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弱さを抱えて、穏やかな場所で生きていく

「淡水魚はどんなに頑張ったって、淡水でしか生きられないんだよ」
先日、先輩から言われた言葉。
うんうん頷きながら、すとんと心に落ちた。文字通り、目からうろこだった、はずなのに。

目の前にフォーカスすると、つい前提を忘れてしまう。それから、隙あらば醜い感情が前に出てこようとする。
だから、何度でも何度でも思い出そうと思う。私の生きていく指針を。

先日訪れた岡山。
以前もそうだったのだけど、風景や観光地よりも何もりも“人”のあたたかさが伝わってくる。だからまた来ることを決めたのだと思う。

今回もそう。会う人会う人、一人ももれることなく誰もが本当に素敵な人たちだった。

変化すら楽しんでいる様でやわらかい笑顔を持つ人、
「これで生きていきたい」と変わらぬ芯を持ち、伝えられる人、
自分の武器を使い分け、それぞれを磨いている人、
表現方法を広げながら、つながりを紡いでゆく人、
前に出ていなくても、場の雰囲気を形作っている人、それから、価値観をぶらすことなく柔軟に、愛を持って伝える人……

きらきらと輝く人たちが集まった空間は、とてもパワフルで、それでいてじんわりとあたたかかった。

だからこそ。わかりきっていたことなのだけど。
「あなたは誰?何をしているの?何が好きなの?」という話がとってもつらい。
当たり障りのない言葉を探しながら、心の中ではこう返すしかない。

「お恥ずかしながら、伝えられることを私は何も持ってないんです」
ごめんなさい、面白くないですよね、と謝罪の言葉を添えて。

特筆できるスキルや経歴も、持って生まれた才能もない。
「今後こういう仕事がしたい」とか「この分野に関わりたい」なんてこともない。
初対面の方と話すのがとても苦手で人当たりもよくない、とくる。
身の置き場がない心持ち。そんな時はできるだけ空気になるようにつとめる。



目の前で繰り広げられる眩しい会話を聞きながら感嘆と尊敬を深めていく。

その一方で、生き生き話す姿を羨ましく思ってしまう私がいた。それどころか、嫉妬にも近いようなもやもやが立ち込めていくのを感じていた。

私には想像しえない困難に現在進行形で立ち向かっているかもしれないし、これまでだって迷い、葛藤たくさんあったかもしれない。その度、舵を切り、進んできたのだろうということも想像に難くない、のに。

自分はというと「こんな自分であれたら」「もっとうまく立ち回れたら」と後悔を繰り返す。
立ち向かわなければ、と環境を変えたこともある。
スキルを磨き、関わる人が増やし、少しはできることが増やそうと思ってのことだ。

しかし、現実は甘くない。得意と苦手の境界線が、はっきりと浮き彫りになっただけの散々な結果に終わった。
「できるってなんだっけ」状態になったり、できる人に嫉妬して自己嫌悪に陥ったり……その繰り返しは、すっかり自分をすり減らしていた。“ない”ことが苦しくて、もがいた先に見えたのは、自分の弱さだった。

勝手に自己嫌悪に陥り、息苦しくなりそうになった時、“生きやすい場所”の話が不意に心をよぎった。

勝手に姉の様に慕っていて、喜びもつらさも共にした戦友でもある。優しくて聡明な先輩と話していたときのことだ。

「無理をして、適応できればいいけれど、そうじゃないこともたくさんある。
淡水魚は海では生きられないけれど、川や湖でも生きられるフィールドはあるんだよ。泳ぎやすいところで、伸びやかに生きる方法も選べるからね」

中には、海水に投げ込んでも生きられるように変化する個体もいるかもしれないけれど、どうだろうね、なんて。まるで全てを見透かされているかの様に。
どちらが向いているのか、誰より自分が一番わかっている。

その時に、心に決めたはずだった。何もない、なりの人生を受け入れていくことを。
(ここまできて以前も似たようなnoteを書いたような気がする。変わってないことに苦笑いしながら、やっぱり私にとってのテーマなんだろう、と思う)

情けない弱音を吐いても、助けてくれる人はいる。また会いたい人もいる。残しておきたい景色もある。
決して多くないけど、何もない、は違っているのかもしれない。

周りの方の輝かしい活躍を目の前にしても、客観的に事実をとらえること。それぞれのフィールドで必死にやってきた結果が形になっているなんて、ただただ素敵なこと。
でも、勝手に周りと比べて焦ることは何もないし、羨ましく思ったところで誰も得しないんだから。

弱さしか持っていない自分でも、心地よくいられる場所を時間がかかっても探していきたい。
それは多分、決して進まないことでも、頑なに現状維持をすることとは違っていて。

今の自分ができることをできる場所で、頑張れそうなことを精いっぱいやろう。そこで周りと比べることなく少しずつ進んでいこうね、という“自分なりの成長”を目指すことなのだと思う。


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