君に贈る火星の(2本目)┃ショートショートnote杯

「これは君に贈る火星の空気」
彼はそう言って袋を見せる。
「で、これは君に贈る火星の石」
今度は石ころ。
「へぇ。それで?」
私は、そう、私は挑発するように彼に言った。
「これならどうだ! 君に贈る火星の新聞!」
確かに日本語ではない新聞。
だけど……。
「ウラジオストクが火星にもあるのね」
「あ、ああ。そうだよ。米国が秘密で火星に基地を作ったんだよ。僕は火星に行ったから知ってるんだけどさ」
嘘吐きね。
ウラジオストクはロシアの町なのに。
「米国ね」
「し、信じてくれないのか?」
泣きそうになる彼。
そろそろ良いかな。
「私もあなたにプレゼントがあるの」
「何?」
急に嬉しそうに目を輝かす彼。
可愛いわね。
「あなたみたいなつまらない嘘吐きとは別れようと思うの」
「え……?」
みるみる顔が変わる。
思った通り。
本当に可愛い。
「嘘、だよな」
「あなたが嘘吐きだからいけないんでしょ?」
「嫌だ! 嫌だ! 嘘って言ってくれ!」
「ん? 今日はエイプリルフールなんでしょ?」

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