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旅は余白が面白い 〜神人(かみんちゅ)さんちで晩御飯を食べたわけ@渡名喜島〜

予定を決めてあちこち行くのも好きだけど、最近、予定はガチガチに決めないようにしている。それは、その余白の中で面白いことが起こるから。地図を開いて、すでに知識で知っている場所を確認して歩くのじゃなくて、その時間・空間にいるからこそ感じられることを楽しむのさ。

偶然、島の祭りに当たってラッキー

人口400人に満たない沖縄の渡名喜島に訪れたのは、今年の5月のこと。聞いたこともない島だったけど、この島で奮闘している保健師さんを訪ねるというミッションをいただいて、初めて知った島だった。(知ってました?)

早速、渡名喜のことをググっていると、ちょうど島に行く日が、何と年一回の祭り「シマノーシ(島直し)」に当たっているではないか!ラッキーすぎる。そういえば、数年前に、娘と竹富島を訪れたときも、偶然「種取り祭り」に当たってて、ニュース番組にも映ってたりしたっけ。やっぱ、島にはご縁があるわ。

10分で集落を回れる自然の美しい小さな島

渡名喜島までは、久米島行きのフェリーに乗る。到着すると地域おこし協力隊のお姉さんが「ようこそ」の案内を持って迎えてくれた。

島の外周12キロと調べていたから、小さい島だとは知っていたけれど、両端に山があるために、集落は島の真ん中の一部で、徒歩で端から端まで10分もかからない。そこに、民家、役場、診療所などが詰まってて、民宿数件と食堂、居酒屋もある。予定をふらりと決めたい私は、食べるところがあるならと、素泊まりの宿だけ予約して、集落へ出た。

祭りはどこ?

「シマノーシ」は、渡名喜村のイベントページにしっかり載っているので、役場に聞けば場所とスケジュールがわかるだろうと、港近くの小さな建物に向かった。が、誰もわからない。「今朝から始まってる」「もう今日の分は終わったと思う」「場所は、かみんちゅさんたちが決めるから」「村の人がみんなやってるわけでないし」とはっきりした答えは返ってこない。何だ、村のイベントではないのか!「かみんちゅさん」って何だ?

それでも、せっかく来たのに諦めきれない私が、役場内の観光協会の方にしつこく聞くと、「かみんちゅさん」に連絡を取ってくれた。「かみんちゅさん=神人さん」はいわゆるユタで、シマノーシは彼女たちが中心になって行う祭礼。村人参加のイベント的な祭りではなかったのだ!しかも、今日の予定は全て終わっていて、明日の祈祷の時間は那覇行きの船の時間と重なってしまう。ただ、朝、かみんちゅさんが準備に集まる家に来てもいいよ、と。やった〜!

しかも、そのかみんちゅさんは、居酒屋を経営しているから、「夕飯そこに食べに行って、よく聞いて見たら?」と観光協会の方が勧めてくれた。やっぱり、素泊まりにしておいたのは正解だった。

いきなり夕食難民

夜の予定も決まったところで、渡名喜島を堪能しに出かけた。山に登り、植物を愛で、もう1つのお楽しみであるハーリーの練習見学。風が強い中、力強く漕ぐみなさんを応援しつつ、村のおじさんから島の成り立ちを聞いたりしているうちに、あっという間に日が暮れた。

さあ、「かみんちゅさん」の居酒屋で、ビールでも飲みながら、祭りのことを聞きに行こう。渡名喜島は、フクギが街路樹として植えられていて、夜はフットライトが美しい。集落は小さいので、お目当のお店はすぐに見つかった。

しかし、何だか様子がおかしい。19時30分といういい時間なのに、電気はついているけど、何だか閑散としている。「すいませ〜ん」と入って行くと、驚いた顔をしてこっちを見ている2人の女性が。「あら、今日はシマノーシの準備で休みなのよ。役場で聞いてきたの?まあ。」「宿でご飯頼んでないの?今日は、どこの店も閉まってるわよ。誰も教えてくれなかったの?」なんと〜〜〜!そう、誰も教えてくれなかったんですよ。そもそも、役場でここ聞いたのだし。ああ、予定は未定にしていてよかったと思ったところから急転直下。まさかの夕食難民に。

近くの商店が20時までやってるのと、唯一可能性のある食堂の名前を聞いて、「何もなかったら、とりあえず戻ってらっしゃいよ」という声に押されて、とりあえず行ってみることにした。

神人(かみんちゅ)さんちで晩御飯

食堂はやはり閉まってて、商店では菓子パンもバナナも売り切れで、飲み物とお菓子しかない。今頃、島の居酒屋で、美味しいお酒と魚を食べているはずだったのに、菓子パンにすらありつけず、空腹を抱えることになるとは。小さな島に行くってことを甘くみていた。。。

トボトボとかみんちゅさんちに戻ると、予想していたかみんちゅさんが「大したものないけど、うちでご飯食べてって」と食事を出してくれた。

このご飯の美味しかったこと!空腹は最高のソースっていうことだけじゃなくて、本当にスペシャルな夕ご飯だった。神様に捧げたお供えもののお魚に、かみんちゅさんが自家栽培した人参と大根(渡名喜に八百屋はない)の煮付け、地元の海で取れた貝の塩辛のようなもの。普段は、夕飯に米を食べない私も、全部しっかりいただいた。

ご飯を食べながら、シマノーシのこと、ユタであるかみんちゅさんがどうやって選ばれるか(父方の女性のみ)、白砂の島は霊の力が強いことなど、かみんちゅさんと親戚の女性の方から、たくさんのお話を聞き、また私の話も楽しんで聞いてくれれた。

余白から生まれた想像を超える出会い

もっと下調べをしていたら、予定通りの旅ができたかもしれない。思ったような島の祭りは見られなかったし、居酒屋さんで村の人と楽しく飲むなんていう妄想は実現しなかった。でも、そこには私の想像力をはるかに超えた出会いと唯一無二のミラクルなディナーが待っていた。

旅の計画に余白を残すこと。予定をこなすだけでは、その時間・空間だからこそ、私たちに与えられる出来事を受けとれない。つい短い旅だと、もったいないとあれやこれや詰め込みたくなるけど、ほら、1泊2日でも、すごい出会いがあったでしょ?自分の想像の旅なんて限界がある。「今」に身を任せてみようよ。






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