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【日記集】IRONIC INORI

 なぜだかしんどい日々が続いている。原因は分かっていて、進路が見定まらないことが、人生が閉塞していく感覚が、じわじわと僕を追い詰めているのだ。院に受かり数学で生きていきたいと願いつつも、そこに自分の人生が幸福に進んでいく想像ができない。一体どうすればいいのだろう。
 人生が開かれるよう祈りつづけるように生きていて、しかし現状を抜け出す努力を怠っていると、祈りは次第に自分の哀れさの象徴のようになっていく。祈りを通じて希望でなく自身の見るに耐えない現状に、その閉塞感にアクセスさせられる。皮肉な祈りに追い詰められながら2024年が始まる。

12/31-1/1:年越しジャンプ
 あけおめ世界、ことよろ私。年が明ける瞬間は年越しジャンプした。ノクチのマネキ(カラオケ)は部屋が狭くて、arkとtbとkkと4人で跳んだら身体がぶつかった。思ったより年越しジャンプは市民権を得てないみたいで、毎年やってると言ったらみんな変な顔してたけど、なんだかんだ一緒に跳んでくれたよ。僕たち以外ほとんどお客さんはいなくて、外も世界が滅亡したみたいに静かだった。家族以外と過ごす年越しははじめてだったし、一年が終わる瞬間ってのも相まって、いつもより死が身近な気がした。
 俺以外の3人はみんな就職して働いていたり、間もなく働き出したりで、人生が次に移ってってる。別に自分が遅れてるとかは思わないけど、みんな働くってことを受け入れられてるっていうか、人生に迷わず駒を進められていて、なんかすごいな。俺は未来が見えなすぎてる。数学者になりたいと思って大学入って間もなく院にも進むのに、数学の自信が皆無だし、数学をやれば幸せなのかもわかんないし、どう生きていけばいいかわかってないのにD進やめるなら半年後には就活を始めなきゃいけないし。もういっそ修士おわったぐらいで人生打ち切った方がトータルで幸福かもしれない。もし死ぬなら京大のクスノキとかがいいな、深夜のクスノキは緑が映えて荘厳な感じがするから。絶対迷惑だけど。それか金木犀の公園。甘い匂いと死って同じ世界のものな気がするから。そんな感じでゴネていたらarkに「死ぬなら27歳にすれば、ロックスターってそうらしい」って言われた。あと4年はちょっと長くね?とか言っていたけど、死なない方がいいってのはfkdのことを思い出すたびに知ってるよ。生きていたらいいこともあるとか、死んだらもうなんにもないってことも。
 年越しってすべてがリセットされるような気分がして不思議。別に時間の流れ方が変わるわけでもないし、過去がなくなるわけでもないのに。ここから頑張ればいい人生が開けるかもって、ちょこっとだけ思ってしまう。もしかしたらそういう無意味な希望が、僕に年越しジャンプをさせるのかもしれない。無意味な希望のジャンプの勢いで進めるところまで進もうぜ。

年越しジャンプ

1/1:仏様とかどうでもよくて
 川崎生まれ川崎育ちのくせに川崎大師には数えるくらいしか行ったことがない。中3の初詣で1回、高校の行事で3回。多分そのくらいだと思う。川崎駅で京急線に乗り換えると同じ道をいく人たちがたくさんいて「みんな川崎大師に行くんかな」とnksmさんとはなす。予想通りの混雑を交通整理の警官にしたがってゆっくり進む。たどり着いた大本堂で10円玉を投げて「人生が開けますように」と手を合わせてお願いする。もしかしたら願いって仏様とかどうでもよくて、自分の気持ちを言語化することでちゃんと認識するためのものなのかもな。(宗教に価値があるかは別として、信仰って行為は結構合理的で意味があるかもしれない、と思うことが最近多い)駅から川崎大師までの道には出店がたくさん並んでいて、何か食べようかと迷いながら歩く。これもいいなあれもいいなと決めきれず進んで行ったら端まで着いてしまった。人生みたい。人生じゃないので2周して、焼きそばとたこ焼きを買った。nksmさんが「りんご飴食べたい」というので最後にそれも買った。でっかいりんご飴食べてるnksmさんを見てるのは、ちょっと面白かった。
 帰りに川崎の丸善によった。児童書のコーナーに行くと『黒魔女さんが通る』とか『夢水清志郎シリーズ』とか、昔読んでいた本がたくさんあって、懐かしい気持ちになった。『都会のトム&ソーヤ』なんか8巻までしか読んだことなかったのに、もう20巻まで出ていて、本当にタイムスリップしたみたいだった。その棚で見つけた一度も読んだことのなかった『モモ』を買って帰った。今年はTwitterとかYouTubeとか見るかわりに本色々読めたらいいな。

