「光る君へ」第12話感想

さて、今週は色々大きく動きましたね。道長第二の妻、源明子も本格的に登場しました。

妾は幸せか否か


 まひろの父為時は、病で命が長くない妾・なつめを見舞っています。しかも為時はなつめの「娘に会いたい」という願いを聞き入れ、まひろにその娘を呼んでこさせます。最後の望みがかなって安堵したのか、なつめは安らかに息を引き取ります。これを見たまひろは、妾でもそれなりに丁寧に扱ってもらえるかもしれないのでは、と思い直します。北の方にはなれなくても、妾でもいい。道長の妻になれるのなら良いではないかと考えるのです。

 一方の道長。異母兄(母は「蜻蛉日記」の作者)の道綱と話をしています。道綱は、自身が妾の子であることや、自分も妾を持っていることから妾の心の内がよく分かるのです。
男が大切にしていても、妾からすれば足りないのだ。待つことしかできないのだから、とこぼします。それを聞いて、まひろに言ったことがいかに酷だったかと気づくのです。

もう!!君たちはすれちがってばかり!!

焦る藤原公任


 寛和の変で藤原兼家が摂政となって力を持ち始めた一方、藤原公任の父・頼忠は名ばかりの関白になってしまいます。それは恥をさらしているようなものだといい、引退を考えていることを公任に伝えます。

しかし公任は焦っています。自分の身分の高さと教養の深さを誇っていましたが、寛和の変で形勢逆転。文字も下手くそだった道長は学問にも政治にも積極的に取り組むようになったし、なにより「摂政の息子」となった。

ここで父が引退したら自分の立場はさらに弱くなると危機感を訴えます。
眉目秀麗な町田啓太さんの憂いを帯びた表情が素敵でした。

 そう、公任はこの政変以降、政治的にはぱっとしなくなります。しかし、和歌や漢詩などの才に大変恵まれており、文化人として生きる道を選ぶのです。道長に表立って刃向かうのではなく、自分の才を活かす道を切り開いていく公任。まひろ役の吉高由里子さんいわく、公任も長生きだそうなので、安心して推すことができます。

父の無念を晴らすために…


さて、少し前に顔出しされた源明子(演:瀧内公美さん)。
瀧内さんは、「大奥」で温厚で聡明、忠誠心の厚い阿部正弘を演じられていた印象が強かったのですが、今回の明子役は一癖も二癖もありそう…というか、怖い。
父・源高明が藤原兼家によって失脚させられたことに深い恨みを感じており、兼家の息子である道長の妻となれば、兼家にも近づけるから、兼家の髪の一本でも手に入れて呪詛できる。そして父の恨みを晴らすと腹を決めています。

これには少々、呪術の知識が必要そうですね。
呪詛したい相手の髪や爪など、身体の一部を手に入れてそれに呪いをかければ、本人にも呪いが及ぶと考えられていたのです。

「呪術廻戦」釘崎野薔薇が使っていた芻霊呪法「共鳴り」あたりが近いでしょうか。あれも、相手の血液や分身に呪力を込めた釘を打ち込むことで、野薔薇自身の呪力を相手に及ぼすことができます(理解が間違っていたらすみません)。

画像引用元:https://renote.net/articles/15612

さて、明子の目論見はうまくいくのか?今後の展開に期待です。
史実では、道長の嫡妻・倫子と明子では明らかに扱いが異なります。倫子とその子供たちがかなり優遇されている。
この明子は、それに気づいてまた一悶着起こしそうですね…
葵の上との扱いの差に嫉妬を抑えきれない六条御息所みを感じます。

恋か友情か


「お父様のことでお役に立てなくてごめんなさい。でも、ここにはいらしてね」という倫子の言葉に甘えて、倫子のサロンに出入りするまひろ。

そこで、父が官職を失ったため下人に暇を出し、家事は自分がやっていると打ち明けます。畑仕事はやりがいがあるし、床を拭くのも、「板目が川の流れや龍に見えて楽しい」と言います。おそらく本心だとは思いますが、ちょっとなんと言って慰めたら良いか分かりませんよね。
ここで倫子が機転を利かせて、「私も、板目を見てみましょう」と言って場を和ませます。倫子の寛容さと優しさに救われるまひろ。

倫子はさらにこう言います。「まひろさんが来るようになってから、この集まりが楽しくなった。どうかこれからもいらしてね」と。

まひろも、「最初は気詰まりでしたが、倫子様のおかげでここに来るのが癖になってしまいました」と返し、二人で笑い合います。
笑うときに口元を袖で隠す倫子の癖をマネしてしまうあたり、本当に倫子を慕っているのでしょう。

だからこそ、まひろは倫子を裏切れない。

道長から文を送られ、あの廃屋で再びの逢瀬。まひろは、為時がなつめを丁寧に看取ったのを見たことで、妾でもいいから妻にしてほしいと言うつもりでした。
一方の道長は、道綱から妾の身の上の辛さを教えてもらったことで、自分から再び「妾になれ」とは言えない。「頼む。妾でも良いと言ってくれ」と心の中で祈ることしかできない。

しかし道長は衝撃的なことを言います。
「左大臣家の一の姫(倫子)に婿入りしようと思う」と。
まひろは衝撃を受けます。倫子が想いを寄せる人と、自分の恋する人が同じ人だったと分かってしまったのです。
まひろは言葉を失い、「倫子様は大らかで素敵な方です。どうかお幸せに」と言うことしかできない。
彼女は恋心よりも、倫子への友情を選びました。

オタク筆者の情緒はむちゃくちゃにされましたが、こういうのが見たい!と感じました。
女同士はドロドロしているとか、真の友情は築くことができないとか、そういう愛憎劇もエンタメとしては悪くないけれど、あまりにステレオタイプだなと。
女性同士でも、というより、女性同士だからこそ築ける絆もあるのです。
嫉妬や友情に性別は関係ない。

まひろは、妾にすらならずきっぱり身を引くことを決めます。
「道長様と私では、生きる世界が違うのだと改めて感じました。私は私なりに、生きていく意味を見つけて参ります」と言葉を絞り出します。

初恋の、青春の完全な終わりでした。
視聴者として全知の立場で見ているから「もどかしい」と思ってしまうけど、当事者からするとどうしようもない流れになってしまっていく、というのがリアルなんですよね。

この紫式部は…源氏物語を書きますわ…という説得力を、圧倒的説得力をもって示してくれていますね。

女性大河はスイーツ展開ですって?どこが?(黒閃4連発を食らった呪霊レベルの苦しみ)
次回はまた数年経つみたいですね。予告では定子が大人になって、彰子とおぼしき女の子も出てきました。うう…(血の涙)
これからも視聴を続けたいと思います。


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