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【読書】河崎秋子『肉弾』

この著者のお名前は先の直木賞受賞で知ったばかり。受賞作『ともぐい』に先駆けてこちら『肉弾』を拝読。数日枕元に置いていたが読み始めると止まらない面白さで二日で読了。スマホに毒され老眼に悩まされている昨今の私にとっては快挙。

河崎さんが北海道の方ということで、北海道の自然を舞台にした作品らしいことは想像できた。おどろおどろしいのかとなかなかページを開くことができなかった。ところが主人公の腰の抜けた現代風の青年やその父親、周りの数人のキャラクター描写もリアリスティックで楽しく読むことができた。

とにかくこれまで見たことのない世界、味わったことのない読書体験で、それなのにまったく嘘っぽくない地に足のついたお話。こんなお父さんどこかにいそう、とかこんな息子どこにでもいそう、と思わされる。

ペットとして飼われている犬の活躍ぶりもまた興味深くて、もちろん鹿、熊にまつわる知識量には実体験とその延長の取材の綿密さがあるはず。本州の、都会に生息している私には別世界。摩周湖など観光の歴史も面白かった。

たまに自然と戯れに出かけて熊鈴を鳴らして歩いたり、キャンプ場には熊に注意の立て看板があるのを見たりしたことはあるけれど、実際野生の熊が眼の前に現れたら?最近は熊や猪に人間が襲われれニューズに触れることもあるけど怖すぎる。何といっても顔面を食いちぎられるらしい。

地球に生きる命のうちで人間だけが文明を持って自然を支配しているという勘違いこそ滑稽なのだけど、まあその様な小難しいことはさておいて、スリル満点のこの小説を読んでみられることは素晴らしい読書体験になることは個人的に保証します。

日々の雑事に取り紛れる中で、この本を読めたこと、記録を残せたことが嬉しく思われる朝です。新しい一週間の始まりですね。今日も良い一日を!

朝の東京駅


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