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鈍い感触の 直感的な愛情

道化の心の闇の深さは はかり知れない不気味さを併せ持っている
わたしが体中を煮えたぎる血のようにして欲すとき
あなたは幾分か離れた場所に突っ立って 傍観者になる
その心理戦みたいな距離感がいたたまれなく嫌で 嫌で 嫌で
躍起になってそれを抉ってやろうと思う
痛めつければ痛めつけるほど あなたは美しさを増して
心持たぬビスクドールのように 虚ろなまなざしで
わたしを見透かす
わたしをこぼす
わたしを遠くへやってしまう

犬を拾ってきたのは当てつけで
その泥まみれがわたしを安心させたのは事実
従順な眼の奥に飛び散る閃光
しっぽをふって付いて来る
心地よいを通り越した距離感でそいつはわたしに懐く
好奇心だけでわたしは翻弄した
見下した態度でわたしは偽物の愛という快楽を与えた
柔らかさは踏みにじられた血肉の塊
さあ 自分の骨でも取ってきな、そう言って投げた
帰って来れないように ずっと遠くの方へ

惨めに空っぽの天
ほんとうは独りでへいき
ひとりでその心地よさを噛みしめている
唐突にやってくる 抱きしめたいと 抱きしめられたいを揺れ動く
わたしの自分勝手なたましい
それは何と独りよがりで 曖昧で ややこしいのだ
勝手にやってろ
そんな暴言が口の奥をくすぐる
愛を知るには不十分で
それを語るには証拠不十分だ

いつか哲学者のように口にした大人ぶった暴言が
心をくすぐる
ねえ、握っていてよ
わたしはよく落ち込むんだから
そこにいて
朽ち果てるまで待っとけばよいよ
忠犬のように

それはただ他人事のようなわたしの
鈍い感触の
直感的な愛情

いつまでも彷徨っている
出ていった 飼い猫のように


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