りんご飴とnksmさん

1/2:ゴロゴロ
 今日、1日勉強したりサークルの作業をしたりする予定でした。でもできませんでした。なんだかやる気が起こらなくて、ゴロゴロしながら箱根駅伝を見ていたらねてしまったのです。だめだめだね。でもお正月だから仕方ないよね。明日がんばろ。

1/3:人って死ぬんだな
 布団に入ってからこの前思いついた数学のアイデアについて考えていたら、うまくいかないなーって思っていたところがなんとかなりそうな感じがして、布団から出て急いでメモした。良き良き。
 父母とおばあちゃん家に行った。おばあちゃんはだんだん物忘れが出てきていて、僕に予備校行ってきたの?とか言っていた。まだおおむねしゃんとしてるけど、孫のことを分からなくなる日も遠くないのかもしれないな。おじいちゃんは腰を悪くしたようで頭は割とはっきりしてるけど、もう体力もなく活動するのが大変そうだった。人って死ぬんだな。着実に機能が錆びついてきている二人を見てそう思った。二人には浪人期を支えてもらった恩義もあって、だからというわけではないけれど、なるべく元気で幸福であってほしい。休みのときは必ず会いに行こう。

1/4:マクガフィン
 「帰省してるなら言ってよ」とsmhrから連絡があり、二人で深夜にドライブに出掛けた。彼女が車で迎えにくるまで、適当な目的地を見繕っておいてと言われ、スポットを調べる。近すぎず遠すぎず、夜景が見えるみたいな目的地感がある場所……と候補を2、3個絞ってsmhrに伝える。ああだこうだ話して結局川崎の工場夜景を見に行くことになった。深夜ドライブの目的地ってマクガフィンみたい。車を走らせる口実でしかないから別にどこだってよくて、あることが重要。人生の目的もそう言うものなのかもしれないな。……え?
 ドライブの間、smhrとはいろいろ話したけど、何を話したかはよく覚えていない。近況を報告しあったりお互いの最近ハマってる曲を流して大声で歌ったりそんな感じだった気がする。あとは恋愛の話になって顔と性格どっちが大事かみたいな話とか、告白の実践練習とかもした(どっちも下手すぎた)。smhrはいつ会っても敵意がないし、変な感じがしなくていい。お姉ちゃんに友達っぽさを加えるとsmhrになる気がする。smhrにそれを言うと「この前別の友達にもそれ言われた」と言っていて、彼女はそういう性格らしかった。
 しばらくすると目的地に着いた。川崎の工場夜景はとても綺麗だった。工場からは煙がモクモクわいていて、近づくと石油の臭いがする。どういう理屈で動いてるか分からない複雑な構造物が闇の中に浮かび上がっているだけで、ちょっと異世界に来たようだった。この工場が何作ってるのかよく知らないけど、もし「夜」を製造してるとかだったらどうだろう。街のはずれ、臨海部の工場。中では怪しげな男たちが今日もすすけながら作業を進める。レバーを引きボタンを押しハンドルを回し——。「夜」の製造には高度な技術と経験が必要なのだ。もし納品が遅れれば市民に混乱を招きかねない。街の平和のためにも男たちは手を休めることなく働き続ける。そうして丸1日かけてやっと1つの「夜」ができあがり工場の裏手からひっそりと出荷されていくのだ。——みたいな。
 その後はレインボーブリッジを見にお台場に行ったり横浜のみなとみらいあたりに行ったりして、結局帰ってきたのは朝の6時半ごろだった。今度みんな誘って旅行とか行こうぜと話して解散した。

川崎の工場夜景(と僕)

1/5:とどめ
 京都に戻った。メガネを電車に忘れて降りてしまい、本当に最悪。その電車を終着駅まで追いかけたけど見つからずもっと最悪。ここ最近考えていた数学もモノイダル圏とか豊穣圏とかすでに名前がついていたようで、それもえーって感じ。新規性にワクワクしていたから。不幸は一気に畳み掛けてくるな。自死してしまった人はそうやってとどめを刺されたのかもしれない。

