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スペイン版サウサンプトンに挑むEL 決勝【マンチェスターユナイテッドVS.ビジャレアル プレビュー】

 今回は初めてプレビューに挑戦してみたいと思います。今季最終戦となるマンチェスターユナイテッド。この試合の勝敗が来期に直接的影響を及ぼすわけではないですが、スールシャール政権の初タイトル獲得という意味では重要な一戦となります。ビジャレアルの準決勝(VS.アーセナル)の2戦を見て、ビジャレアルの特徴をまとめてみたので、それを基にどこが勝負のキーポイントになるかってところあたりまで考えていきたいと思います。

ビジャレアルの予想フォーメーション、4局面の約束事

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 ビジャレアルの基本フォーメーションは4-4-2です。試合によっては4-2-3-1(準決勝1stlegの終盤にも採用)、4-3-3を使い分けますが、直近のリーグ戦のスタメンから鑑みても恐らく決勝も4-4-2でくるんじゃないかと思います。怪我人はイボーラとチュクウェゼとなっていて、スタメンに置いたフォイスもSofaScoreさんによると"Doubtfull"の状態らしいです。ということで、このスタメンの中で異なる可能性のあるのは右SBと左CFで、⑧フォイス→②ガスパール、⑰アルカセル→⑨バッカになる可能性はありそう。左CFに関しては単純な選手の違いですが、右SBの違いはビジャレアルの戦い方の違いにも関わる可能性が高いので、その辺も注目しながらビジャレアルの4局面の約束事を(ボリスタさん風に)見ていきたいと思います。

①攻撃時(ボール保持時)

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 まず、攻撃時の中でも自陣深いエリアからのビルドアップの配置を図示してみました。現代サッカーでは基本となっているGKを使ったビルドアップですが、ビジャレアルのルジは2ndGkでありながら足元の技術が非常に高く、両SBにロブパスを蹴り分けることができる選手です。彼の能力を基盤としながら図の通りの配置で行われるビルドアップはかなり脅威といえます。実際ビジャレアルの準決勝の2得点はどちらもGKからのビルドアップが起点となった得点となっています。

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 ビルドアップに成功すると、そのまま疑似カウンター攻撃もしくはブロックを固めた相手を崩す「定位置攻撃」のフェーズになるわけですが、当然ながらその段階になるとGKはボール保持に参加できないので、大抵はビルドアップ時と配置が変わります。

 CBが本職であるフォイスが起用された場合は、フォイスがCB的なポジション取りをすることが多く、中央が綺麗な四角形になる3-4-3に近いかたちで相手を崩すことを狙います。一方、SBを本職とするガスパールが右SBで起用された場合はそのままガスパールが横幅を取り、ピノは中央に侵入していき、そこでモレノとポジションを変えながら、時にはCFのようにプレーしたりしていました。(ビルドアップ時もガスパールが右SBの場合はピノは内側に立ち位置を取ります。)

②攻→守の切り替え(ネガティブトランジション)

 基本的には即時奪回を狙う。そのカウンタープレスの網が剥がされたり、相手に時間をかけさせると、4-4-2にセットし直してプレッシングを行う(「守備」フェーズに移行する)

③守備時(ボール非保持時)

  ビジャレアルは得点差や状況に左右されながらも、原則、高い位置からのプレッシングを行い、常に相手のビルドアップに圧力をかけることで自らの守備機会(守備の時間)を少なくすることを狙います。

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 図のように全体を中央に固めながら、サイドにボールを誘導し、そこでボールを刈り取るという基本的なプレッシングであるが、それを高い連動性をもってできるのがこのチームの強さといえるでしょう。これが私がこのチームを「スペイン版サウサンプトン」と名付けた最大の要因です。

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 4-4-2のコンパクトなブロックを中央に固め、相手をサイドに誘導したところでボール奪取を狙うというのはプレッシング時と変わりませんが、相手の幅を取る選手がボールを持った際にできるCB-SB間のスペースはCBが埋めるのではなく、相手選手に応じてCH、SHがカバーする仕組みになっており、中央のブロックを固めてクロスに備えることを優先した守り方をします。ユナイテッドもシティ戦なんかだとこんな守り方をすることがありますよね。

④守→攻の切り替え

 優先順位はゴール、縦のパスコースを狙った判断をして、速攻を狙いますが、低い位置でボールを奪った場合などにおいては無理をせずにGKにボールを下げてボール保持攻撃(遅攻)のフェーズに移行。

ユナイテッドの予想フォーメーションと試合のポイント

 今回はビジャレアルの分析を中心にプレビューしていきますが、一応ユナイテッドのスタメンも予想してみたいと思います。

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とかいいながら、SofaScoreさんから引用させていただきました。ユナイテッドはマグワイア、PJが"Out",マルシャルが"Doubtful"という状態だそうで、このスタメンはまあ納得です。マクトミネイ、フレッジはメンバー入りしているぽいっし大丈夫そうですね。ではユナイテッドの特徴も踏まえながら、この試合のポイント、まずはユナイテッドが注意すべき点について考えてみたいと思います。

