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違法行為を公然と行なった「権威ある」国立病院、指示したのは厚生労働省!


やらかしたのは「権威ある」国立病院


    国立精神・神経医療研究センター病院という名をどこかでお聞きになった方は多いのではないでしょうか。
 分かりやすく言うと、がん治療・研究における国立がん研究センター病院のような地位を、わが国の精神・神経医学の領域で占めている病院です。これは私の主観的評価ではありません。
 この病院は「高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律」に基いて設立されている国立研究開発法人です。
(本稿では、正確を期すために長ったらしい法律の名称や条文をたびたび記しますが、しち面倒臭かったらそんな箇所はナナメ読みされて構いません。それでも分かるように書きますから)
 同法により設立されているのは他に、先にふれた国立がん研究センターなど五法人しかありません。そのすべてに研究機関と病院が置かれています。
 以下、国立精神・神経医療研究センター病院のことを「センター病院」と略記します。 
 その基本理念について、センター病院理事長・総長の中込和幸氏はこう述べています。
「病院と研究所が一体となり、精神疾患、筋疾患、及び発達障害の克服を目指した研究開発を行い、その成果をもとに高度先駆的医療を提供するとともに、全国への普及を図ること」であると(令和三年四月)。
 お分かりのとおり、全国の精神科・神経科等の医師たちに対して、完全に「上から目線」でおっしゃっています。法律に「高度専門医療」なんて書かれている病院と思えば、それも不自然なことではないでしょう。

常態化していた違法行為


「上から目線」のエラソーなことをおっしゃる中込理事長。この人が院長当時私を騙しました。
詐欺同然の手口で任意入院患者たちを騙していました

 ところが!
 そんなセンター病院が、医療の現場で堂々と違法行為を行なっており、しかもそんなことが常態化していた(アタリマエのこととして行われていた)のです。それだけでも信じ難いことでしょう。
 でもそれだけじゃないんです。

事実と証拠によって告発します


    そんな違法行為を(事実上)「やるべし」と指示していたのが、何と何とわが国における医療の所管官庁である厚生労働省だったのです! 
 私自身、書いていて信じ難い思いがします。まさに二十一世紀の怪談で、その摩訶不思議さに頭がクラクラしてしまいます。
 私はその違法行為によって、とてつもない精神的苦痛を受けました(しかしコトの重大さに比べれば、私個人の被害などちいさな問題です)。
 以下、センター病院の違法行為(患者たちを欺く詐欺的行為)を、動かぬ証拠と事実に基いて告発し、同院と厚生労働省の責任を問います。
(なお、センター病院の病棟の実態たるや「高度先駆的医療」が聞いてあきれる、というより、もはや爆笑もののジョークとしか思えない、お粗末でズサンきわまりないしろものだったのですが、その話はまた別の機会に書きます。おもしろいですよ、お楽しみに)

私がセンター病院に入院したいきさつ


 私は令和元年十二月十四日に自宅で自殺を図りましたが未遂となり、同日東京医大病院救急救命センターに搬送され、入院しました。その後同院とセンター病院の協議により令和二年一月十日に転院。センター病院に法的には医療保護入院しました。
 その後四月一日にセンター病院に任意入院し、五月八日に退院しました。
 この間に退院はしていません。私は同じセンター病院の同じ病棟にい続けていました。「入院」の法的性格が根本的に切り換えられたのです。
「任意入院」も「医療保護入院」も、精神科病院にしか存在しない概念です。その内容は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」が規定しています。
 この法律名はあまりにも長ったらしいので、関係者もほとんど使わず、「精神保健福祉法」と呼んでいます。私はこの略称は、はなはだしく不適切だと思っているのですが、本稿では便宜上止むを得ずこの呼び名を用いることにします(なぜ「止むを得」ないのかは、以降の記述でお分かりいただけます)。

