や見た目の美しさだけだと考えている人はもう少ないだろうけれど、課題解決とか、体験デザイン(CX)とか、自己実現欲求とか、それらの議論は最終的に「感情デザイン」に行き着くんじゃないかと思っています。

感情ってとても曖昧だ。自分がいまどんな感情なのかということさえ、すべてを言葉にすることはできない。さらには個体差やタイミングによる変動も激しい。変数がかなり多い。

だから、プロダクト・サービスの作り手側が使い手(カスタマー)に対して、一方的に「こんな感情になってほしい」と押し付けることを「感情デザイン」とは呼べません。むしろ感情は、作り手と使い手の(間接的・直接的な)関わりの中で生まれるものであって、共創に近い。

また、変数が多い分、カスタマーが五感で感じ取るすべての感覚・感情を想像しなければなりません。どこかに「不快」が転がっていないか点検する必要がある。

音楽は「聴覚」、服は「視覚」、レストランは「味覚」のデザインをすればいいかというと、それだけじゃ足りないってことです。だって、人は常にすべての感覚を受動していて、どれかを閉じるなんてことはないから。

どんなに「楽しい」「面白い」といったプラスの感情になるコンテンツがあったとしても、ひとつの「不快」がすべてを台無しにすることもある。

たとえば、どんなに美味しいレストランでも、冷房が寒かったら、お店が綺麗じゃなかったら、椅子が心地よくなかったら、トイレが臭かったら、BGMが耳障りだったら・・・もうそのお店に行くことはないですよね。

レストランは分かりやすく総合体験のサービスですが、最近はどんなモノゴトも、こういった総合体験になっています。映画の「IMAX」、音楽ライブ・フェス、ステイを楽しむホテル、アロマ岩盤浴・・・五感に総合的にアプローチしていこうという動きです。多分。

そういう視点で、ディズニーランドがどんなに最強かがわかります。作り込まれた世界観、入り口手前からアゲてくる楽しげな音楽(場所によってBGM違うのに全く違和感がないように相当設計されているはず)、キャラメルポップコーンの甘い香り、綺麗なトイレ、優しいスタッフ。なぜ、乗り物に1時間も2時間も並ぶのに、また行きたいと思ってしまうのか。五感すべてに配慮した、完璧な感情のデザインがなされているから、「不快」な行列体験があっても、総合的には「快」に変えてしまうことができるのです。多分。

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ディズニーランドといえば、この前 SOLSO FARM という、川崎にある植物園のようなグリーンショップに行って、とても感動しました。規模は小さいですが、いろいろなゾーンに分かれていて、楽しい音楽が流れていて、子どもたちが遊ぶ遊具がたくさんあって、ハーブ園からはいい香りがして、ミントたっぷりモヒートなんかも飲めて、もうそこは植物のディズニーランドみたいなんです。

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よほどのグリーン好きじゃない限り、植物のお店に行ってこんなに楽しい気分になることってそんなにないですね。楽しいから軽く1~2時間滞在してしまう。そうすると「植物のある暮らしってなんかいいよなあ」となり、やっぱりどれかを連れて帰りたくなる。そうして閉園時間にはレジに行列ができてました。思い返すと、感情デザインされていたなあ。


プロダクトも、総合体験だと捉えると面白い。たとえば、服も、見た目がいくら良くても、肌触りが悪いものや、手入れの仕方が面倒なものは、なかなか着たいと思えません。本も、中身だけでなく、紙の質や手にとったときの重さで、買うかどうかを決めるかもしれません。

繰り返しますが、感情はとても曖昧です。それこそグラデーションです。意識とは別の部分で感じ取っているので、無意識なことも多い。だから他人の「快」や「なんかいい」を作り出すのはとてもむずかしい。

それでも、相手の感情を想像して、自分の感情を込めて、それをできる限り設計するのが、すべての仕事の本質だとも言える気がするのです。

その実践として、イベントでは登壇者やお客さんが緊張しないようさりげなくBGMや調光こだわったり、できるだけ不自然なことは排除するようにしてみたりはしてます。私はまだまだですが、1消費者(使い手)として、一流のプロダクトやサービスに触れた時、自然と感情のデザインをやっていそうだなあと、そう感じます。


つづく。


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