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未来心中

白い靄に包まれて 彼女は帰らなかった
無残に滅びた そのお母さんは あなたのお母さん
ねえ そういう時 どういう風に私を見てた?
そこから反対方向に 歩き出した 私達は
過呼吸の痛みの中で お互いを離したくはないと
必死に 縋りついて 痛みを舐めあって 死を恐れた
お母さんは弱かった あなたも弱かった
でももっと わたしは 弱かった
紐をほどいても あなたは蘇らなかった
冷たくなった あなたの裸体に縋りついても
木偶の坊のあなたは もう悲しまなかった
お母さんに 会いたい
そう毎日のように呟いて わたしを困らせた
置いて行かれたあの日のまま あなたは小さかった
あなたを癒すなんて大それた事 出来なかった
手を繋いで あの線路の端で 語りつくした 死の物語
死ぬことが 夢であって 祈りであった
希望でもあった 絶対大丈夫という 不思議な確信
裏切られるなんて 選択肢はそこには元々無かったから
あっけのない あなたの喪失に 怒りさえ覚えた
死ねない わたしは死ねないクズだった
生きていたら 一緒に光を探し出せるんだと思っていた
だけどそれは一方的な 思い込みで
あなたの軸はもう随分前に 反対方向を這っていた
朝早く 電車を探し 彷徨い歩いた
元気なうちにそっちへ行こうと思った
だけど 躊躇ばかり 怖かった
ごめんね まだ そっちへはいけないよ
ねえ なんで わたしを置いて行ったの?
ずるいよ 布団の反対側が からっぽで
からっぽで つめたい
つめたくて からっぽで
思い出せない あなたの肉体の証拠
あんなに近くにいたのに
どこに消えてしまったの

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