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寄せ書きできる絵本『だきしめたいのに、』全文公開(日本語、絵あり)


もしよろしければ先に想いを

3分で読めます。

あとがきを先に

サンパウロの可憐な天使に贈る

躁うつ病、双極性障害。
そんな病気のことは露ほども知りませんでした。気づきもしませんでした。
それほどに彼女は強く可憐で、眩しかったです。

見えないものを戦っていると知った瞬間、
己の無知を恥じ、
言いようのない虚しさと悔しさに包まれました。
それでも、私にできることはあると、
1冊で変えられることもあると、
彼女の涙が自分を信じる心をくれました。

指一本で、何十億人に、一瞬で、
”言葉を送信するスマホ”の時代に、
筆と紙で、あなたに、ゆっくり、
”言葉を贈る手紙”の美しさを、
私は信じています。

出逢いと言葉を大切に。
言葉にならないものも大切に。
なにより、自分を愛せる心を大切に。

ふくだあさひ


本文


だきしめたいのに

大好きなヒナタへ

お久しぶりです。

お手紙、ありがとうございます。
逢いに来てくれたこと、とてもうれしかったです。

日向の手紙を何度も読みました。
読みすぎて、ちょっと破っちゃいました。
ごめんなさいね。

あなたの手紙を読んでから、もう一年が経ってしまいました。
その訳は、後ほど。

いろんなことを思い出しました。

「あなたみたいになりたい」という記憶。
子どもの時言った、という驚き。
覚えてもらえていた、という嬉しさ。
読むと心をほっこりします。

ヒナタたちのお店にも行きたい。
心を照らしてくれるのでしょう?

ちょっと深呼吸していい?

ヒナタ、
あなたに知っておいて欲しいことがあります

私は今、心の病と闘っています。
双極性障害、躁うつ病という病気です。
3年前に発覚しました。

気分が昂りすぎたり、逆に沈みすぎてしまいます。
いつ気持ちが変わってしまうのか、私にもわかりません。

世界中の子どもたちを救える気になる日も、
天井を見つめることしかできない日も、
ありました。
死にたくなった日も、ありました。

「なぜ自分を殺すの?1番自分を愛してあげないといけないのに。」
昔の無邪気な質問が、今の私にはとても重い。

脚の骨が折れていては、歩けないでしょう?
心の骨が、私は折れてしまうのです。

心が、息できない。

水の中で呼吸はできないでしょう?
私は心が、溺れてしまうのです。

薬を飲みすぎて、記憶障害も起こしました。
治りたいのに

あぶない言葉を使って、友達を何人も失いました。
大好きなのに。

ごめんなさいも、もうしませんも。

また、、の一言が怖くてもう口から出てこない。

助けて、も。

やさしい「がんばれ」が、くるしい。
がんばれないから。
素直な「いつまで?」が怖い。
私も知らないから。

大切な人の声が、雑音になる。
近づくみんなが、敵に見える

自分から離れたくなる。
自分の心から、離れたくなる。

底知れない孤独。

もう一回深呼吸。

せめてヒナタとの時間を遺すために、
今、手紙を書いています。

手紙は私の救い。

雲の歩み。
蝋燭の声。
波の笑み。
鳩の足音。

安心。

でも、私の言葉ではない言葉が出てきてしまいます。
心から手に、言葉がうまく届かない。

だから何度も書き直しています。
一年もすぎてしまうとは思いませんでした

時間を空けて読み返すと、まるで他の誰かが書いたようなよそよそしい感じがする。
知らない言葉たち。

でも、周りの人はその言葉を通して私を見る。
そこに映るのは、私が知らない私。

今思えば、あの日の『あなたみたいになりたい』の裏には、あなたへの感謝と愛と憧れのほかに、嫉妬や自己肯定感の低さがあったのかもしれません。

それでも、心から口に言葉を届けられたという自信は、宝もの。

孤独はコンパス。
私が航海士。

それでも駄目なら、日の出を待てばいい。

沈まないと見えない深さがあった。
他人より沈んだ分、浮かび方も知ってる。

自分を追い出さずに許せるのは、
あなたのような人がいてくれるから。
特別なあたりまえをくれる人。

今の私を愛してくれているから。
そう信じられるから

抱きしめてあげられる。
抱きしめてもらえる。
そんな自分でいられるように、
今日もカフェを淹れます。

コーヒー豆香る私の特等席で

2101年愛年心日

子どもたちの心をうるおすカフェ・ハグ
ハファエラより

読み終えた手紙を閉じたヒナタの顔は、哀しい笑顔だった。

優しい両手で私を包んでくれた。
心が伝わった。

人生は不安定な航海だ。
シェイクスピア「アテネのティモン」より

今後の創作の流れ

エルにて、

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