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いま観ておきたいアニメ 『地球少女アルジュナ』

もう少し早く気づいていれば 助けられたかもしれない。 もう少し早く気づいていれば 守れたかもしれない。 

当たり前の真実を。 もう少し、早く……

これは『地球少女アルジュナ』というアニメの主人公の台詞です。
コロナウィルス感染拡大、温暖化…様々な問題と直面する今、このアニメ作品をよく思い出すのです。

今から20年ほど前の2001年にテレビで地上波放送された作品なのですが、実は阪神淡路大震災前にできたお話だというのが驚きです。

あのマクロスの河森正治監督作品で、当時では珍しいCGが使われていたりと映像も美しく、音楽も菅野よう子さんが制作されています。
文化庁メディア芸術祭 平成13年度「審査委員会推薦作品賞」受賞作品です。

いま観ても贅沢で大好きな作品なのですが、残念ながら放送された当時は問題作扱いをされていました。
簡単にストーリーをご説明しますと、事故に遭い臨死体験をした女子高生が、地球の様々な問題が見えるようになってしまうというものでして。
当時の視聴者からは怖いとか、説教臭いとか、宗教みたいとかいわれて、果ては放送自粛とか……(うう、悲しい)。

まあ、確かにですね。第一話から原発安全神話への問題提起からはじまり、農薬、遺伝子組み換え作物、化学物質汚染、海洋汚染、土壌汚染、プラスチック汚染と……扱われた内容を活字で列挙してみるだけでも、よくスポンサーありきの地上波で放送できたなと。
ところが、その10年後。放送コードぎりぎりだといわれたワードがテレビのニュースから頻繁に流れてくることになるのです。

「メルトダウン」

咄嗟に耳を疑い、目の前が真っ暗になりました。
この言葉の意味を、私は本作によって知っていたからです。皆さんもご存知の通り、安全神話が打ち砕かれた瞬間です。

それからまた10年のうちに、海では魚の重量よりもプラスチックが上回るだの、氷河が溶け出し動物が死んでいるだの、洪水でまちが流され、大規模な森林火災が発生し、殺人ウイルスのコロナが猛威をふるいロックダウン……まるでアニメの主人公が見て体験したことがそのまま現実で起こっているようです。

主人公の少女は、真実を知れば知るほどに人間社会で生きづらさを感じます。たった一人ぼっちの孤独のなかで、地球の危機と対峙するのです。
それだけ現代の人間社会は、地球本来の営みと乖離して成り立っているわけですね。その狭間に立つ少女は、なかなか正しい選択を見い出せません。

実は私もそのような経験があります。コロナ禍の巣ごもり生活のなかで化学物質過敏症なるものを発症してしまいました。
隣人の香り付け柔軟剤に次第に咳き込むようになり、今では微量の人工香料とすれ違うだけで咳発作が生じます。コロナ禍で咳をすれば周囲を不安にさせてしまうので外出もままなりません。
最も辛いことは、医師の診断書をみせて誰でも発症する可能性があるのだと説明しても、商品として売られているものに害があるはずはないと周囲の理解が得られないことです。
確かに自身も、この立場になるまでは知りませんでした。事実、人間が呼吸困難に陥る危険物質にさえ、いままで気付くことができずにいたのです……。

鳥は、身の危険を察して一目散に飛び立ちます。

ようやく気づいたところなのよ
自分が歪んだ命だってことに

私たちはどうでしょうか。
第二波、第三波……
命を守るために鋭敏に危険を察知して回避することができているでしょうか。

アニメのラストシーンでは、政治家と人命救助をしようとする主人公たちが対峙します。
「これは単なる数字ではない! あなた方はその数の人生に責任がもてるのかーー!」
しかし、政治家はこう返します。
「人間が築いた文明を守らなくては、我々はまた原始の闇に逆戻りだーー。」

似たような光景を皆知っていますね。

我々が立ち止まり考えるチャンスを得た今なら、新たな視点でこの作品から学ぶことがあるのではないかと思い筆をとりました。

この物語の結末がハッピーエンドなのか否かは、観た人の感覚や理解に委ねられているそうです。
もしご興味がございましたら皆さんも、この作品で今起きていることを感じてみませんか。

※一話だけなら無料配信されているようです。
バンダイチャンネル


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