1/6:生き抜く覚悟
 「誰もお前の人生の責任は取ってくれないぞ」バイト中、ふと思った。親も先生も友人も、アドバイスしたり励ましたりしてくれるけど、その人生がクソで不幸でつまんなくても、誰も責任は取ってくれない。近頃、いろんな人に将来にかんする自分の憂さやその原因を話してみてるけど一生心が晴れないのは、多分、悩み相談にうまく答えてもらえていないからじゃない。そもそも悩み相談なんかしてなくて、誰かに人生の責任を押し付けようとしてるんだ。人生が詰んだときに、あの時あいつがあぁ言ったからって言い訳したいんだ。そしてそうやって押し付けようとする度に、それができないこと、人生の責任は自分で取らなきゃいけないことを実感しているんだろう。いい加減、生き抜く覚悟を持とうぜ。
 バイト後、inueさんと高安にラーメンを食べに行った。話せば話すほどinueさんは優しい人なんだと感じた。無神経になんて相当強要されないとなれないんだろうと思う。社会に出る顔してる時の自分に少し似ている気がして、怖くも思った。inueさんの身の上話とかもいろいろと聞けて楽しい時間だった。仲良くしていけたら嬉しい。

1/7:感情の存在確認
 okbさんの「めんどくさ〜い」がギュン!ときた。少し前から思ってたけど、俺は感情のあまり出ない人に興味を持たざるをえないらしい。tkmr先輩とかhskwとかに興味が湧いたのも多分それが理由だった。感情が見えないと「え、このひと感情ないの」って感情の存在確認をしたくて話したくなっちゃう。嬉しかったり怒ったりすることないの?って不安になるから。話してるうちにちょこっと感情が見えるタイミングがあると「感情あったぁ」って嬉しくなって、それがかなり胸に効くらしい。多分今日のokbさんのもそれ。だって興味を湧いちゃって、小さい頃の夢とか聞いちゃったしね(歌手だったらしい)。俺の母親も多分同じで、だからこれは母譲りな性質なんだろう。そう考えてみると父親は感情が見えない方かもしれない。
 家に帰ってからゼミの用意の続きをやっていたけど全然わからなくてゲーって感じ。chkrとかamnさんとかshzとかがディスコで通話していたのでボイチャに入って会話聞きながら証明を読んだ。chkrがPS5を買ったらしくデトロイトヒューマンビカムをリモートでプレイできるってことで、今度みんなでやることに。まーじで楽しみ。

1/8:希望ギラギラ
 現在標準時では9日10時ですが、私は睡眠によって日付変更を行う方式を採用しているのでまだ8日です。生活習慣終わってます。今が自分にとって朝なのか夜なのかよく分かってないです。京都帰ってきてから、ゼミの用意が終わらないから眠たくなるまで数学書読んで、寝て、起きて……としていたので仕方ない。加えてポテチとコーラを買ってムシャムシャゴクゴクしてしまい、アメリカ人顔負けのアンチヘルスをしてしまいました。将来生活習慣病になってしまっているかもしれない自分に心からお詫び申し上げます。
 分からないところばっかでゼミの発表が炎上するんじゃないかと危惧していましたが、頑張った結果とりあえず行間は埋めて準備できたので炎上は回避できそうです。よかった。数学ってわかると途端に楽しいですね。今なら修士課程に希望がギラギラ見えます。希望ギラギラ。

1/9:強制法
 ゼミの最後の発表担当回だった。強制法難しかったけど、算術の公理系の鎖から解放されて清々しい気持ちで証明をかけたので気持ちよかったし、今までで一番まとまった発表ができた気がする。『数学基礎論序説』は読みきれていないがひとまずこれで終わり。お疲れ様でした。強制法ってのは、今ある世界の秩序を保ちつつ新しいものを追加していく、と大体そんなものだった。例えばこの地球に新しい人間を追加するとして、その人が超能力を持っていたりしたら世界が大きく変わってしまう。追加する人物はなんの変哲もない(強制法ではgenericって形容される)人間じゃなきゃいけないんだって。僕を愛するって性質が多分genericだろうか。だったら強制法で恋人を生み出そうぜ。
 最近考えていた直積の可逆化をtri先生とhdくんに相談したら、compact closed categoryが参考になるかもという話と、Grothendieck constructionと同じように構成すれば?という話を聞けた。どっちにしろ今のアプローチだと難しそうなので、色々調べてやってみたい。
 夜はchkrとかamnさんとかとマダミスをやった。疲れていて感想戦で寝落ちちゃったね。

