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ならびますか

なにが待っているんだ…

ついさっき、担当している番組の公開イベントに行った帰りみち、繁華街で長い行列に遭遇した。行列の先は、タピオカドリンクの店だ。

一杯500円以上。甘さ、氷の量、トッピングをカスタマイズできるせいか、注文して支払いして商品を手にするまで1分くらいかかっている。

行列の人数からして、最後尾のお客さんがタピオカドリンクを手にするまで30分はかかりそうだ。

そこまでして飲みたい?

タピオカドリンクと言えば、もちもちの食感と渋めなティーなどとの組み合わせで独特な喉越しが病みつきになるのかもしれない。去年、仕事で早稲田大学の学園祭に行った時、そこらじゅうでタピオカドンリンクを売っていたなぁ… 目的の建物に辿り着くまで、ホットドッグ、アジアの屋台フード、タピオカドリンク2杯の洗礼を受けた。だいたいストローが太いから秒で飲み干せちゃう。

流行りなんだろう。でも、行列に並んでまでって…

行列に並ぶ動機は様々だ。

並んででも手に入れたいものがある…
並ばないと手に入らないものがある…
みんなが並んでいるからとりあえず…

その時だけの限定品ならまだわかる。しかし、いつでも手に入るものにわざわざ並ぶって…

どこかのテーマパークみたいに「並んでいる時間もアトラクションです。」みたいな屁理屈もあるかもしれない。でも、タピオカドリンクまでの道のりは、スマホいじっているくらいだろ…

今日、最後尾にいたのは10代くらいの子か?もし、30分間バイトをしたら賃金は500円くらいだろう。その時間の価値プラス商品代を考えると、今回のタピオカドリンクは、手に入れるのに一杯1000円くらいのコストがかかっていると考えてもいい。

余計なお世話だが、せめて列が短い時に並んだら?

あるマーケティング会社の調査によると「行列に並ぶのは好きじゃない」
と答えた人は、80%以上いたという。ホントは並びたくないんだ。

でも、人間って同調しちゃう生き物。「行列の先には、なにか幸せが待っているんだろう」って、並んじゃうんだろうな。

それに「時間をかけて並んだ」という汗かき感が、ゲットできたときの
喜びを増幅させるのかもしれない。

行列で思い出したが、テレビ番組で「行列」の画は、人気を表現するのにわかりやすいアイコンだ。グルメ番組や情報番組で飲食店を紹介する際、どれだけ言葉で「人気店」と強調するより、行列風景を見せるのが一番だ。

しかし、最近は、おなじみの「行列風景」を目にすることが減っていることにお気づきだろうか?

テレビ局によるのだが、ある局ではほとんど出てこない。理由は「行列の裏どり」にある。

飲食店によっては新規開店時に、さくらの客を雇うところもある。いわゆる「並び屋」だ。別に法律には触れていないが、これを撮影して放送することはコンプライアンスに引っかかる。作られた行列をして「人気店です」というのは嘘をつくことだからだ。

もし店前の行列を撮影した場合、並んでいる人、全員に確認しなければならないというローカルルールがある。「あなたは、本当のお客さんですね!」って。

現場ではとっても面倒な作業だ。いちいち確認した上で「映ってますけど放送に使っていいですか?」という承諾書にサインももらわなければならない。放送したあとのトラブル回避のための危機管理だ。

「そんな面倒なら、いっそ撮影しない」というのが現場の判断。

あるテレビ局のニュース番組には、行列のできる店を紹介するミニコーナーがある。しかし、注意して見てみると「行列データ(何時頃、何人)」をテロップ表示しているものの、そこに使っている行列カット(風景)は、並んでいる人の数が、それほどでない。それほどでない、というのはひとりずつ裏どり作業しても、さほど手間にならないくらいという意味。そのカットに映り込んでいる人たちは裏どり済みなのだろう。

「あぁ、なるほど、こういう表現の仕方もあるなぁ」と、しみじみする。

帰りみち「人間が行列に並ぶ心理」とか考えていたら、不覚にもタピオカドリンクが飲みたくなってきてしまった。思わず近所のスーパーで、タピオカミルクティーに手が伸びた。1本170円。だが、夕方の混雑タイム。レジには長い行列。これ、たった一本のために… でも

今、飲みたいんだ!

迷うことなく、行列に並んだ。

沖縄出身のお笑い芸人さんが命名してくれたペンネーム/テレビ番組の企画構成5000本以上/日本脚本家連盟所属/あなたの経験・知見がパワーの源です