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ライブ会場は、自分の感情を全開にできる場所

「あまり感情を表に出さないよね」と、よく言われる。いつからそうなってしまったのかは全くわからないのだけれど、気がついたときには顔色はあまり変わらないし、声の抑揚はほぼ一定になっていた。

できれば感情を、特に「喜」と「楽」の感情はどんどん出していきたいのだが、上手くできない。全身で嬉しさを表せる友人を見ていると心底羨ましいなあと思う。

「怒」と「哀」の方が表情や態度に出ているよなと自覚しているものの、周囲からは「いつも変わらないね」と言われるばかりである。

そんな私でも、感情を全開にできる場所がある。

ライブ会場だ。

高校時代、私の好きなバンドのことを好きな人はおろか、知っている人も周りにあまりいなかったから、大学生になると一人でライブに足を運ぶようになった。各種SNSで繫がるのであろうファンコミュニティにも属していないため、本当に一人。周りに私を知る人は誰もいない。そしてきっと、二度と隣り合うこともない。

コールアンドレスポンスで大声を出しても、手を上げるタイミングを少し逃しても、泣いてしまっても、一瞬の恥だ。そもそも、みんなステージに夢中だから私は空気と一緒。恥ずかしいと感じる必要なんて、皆無なのだ。

たとえば、andropの『Run』は掛け声を入れるタイミングがたくさんある。

走れ! 走れ! 限りを決めるな
走れ! 走れ! 越えるのは今
こぼした涙も歌にして君だけが行けるよ

「走れ!」の後にすかさず「HEY!」と言うのだけれど、ライブに行き始めた頃は見様見真似で戸惑っていた。しかし、今ではもう慣れたもの。跳ねながら大声で叫んでいる私は、職場の誰も見たことがないぐらい楽しそうな顔をしていると思う。

andropは落ち着いたナンバーも、仕事やプライベートに悩み消耗した女子の心に染み渡るすばらしい曲ばかりで、心の健康度はぐぐっと上がる。だけど、会場のボルテージをギュンっと急上昇させる『Run』『Voice』『MirrorDance』『Yeah! Yeah! Yeah!』は、「あーもう楽しい!」以上のことが言えないぐらい、心を「楽」の感情一色にさせてくれるのだ。

「哀」の感情に気がつかせてくれるのは、雨のパレード

言葉を選ぶ間に頬を伝っていく涙

breaking dawn』のワンフレーズで歌詞のままに泣いてしまって、誰かに「泣いていいよ」って言ってほしかったんだなと気がついたり、

行き着いた東京
彩るネオンサイン 埋め尽くすニューソング
ここで僕らは夢を見ている
輝ける街ですりきれる今日を受け入れることに慣れてしまった
調子はどう?

Tokyo』で、夢とかやりたいことという言葉に翻弄されている自分に気がついて目頭を熱くしたりしてきた。ボロボロ涙をこぼしていたとしても、真っ暗なライブ会場なら誰にも気づかれることはない。

私はライブ会場で、本当によく泣く。生の演奏と、美しくって優しい歌声による心のデトックス効果にはすごいものがあるので、ライブ後の私はとっても機嫌がいい。

「喜」はもう、ライブ会場に行けている時点で感じているから例を挙げるのは難しい。「チケットが取りにくくてようやく行けた!」ということなら、圧倒的にSUPER BEAVERだ。

東京・神奈川では落選してばかりだったため香川まで遠征したのだけど、生でたっぷり聴ける喜びといったらほかなかった。

自分らしさってなんだ? ”人とは違う”で差をつけろ
コンビニの雑誌コーナー 表紙に太字で書いてあった
自分らしさってなんだ? 子供の頃は気にもせず
気に入らなければ怒って 好きなものを好きだと言って

らしさ』は、感情を上手く出せないし、自由でいいはずなのに正解を探してしまう私みたいな人にぴったりのナンバー。買ったばかりのグッズのタオルが湿るほどに号泣した。

予感のする方へ 心が夢中になる方へ
正解なんてあって無いようなものさ 人生は自由

予感』は、伝えたいことは『らしさ』と似ているのだけれど、こちらは掛け声を入れるところがあってノリのいい曲。サビで手を挙げて全力で振っているうちに、ハピネスな気持ちになる。

SUPER BEAVERは、「みんな」とは絶対に言わない。「あなた」と呼びかけ、一人ひとりに届ける意識がとても強い。だから、聴いている側の受け取るエネルギー量がハンパじゃなく大きい。生で聴いて、感情を抑えるなんて無理。「溢れ出るものをぶつけ返す」ぐらいに高まるので、私の顔にも声にも普段の10倍は感情が表れていると思う。

残す「怒」の感情をライブ会場で思い出すことはない(マナーの悪い人がいる場合を除く)。

音楽はいつも、私の味方だ。耳にイヤホンをさせば、24時間365日いつだって寄り添ってくれる。だけど、ライブ会場で聴く生音は、もっともっと近くで励ましてくれたり、見失っていたものを一緒に見つけ出したりしてくれる。

隠しているうちに表に出せなくなった感情を、すくい上げてもくれる。

だから、私はこれからもライブ会場に行く。

※各曲名にLINE MUSICへのリンクを貼っています。※

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