1/10:京亀
 人生の意味とか、どう生きたいか、みたいなことをたくさん考える。hgkはとても野心的で、それもちゃんと行動を伴う野心家で、こいつと何かを成し遂げようと共同戦線を張るなら、成功しなかったとしても楽しい人生だろうな、とか思う。「人生は博打なんだから」「みんないつかは現実見るんだよ。ただそれがどれだけ早いかって話」もつ鍋をつつきながら話すhgkは人生に誠実だなと思う。夢は叶うとかいう理想論じゃなくて、実践的なことを言えるのは彼自身が夢の実践をしているからだろう。そんな彼と話しているとなんだか苦しい。その苦しさから抜け出そうとしていない自分に気づくことが一番苦しい。初めて入った京亀で初めてのもつ鍋をつつきながら、無気力は人生への加害であるななどと思った。

1/11:Gyakubaraaaa'sの大凶
 ネプリ『Gyakubaraaaa'sの大凶』が発行された。ゲストに招待していただき十首連作『もっと』を載せた。短歌で依頼を受けるのは初めてで嬉しかった。

決められたセリフをどちらも言えなくてNGシーンみたいだった ずっと

もっと/真中遥道

1/12:ちゃんと
 tkmr先輩と久しぶりに会ってご飯を食べた。ちょっと変な所作とか少食なところとか相変わらずで懐かしささえ感じた。話しているとなんだか分かり合っていた名残りがあって、あんな風に終わったけど、ちゃんと絆みたいなものあったのかもな。他にも色々思ったけど、書かない。だって先輩この文章読んでるでしょ?

1/13:よかったと思う。
 S自ボックスで徹夜して(結局泊まった)卒業発表のパワポをとりあえず完成させた。iskは彼女とよろしくやっているようで、よかったと思う。

1/14:文フリ京都
 文学フリマ京都へ。橋爪さんの『微差の生活』、依田口くんの『しずむ』、あと神大短歌の会誌と村上さんの『チャイナタウンビギナー』を買った。橋爪さんに話しかけたら顔を覚えられていた。数年前に一度オンライン歌会でご一緒しただけだったので驚き。京大短歌は新刊29号を初売りしていて、かなりの売れ行きだったよう。かいつまんで読むとナカジマくんの編集後記、津島さんの巻頭エッセイ、風科さんの連作とエッセイがとても良かった。あと俺の合宿の感想もかなり良かった。

1/15:初歌会
 今年初の歌会。終わった後はロマンに行った。一個下のhrdくんが駿台横浜の京大クラスだったらしく、俺が一回生のときに京大クラスに話をしに行ったのを覚えていた。思いもよらない繋がりだった。

1/16:講究最終回
 講究ゼミ最終回だった。みんなの卒業発表、それぞれ色があって非常に面白かった。自分の発表もうまくいって良かった。終わった後はオムラヤで打ち上げ。もう終わってしまうのかと思うと少し寂しい。tri先生はかなり生徒思いな先生なのだろうと最後まで感じた。解散後、knduさんとkwsmくんとSGLを4月あたりから読むか?という話になった。そろそろちゃんとsheafを理解したい。

1/17:補填
 喜びは努力しないと手にできないのに、辛さは向こうからやってくる。今日はバイトで客の髪の毛ちんちくりんクソデブアバズレババアに嫌味を言われて、もう最悪。こんな赤の他人のために人生の30分ぐらいイライラするのに使っちゃった。社会人ってこういうのでHP少しずつ削られていくんかな。それを補填できる幸福がなかったら、生きている意味ある?

1/18〜31
 日記つけるのをサボってしまった。学部最後の期末試験のために、tmさんとde Rhamコホモロジーと単体的ホモロジーを勉強して、かなり理解が深まった。結局今まで精神が死んでいたのは数学の勉強ちゃんとできていなかったからなんだろうな。努力をできていれば、祈りは皮肉にならずに済むようだ。
 2月いっぱい数論を勉強して大学院の分野決定する。数学に少し希望を見出した。

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