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EUが環境規制を緩和、ウクライナ農産物の輸入制限も デモ拡大で軌道修正

欧州連合(EU)の欧州委員会は1月31日、農家に対する環境規制を1年間緩和するとともに、ウクライナ産農産物の輸入制限を行うと発表しました。厳しい環境規制や同国産農産物の輸入急増に対し、農家の不満が募り、域内でデモが拡大しているのを受け、軌道修正を迫られました。
  
「EU農家の保護」と「環境の保全」、さらには「EU農家の保護」と「ウクライナへの支援」という両立が難しい2つの課題を突き付けられ、苦肉の策として何とかひねり出した格好です。しかし、農業団体からは「不十分」との指摘が出ており、これで農家の抗議行動が収まるかは不透明です。
 
欧州委員会の説明によると、EUの共通農業政策(CAP)に基づく直接支払いを受け取るにはさまざまな条件が定められており、地力の減退を防ぐため、耕作地の4%を休閑地にすることも含まれています。しかし、この条件が農家の反発を招いているとして、2024年の1年間について、適用を除外します。その代わり、レンズ豆やエンドウ豆、ファバ豆といった窒素固定作物やキャッチクロップ(間作物)を耕作地の7%で栽培すれば、補助金を受け取れるということです。
 
窒素固定作物や間作物は、土壌の生物多様性を高めたり、栄養分の流出を防いだりすることで、環境面のメリットは大きいと欧州委員会は説明します。厳しい環境に置かれている農家の救済と、生物多様性や土壌の質の保護という2つのバランスを取り、慎重に検討したということです。加盟国での承認などを経て正式決定され、2024年1月1日にさかのぼって適用されます。
 
フォンデアライエン欧州委員長は声明で、「農家はEUの食料安全保障の柱であり、農村地域の中心だ」と重要性を強調した上で、今回の措置は「農家が複数の課題に直面している時に、さらに柔軟性を提供するものだ」と説明しました。また、「CAPが、農家のニーズに応えながら、市民に公共財を提供していけるように、農家と引き続き協力していく」と表明しました。
 
また、ボイチェホフスキ欧州委員(農業担当)は「一時的な適用除外措置により、欧州委員会は困難に直面する農家に対する柔軟性と連帯感を示した」と指摘した上で、「短期的に農家を支え、長期的に気候や土壌、生物多様性を守るという2つのバランスを取った措置だ」と説明しました。
 
一方、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、EUはウクライナ支援の一環として、同年6月から同国産農産物の輸入関税を一時的に停止しています。この結果、ウクライナ産農産物がEUに大量に流入し、同国と国境を接するハンガリーやポーランド、ルーマニアなどの農家が特に苦境に陥ったとして、抗議行動を続けています。
 
欧州委員会はウクライナ産農産物の関税停止措置を2024年も継続する一方、EU農家の救済策として、最も大きな影響が生じている鶏肉と鶏卵、砂糖の3品目について、輸入制限措置を設けると表明しました。具体的には、これら3品目の2024年の輸入量が2022~23年の水準を超えた場合に、関税を復活させるという内容です。穀物など、それ以外の農産物についても、輸入が急増した場合には、対応を検討するということです。
 
この措置に関し、ドンブロフスキス欧州委員会副委員長(通商担当)は、「今回の提案は、ウクライナ支援と、EU農家の利益のバランスを取ったものだ。ウクライナ経済の維持と、EU内の市場の混乱を防ぐためのセーフガードを強化するという2つの目的がある」と説明しました。
 
EU最大の農業団体「コパ・コジェカ」は声明で、環境規制の緩和について、「デモの圧力により、1年間の適用除外措置が発表された。この前進に注目している」と一定の評価を下しています。しかし、「限定的なものだ」との認識を示し、「加盟国がこの措置をさらに強化することを希望する」と注文を付けました。
 
輸入制限については「十分な救済策ではない」と批判しています。その理由として、対象が鶏肉と鶏卵、砂糖の3品目に限られ、トウモロコシや小麦などの穀物や、大豆などの油糧種子が除外された点を指摘しました。その上で、輸入制限の発動基準を、2022~23年の輸入量の水準ではなく、それより少ない2021~22年の水準とすることや、対象品目に穀物や油糧種子を加えることを求めています。

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