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4. アラベスクに取り憑かれた強迫病者 - 強迫症的なオレンジ色の部屋

強迫症的なオレンジ色の部屋

4. アラベスクに取り憑かれた強迫症病者

 薄明の名前を名づけようなんて、なんて傲慢な考えであったのだろう。人類にできることは、小さく限定的な機能不全な脳みそで、光りのとある部分をオレンジ色だと傲慢に決めつけることだけだ。人間たちは愚かにも世界の謎を解きあかそうなどと考え、まやかしの技術で神秘を汚してしまった。神秘はそのまま保存しておくべきだったのだ。人間が干渉することではなかった。われわれは天からの祝福をありがたがり、ただただ祈りを捧げていればよかったのだ。

 薄明の再現不可能はわたしに存在の理由を喪失させた。わたしは自我をこの世界に繋ぐための方法を急速に探しださなければならなかった。
 その危機は、真理への信頼と背叛を一致させてしまった。
 わたしは神秘を保存するために、神秘を世界から排除した。
 真理をもとめるために、真理の不在を真理に代えた。
 愛について語ることをやめた。
 そして新たな福音がわたしにもたらされた。
 世界の叙事詩をかこう。わたしが従うことにした次なる対象は、世界の論理を記述することだった。
 それは新たな天使の発見であり、あのときの薄明のように、わたしを救った。

 それから、わたしはオレンジ色の宇宙に閉じこもることにした。そしてだれにも干渉されず、世界を記述していった。
 そして、わたしのオレンジ色の部屋は、わたしがつくる論理の世界となる。この世界に存在する真実のひとつとなる。
 わたしの部屋は論理の部屋だ。
 論理の部屋は、記述とともに拡張してゆく。わたしは休息することなく、オレンジ色の部屋の叙事詩をかきつづけるのだ。

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