(1)ビジャレアルのGKを使ったビルドアップの展開

 上述したように、ビジャレアルはGKを使った精度の高いビルドアップが特徴的で、アーセナル戦もそこがうまく機能したことによって勝利したといえます。ユナイテッドはいつもの4-2-1-3のようなかたちで積極的にプレッシングを掛けるので、それを剥がされたときは素早いブロックのリセットが求められますし、剥がされないような個々のインテンシティが肝要になってきます。1stlegは外切りのプレスをして、2ndlegはサイドに追い込むプレッシングを見せたアーセナルのそれは2ndlegではそれなりに機能していたので、ユナイテッドも4-2-1-3による強度の高いサイドへの追い込みを見せる必要がありそうです。

(2)ビジャレアルの強烈なプレッシング

 これも上述したように、ビジャレアルは本家までとはいえないまでもサウサンプトンばりの強烈なプレッシング、カウンタープレス(ゲーゲンプレス)を行います。ユナイテッドは直近のELローマ2ndleg、ヴィラ戦、リヴァプール戦と相手のプレッシングに苦しめられるシーンが多く、この決勝もそこに苦しめられる可能性は高いと思います。ユナイテッドとしてはショー、ポグバの左サイドのキープ力を最大限に生かしながら、決勝なので最悪の場合はカバーニへのロングボールという手段も見せてほしいです(恐らくそれはあまり見られないと思いますが…)。

(3)ビルドアップできれば、狙い目は相手の2トップ脇、CB脇!

 ユナイテッドがビジャレアルの力強いプレッシングを剥がすことできれば、「崩し」・定位置攻撃のフェーズに入ります。そのときに重要になってくるのが、起点となる相手の2トップ脇、それから最終的なチャンス創出のポイントとなる(上述したように広大なスペースができる)相手のCB-SB間にできるスペースの活用です。

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 ユナイテッドは定位置攻撃のフェーズになると、上の図のようにマクトミネイがDFラインに落ちてダイヤ型の3-4-3のようなかたちをつくります。そのときに、相手の4-4-2というフォーメーションの構造上空いてくる相手の2トップ脇からどのようにチャンスメイクできるか、そこに配置されたリンデレフ、マクトミネイがどのような判断、パスをするのかということは重要になるでしょう。(ここにきてマグワイア離脱が痛い!)

 そして、最終的な相手ゴール前での崩しでは上述した幅を取る選手がボールを持った際にできるビジャレアルのCB-SB間のスペースの活用がカギです。ユナイテッドの幅を取る選手は右はワンビサカorラッシュフォード(状況に応じて)、左はショーとなります。正直、右は係る人数も多くない+パウトーレスの足が速いということを考慮しても崩すのは難しそうですが、ユナイテッドのストロングである左サイドでは、ショーが持った時にポグバやブルーノがポジションチェンジしながら入ってくるので付いてくるカプエやピノのマークを外して打開するチャンスはありそうです!

(4)トランジション攻撃での狙い目は左SB裏

 これはベタなことなのでさらっと。上述したようにビジャレアルはボールを持った際に左SBのペドラサが高い位置を取るので、ユナイテッドは低い位置などでボールを奪った際のカウンターの狙い目として、そのスペースは有効になりそうです。もちろん、ラッシュフォードは(恐らく意図的に)守備をしない可能性もあるので、相手に攻められるけどカウンターの起点になるという一長一短な側面もありますが…

 この試合での両チームのキープレイヤーとまとめ

 まず、ユナ脇テッドのキープレイヤーにはワンビサカを上げたいと思います。この試合のカギは相手のビルドアップを封じ込めることと、プレッシングをいなすこと。ワンビサカは前者では列を上げて相手SBまでプレッシングにいったりするというタスクを担い、後者ではプレッシングの逃げ場になるポジションですので、その意味でこの試合、彼の対人守備、クロスでの大外対応(相手のWBへの対応)も含めて重要な選手となるでしょう。

 ビジャレアルのキープレイヤーはトリゲロスです。ビジャレアルに関しては一人ひとりの特徴もすべて把握したわけではないので、この試合というよりはこのシステムでのキープレイヤーとして彼を挙げたいと思います。彼のライン間に入るタイミングであったり、ポジショニングにアーセナルは苦しめられましたし、(再三にわたっていっていますが、)4-2-3-1で守るユナイテッドの守備ブロックの弱点は「ダブルボランチの脇」なのでそこのスペースに陣取る彼とモレノの出来はやはりカギとなると思います。

 本家よりインテンシティやプレッシングの強度は劣るかもしれませんが、ポゼッションの能力は本家の数倍高い「スペイン版サウサンプトン」は正直強いです。アーセナルが負けたのも納得のチームだと思います。ただ、ユナイテッドの今季の力は本物ですし、選手の質、チームとしての完成度含めてユナイテッドの方が力は上だとも感じています。決勝なのでどうなるかわからないところもありますが、ぜひユナイテッドには有終の美を飾ってほしいです。もしかすると、エメリがめちゃくちゃ奇策に出る可能性もあるので、そこにも警戒しつつ、観る側としてはそこも楽しんでいきたいと思います。では。

タイトル画像の引用元:LovelyLeftFoot "Anfield (Europa League v Zenit)

なおこの画像はCC BY 2.0の下で利用されています。

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