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プロジェクト成功の第一歩は「脱ルーティンワーク思考」

プロジェクトを成功させるためには、いくつかポイントがあります。そのための知識や経験やテクニックは必須ですが、一番重要なのはプロジェクトそのものへの認知の仕方、向き合い方にあります。ここで躓くと判断やアクションを間違えてしまい上手くいきません。意外と抜けてしまうプロジェクトの性質についての理解が成功には必要です。


「それプロジェクトじゃないですね」

実務でプロジェクトマネジメントをしていると、「プロジェクト」や「マネジメント」が世の中の共通言語ではないことに気付きます。関係者と「プロジェクト」について話しているのに同じ目線にならない。言葉の定義を知らないというよりは捉え方がかなり違う。
もし定義を知らないなら「それって何ですか?」が根本にあるはずですが、何か別のイメージが出来上がっています。多くの場合「プロジェクト」は「何も決まっていないめんどくさい仕事」くらいに捉えられていて、実際にはプロジェクトの性質にあったやり方にはなっておらず、そうなるとエラーが起きます。「プロジェクト」と呼びながら、やり方も仕事の組み方も判断基準も全然プロジェクトじゃない。性質にあっていない対処法を取ればエラーが起きるのは当然です。
プロジェクトは難易度の高い仕事の形式であることは間違いありません。しかし、そもそもプロジェクトにすらなっていなければ、失敗するのはマネジメント以前の問題です。

なぜ「プロジェクト」が浸透していないのか?

日本はこれまで、一定の目的と一定のやり方がその業界や慣習の中で存在していたため本当の意味でのプロジェクトが少なく、「プロジェクト」と呼びながらも「ルーティンワークのアレンジ」で仕事ができていたので、プロジェクトとは何か、どうすれば上手くいくのか、ということを認識する必要性が強くありませんでした。
例えば私がいる建築業界では、求められる建物のイメージや品質は一定の類型がありそれをつくる手順も一定の生産フローがありました。VUCAな時代になり、本当の意味でのプロジェクトの仕事が増え、以前はこれが正しい、目指すべきだ、と暗黙の了解となっていた共通の目的、目標、成果も薄くなり、それを生産する方法も決まった段取りだけでは対応しきれなくなりつつあります。

そうすると「ルーティンワーク」の仕事の仕方から「プロジェクト」の仕事の仕方に変える必要がありますが、その経験値が少ないのと、中途半端にプロジェクトっぽい仕事をマンパワーと時間で何とかしてきた実績があるので、通用しないことを体感できるような失敗でもないとその枠組みから抜け出ることができません。つまり本当のプロジェクトの歴史が浅いのです。

この言葉が出たら黄色信号「前の案件の通りに…」

しかし今は、過去の事例を参照しても前提条件が大きく異なり、かつ、それを基に予測しても当たらないので過去にやったやり方が通用しなくなっています。にもかかわらず、今でも過去を参照しようとする思考回路はよく見られます。新規のプロジェクトがスタートするとき、もしくは難しい課題に直面したとき、一手目で出る言葉が「過去を参照すれば正解が見つかるのではないか」という趣旨の発想、発言の場合は要注意です。この言葉が出てくるとき、多くの場合は思考の対象がプロジェクトに向いていません。技術的な内容であればもちろん問題ありませんし、例えば十分に思考したうえで仮説検証を行うために過去事例を参照するのも問題ないと思います。問題は「正解があるはずだ」「使い回せるHowtoがあるはずだ」という他力本願な思考にあります。プロジェクトの成功において、そんなものはありません。

まずはマインドを変え、見方を変える

「正解も使い回せるものも絶対にない」というマインドを持つことは、ルーティンワークの思考形態から脱することと同義です。ルーティンワーク思考だと他にも「イメージできていない」「やったことが無いから分からない」「調べてみたけどいい事例が無くて」というような発言が出てきます。もう一度、改めて「プロジェクト」の定義をおさらいすると、PMBOKには「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期的な業務」とあります。平たく言うと、後にも先にも誰もやったことが無い期限までに何かしらの成果が要る仕事、です。普通に考えて、そんな仕事の正解が過去に落ちていたり、簡単にイメージできるわけありません。
精神論のようですが、プロジェクトマネジメントを行うのは人間なので、その人自身の見方を変え、判断基準や思考回路を変えないと上手くいきません。知識やテクニックは必要であれば後で付いてきます。まずはプロジェクトに対する正しい認識を持つことが成功への第一歩です。

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吉見周平
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