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おしますか

「ビャアーーーーーーー!!!」

ついさっきのこと。スーパーマーケットのセルフレジで、年のころ2~3歳くらいの女の子が火が付いたように泣き出した。

父親と思しき男性が「ごめん、ごめん、押したかったんだよね」と、抱き上げ、タッチパネルに触らせる。しかし、泣き止まない。

どうやら、タッチパネルに表示される「精算」の部分を押したかったようだ。男性は「タッチパネルに触れさせればいいんだろう」と、思ったのだろうが、精算は済んでいる。だって、機械からレシートがベロ~ンと、出ている。お釣りだって出ているもん。

子どもは、いっこうに泣き止む気配がない。お気の毒に… 自分は「わかるよ、わかるよ、押したかったよなぁ、なんなら、こっちのレジで押すかい?」と、心の中でメッセージを送ったが、届かなったようだ。

子どもって、ボタンを押すのが好きだ。なぜだか、押したがる。最たるは、バスの降車ボタンだ。自分が降りる一つ前を過ぎたら、我先に押したがる。早押しクイズだ。

ある時、バスで小さな子どもを3人連れた家族と乗り合わせた。一人の子が、ボタンを押した。「ピーン!次、とまります」のアナウンスが響く。

すると、他の子たちがぐずりだした。家族は、前の方にいたので、その異変に運転手が気づき、点灯している「次、とまります」をリセットして、「押していいよ」と気遣った。

下の子が押すと「ピーン!次、とまります」と響く。だが、下の子はもう一人いる。運転手は、再びリセットした。3人目の子が押す。「ピンポーン、次、とまります」

路線バス一区間で「次、とまります」三たび。こりゃレアだ。運転手さんに、ファインプレー賞を贈りたい。

子どもにとって、自分で何かを操作したり、動作させたりするのは難しい。だから、指一つで達成感が味わえるボタンは魅力的だ。しかも、押すと何かが起こる。ブザー、チャイム、照明、扉や窓なら開いたり閉まったり。

だいたい、ボタンものって、どんな人でも扱いやすいよう、心地よい押し具合やスムースな動作ができるよう設計されている。だから「押す」と快感を味わえるのだろう。

ところで、スーパーのレジにいた父親。もし「押せば泣き止むだろう」と考えていたら、甘かったかも。そのあとに起こる「レシートが出る」「お釣りがでる」「『ご利用ありがとうございました』のアナウンス」までがセットになっていて、子どもは満足するのだろう。

「ボタンを押したい」という衝動。大人になるに従って薄れていくようだ。個人差あるだろうが、バスの降車ボタンなんて「誰かが押してくれるだろう」といつも他人任せだ。放っておいてバス停まであと100mくらいのところで、慌てて押したら同じバス停で降りる人が他にもいたことがある。
なんだよ、降りるんなら、押してくれよ」きっとみんな同じことを考えていたのだろう。ちっ!チキンレースじゃん。

そういえば、子どものいたずら”ピンポンダッシュ”。一連の流れは、ボタンを押す動作から始まる。家人が出てくるという「反応」で完結するものかと思ったが、出てくるところまで見届けないこともあるから「ボタンを押す」とセットになっているのは、家人登場より「出てくるかもしれない」というスリルの方なんだろうな。やっちゃいけないけどね。

沖縄出身のお笑い芸人さんが命名してくれたペンネーム/テレビ番組の企画構成5000本以上/日本脚本家連盟所属/あなたの経験・知見がパワーの源です