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デッサン描ける=いいデザイナー?描く訓練で身につく「視点の切り替え」力のお話。

先日デッサンの授業を開催することになったので、久しぶりに鉛筆デッサンをしました。一緒に参加する先生にも描いてもらって、自分もなんとか授業の日までに参考作品を準備しました。
自分にとってデッサンは、「視点の切り替え」を繁盛に行う作業なので、短い時間でも脳みそが疲れる感覚を久しぶりに味わいました。

デザイナーとして、デッサンを描く訓練をして良かったなと思うのは、発想や着想に結びつく観察力が身につくという点です。

↑デッサンの精密さに感動した…。こばかなさんの良い記事

観察って、一見じーっとじっくり考えながら眺めることのように見えますが、実は観察力のある人ほど、デッサンを描いている間、ものすごく早く手と頭を動かしています。私も、デッサンを始める前は、じ〜〜〜っと眺めて、なんとなく手を動かしたら、いつかは自然と絵が完成するものだと思っていたのですが、永遠に完成しませんでした…。

そんな感じで、始めたばかりの頃は、予備校ではトイレで絵の下手さに毎日泣いてたんですが(笑)何回も繰り返すうちに、だんだん、同じ作業をする時間が減ります。鉛筆の持ち方・線の形・力の入れ具合に幅が出てきます。形を正確にとる時間・光と陰をとらえる時間・質感を表現する時間と、自分が今何をしている時間か、はっきりしてきます。一番変わったな〜と思ったのは、制限時間の中で何百回も「視点の切り替え」を繰り返す感覚です。

今回の紙とりんごのデッサンでは、具体的にこんなことを考えて手を動かしました。

「紙を折り曲げて形を作るときは、光源に対していろんな明るさが出る形を作って配置しよう」

「りんごの濃い赤色は、5Bの鉛筆のとんがった先でグリグリ描いて色の濃さを表現しよう。でもB系の鉛筆だと、ぼさぼさしたタッチになって、りんごのツヤツヤ感がうまく出ないから、3Hの鉛筆を立ててなぞって、紙の繊維を潰そう」

「紙の描き込みをしたら、思ってたより黒々しくなってしまった。少し練り消しで消して明るくしつつ、全体的に見るとりんごをHBの鉛筆でもうワントーン暗くして、コントラストの調整をしよう」
といったように考えて描き進めていました…

_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 描き出すとキモチワルイ!!!!!! <
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キモチワルイんですけど、自分の場合は
・立体感
・固有色
・それぞれの素材感
・ツール(紙・鉛筆・練り消し/寝かして描く?はっきり消す?)の選定
・全体で見たときの整合性

という様々な視点からりんごや紙を見て、それに対してどんなタッチでどんな線を引くのが最適か考えて、線を1本1本描いていく感じです。思った通りにならないときは、練り消しで消したり、別の手を考えたりします。そうやって様々な視点で切り替えたタッチの集合で、一枚のデッサンが完成する感じです。

自分がデッサンやってて一番よかったなと思う理由は、写実的な絵を描くスキルより、いろんな視点を切り替えてデザインする対象を見るスキルが身につくみたいなところです。

制作現場においても、イラストがなんか弱いんだけど、これテイストじゃなくて色が淡いからだ…!とか、マーケティング視点で作ったのに、いまいちぱっとしないのはイラストやビジュアルが少なくて面白みがないからだ…!というように、「なんか弱い」「なんか違う」の「なんか」に対して、様々な視点から客観的に探れる・探った答えを形にできる力がお仕事の上でもすごく役立っている感じがしてます。

いろんな視点で見よう!って、簡単に言えるけど実際やるのは難しいことだと思うです。「視点の切り替え」ってすべて頭の中で起こる出来事だから、自分一人で意識し続けることって難しいじゃないですか。
デッサンは、視点を様々に切り替えて、そのアウトプットを画用紙の上に表現する。その表現がリアルであればあるほど見せた相手に良いと褒めてもらえる。といったわかりやすい世界なので、自分の中に「切り替えられる視点のバリエーション」が今どれくらいあるのか、力試しや訓練に使えるかもしれません。@w@

また言い換えて見ると、デッサンを描かない人でも、こういった観察力や、視点の切り替えパターンが無数にあるクリエイターさんは様々なお仕事において能力が高く、信頼ができる人だと言えると思いました。良いクリエイターさんのひとつの指標になるかもしれないです。

↑デッサンに興味がある方に向けて。めっちゃ具体的に書いてありました。

将来は、小さな連載を数本抱えているおばあちゃんになりたいです。