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全スピッツファンへ。流浪の月を見てくれ!

眠りにつくまで 
そばにいてほしいだけさ
結び目はほどけそうでも
まだ続くと信じてる
朝が来るって信じてる
悲しみは忘れないまま


本屋大賞とった年に小説を読ませてもらって、それはそれはもう…感動しまくった大好きな作品。

小説でしか表現できないこと。
映画だからこその描写。

「サラサ」という名前。
映画で音として聞く印象と、文字で見ていた「更紗」が最初はすーごく違和感だった。(音にすると何だか軽くて)

更紗は「布」を現す名前。
そこに文という存在が雨として染み込んで、絡まった糸をゆっくりとほどいていく。

映画も雨や水の表現がすごく多かったけれど、それよりも印象的だったのは「光」の映像。

夢見たいな2人だけの部屋に散らばるビー玉の光。
サラサの部屋のカーテンを揺らす優しい陽の光。
梨花がイタズラして文の部屋まで届けた眩しい光。
文が1人っきりで暮らした部屋の唯一の光。

光の描写には「サラサ」の音がよく似合っていた。
(でもやっぱり文字で見る「更紗」が個人的には好き。しっくりくる)

タイトルにもなっている「月」は、
小説でも映画でも2人の心情や関係を現すかのように登場し続ける。

大好きでメモに残していた小説に出てきた月の表現たち。

「夜の領域にはうっすらと白い月がまだ残っている。
もうすぐ消える、まるでわたし自身のように感じた。」

「細く痩せきった月が、今にも落ちそうな角度で夜に引っかかっている。」

「澄んだ夜空に、アルミニウムに似たちゃちな月が引っかかっている。」

「窓の外はもう夜で景色は見えない。
すごいスピードで進んでいくので、月の位置すらあっという間に変わっていく。」

どの月にも「満月」とか「三日月」とか、特定の名前はついていない。
それがまさに2人の関係そのもの。

友情でもなく、恋愛でもなく、家族でもない。
名前のつかない2人の関係。
その関係を表すものとしての「月」の描写。
天才や。

他にも映画には出てこなかったけど、更紗の楽しかった両親との思い出とか、
葡萄の香りの蚊取り線香の話しとか、オールドバカラからの大名言とか…
あー、やっぱりやっぱり小説読んでほしい。
ほんまに素敵やから。

映画も語りたいことがありすぎる。
文は水、亮は火。
サラサは光であり風であり、流れる水でもあった。
チビ更紗の女優さん(子役というには俳優が過ぎる)だけで、スピンオフ映画を一本作ってほしい件。
松坂桃李様が凄まじくて、小説の文以上に文たらしめた件。
などなど。

サラサの音が耳に残りすぎたから、音繋がりでスピッツの「さらさら」聞いたら、更紗の曲すぎてビビってる。
え、この曲インスパイアでサラサって名前にしたんかって思うくらいにピッタリやん。

眠りにつくまで
そばにいて欲しいだけさ
見てない時は自由でいい
まだ続くと信じてる
朝が来るって信じてる
悲しみは忘れないまま

これエンディングにしてたら、多分興行収入一兆円やったと思います、関係者各位。




サラサ(9歳)が晩御飯にチョイスしそうなものたち。
きっと文も体育座りで静かに一緒に食べてくれる。


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