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【読書】『すぐ死ぬんだから』を読んで鏡を見ようと思った話

内館牧子さんのご著書は軽妙で明るくて文章がどことなくカラフル。『終わった人』に続くどぎついタイトルで、手に取るにも多少ためらいがあった。実際人間ドックに行った日も読み進めていたが各部屋に入って荷物置き場に置く際にブックカバーをつけてこなかった自分を悔やんだほどだ。

最近は泉ピン子さん主演で舞台化もされている話題の本であるがこれといった予備知識もなく前半は少しばかり退屈気味に読んでいた。ネタバレしたくないので中盤で起こる出来事からの急展開にページを捲る手ももどかしくなったとだけ記しておく。

このところ、日本社会の高齢化に伴ってベストセラーのタイトルも凄まじく偏っている気がする。
『80歳の壁』だとか『傘寿まりこ』だとか。それらは読んでないけど『すぐ死ぬんだから』同様高齢者向けの本や漫画が売れている。まだ50代だからまだまだ生きると自分でも思いながら先輩方のお話には耳を傾けて損はない。

タイトルに反して主人公のハナはおしゃれで(高齢者向け)ファッション誌の読者モデルに選ばれるほど。友人やお嫁さんに対して妬みやマウンティングする人間臭さはあるものの、根は明るい。

「すぐ死ぬんだから」

の免罪符を口にしつつも自分に手をかけて孫とショッピングに行ったりもする。

あとがきに作者は「品位ある衰退」について述べている。すぐ死ぬという免罪符に甘んじることなく、自分に関心を持ち怠ることなく外見を磨く男女はない面も若々しいという。

子育てを始めてから自分の顔や全身を鏡に映すことがめっきり減って、それは子育てが終わろうというのになかなか戻ってこない。現実に向き合うのが怖い。お化粧はドラッグストアで買ったプチプライスのもので、髪は白髪さえ目立たなければオッケー、服装も清潔ならば良しとしていた。けれどももう少し自分に関心を持とうと思う

322ページには

化粧には二つの効用があるという。スキンケアは「癒し」をもたらし、メーキャップは「励み」をもたらすという。

とある。癒しと励み!軽く見ていた。今日から鏡を見て自分を大切にすることにした。モノトーンもいいけれど明るい装いも心掛けてみようと思う。

ハナに起こった出来事がもしわが身に降りかかったらと思うと背筋がぞっとする。80歳近くになった自分を思い描いて、今大切にするものが何かわかるように思う。暗くならずにしなやかにしたたかに年を取ることは難しいだけにかっこいい。手軽に読めて楽しい一冊だった。




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