任意入院と医療保護入院


「任意入院」とは、任意(自由意志)による入院を意味します。分かりやすく言えば「入院したいな」と思った人がすることです。ですから当然「退院したいな」と思ったら退院できるのです。
 それが、わが国の精神保健福祉法が明確に定めている任意入院の決まり事です(のちに条文を引用して詳しく述べます)。
「医療保護入院」は、「入院したいな」と思ってない患者を、同意なしで強制的に入院させることができるという制度です。入院期限についての規定はありません(規定が存在しないということは、すなわち入院を無期限で強制することが可能であることを意味します)。
 「任意入院」も「医療保護入院」も、病院の他の科には存在しない精神科にしかない概念です。
 精神保健指定医または特定医師(両者の定義につきましては割愛します)の診断と、家族のうちひとりの同意があれば、本人がいかに嫌がっても医療保護入院をさせることができます。家族がいない場合などは居住する市区町村長の同意による場合も規定されています。
 かなり問題がある、というよりも、とてつもない問題だらけの制度で、私は現行の医療保護入院制度は廃止すべきだと思っています(ただし、異論も多いとは思うのですが、これに替わる強制入院の規定は必要と考えています)。
 ここでお断りしておかねばならないことがあります。
 私は医療保護入院を定めた現行の精神保健福祉法は、抜本的に改正すべきだと思っているのですが、本稿は「悪法も法なり」という前提で書きます。        それは、とても不本意なことではありますが医療保護入院制度を是として書き進めた文である、ということです。その点あらかじめご承知おきください。
 なお、昨年12月10日に、精神保健福祉法の一部改正が参議院本会議で可決・成立し、その大部分は令和6年4月1日に施行されます。しかしこの改正では、私が指摘する問題点は何ら改善されないので、本稿ではこれ以上言及しません。

センター病院に見た「天国と地獄」


 私の東京医大病院からの転院が取り決められたのは、その時点で私が15年来センター病院外来の通院患者だったからです。自殺未遂による東京医大病院とセンター病院の入院による中断期間を除き、私は現在に至るまでセンター病院の通院患者です。
 私をずっと診察・治療して来られた外来の主治医は、ほんとうに素晴らしい先生です。医師としてのスキルも人間性も。
 私は高校時代も現在のセンター病院に約二年間通院したことがあります。当時は「国立武蔵療養所」という名称でした。このときとてもお世話になった先生も素晴らしい方でした。
 ですから、私はセンター病院のことを、ずっと「素晴らしい病院」と思い、そう信じて疑わない患者でした。
 ここに入院するまでは。

「任意入院」に湧き上がった歓び


 しかし、その病棟の実態たるや目も耳も疑うような酷いものでした。
 病棟での主治医にも、私は完全に絶望しました。
 医師としてのスキルも、人間性もまったく信頼できなかったからです。
 ただし、この点につきましては、私の精神障害のために歪んだ見方がなされているのだ、と受け取っていただいて差しつかえありません。
 しかしながら、つけ加えておきますと、先に記した外来の先生と、この病棟の主治医では、診断名からしてまったく異なります。外来の先生は、私に希望を与え続けてくださり、めざましい改善をなし遂げられましたが、病棟の主治医は私の状態を悪化させ、絶望させただけです。
 原因が歪んだ主観であれ何であれ、このように患者との信頼関係が〈完全に〉壊れてしまっては、いかなる精神科医にも治療は不可能になってしまうのです。
 医療保護入院が任意入院に変わると告げられたとき、人生に絶望しきっていた私の胸に、意外なほどの歓びが湧き上がりました。
 それは退院に近づくことだったからです。
 退院とはすなわち、絶望しきっている医師の管理下から脱せられる、コイツとは縁を切れる、ということを意味していたからです。

病院長名で渡された怪文書


  私の手許に「入院(任意入院)に際してのお知らせ」というタイトルの1枚の文書があります(以下「お知らせ」と略記)。
 4月1日の任意入院日に、病院管理者である中込和幸院長(当時)と、主治医の名により私宛(氏名の記載があります)に手交されたものです。
 それを一読した私は失望落胆しました。
「何だ、こんなもの、全然『任意入院』じゃないじゃん」
 と、思ったからです。
 当時の私は体力の衰弱が著しく、気力や思考力もはなはだしく低下していたのですが、それでもそのぐらいの意味内容は読み取れたのです。的確に。
 退院後、約1年と10カ月が経過し、体力気力思考力が回復した状態で「お知らせ」を読み返した私は、愕然となりました。
 その6項が、日本語としてまったく意味をなさない、支離滅裂、奇々怪々な文章だったからです。

矛盾した文面、わけがわからない


 引用します。
 ただし、原文そのままではありません。(A)(B)は、原文には存在しない、私が挿入したものです(それ以外の加筆や削除はしておりません)。
 
6(A)あなたの入院は任意入院でありますので、あなたの退院の申し出により、退院できます。(B)ただし、精神保健指定医又は特定医師があなたを診察し、必要があると認めたときには、入院を継続していただくことがあります。その際には、入院継続の措置をとることについて、あなたに説明いたします。
 
 お分かりでしょうか。
 (A)の文と(B)の文は完全に矛盾しています。
 (B)の文の末尾には「あなたに説明します」と書かれていますが、「説明し、納得を得ます」とは書かれていません。そもそも「入院継続の措置をとる」こと自体が決定済みの既成事実であり、「説明」することが、患者に対する事後的対応でしかないことは明らかです。

「任意」を全否定した任意入院?


 ここに書かれているのは、私が〈納得しようが/納得するまいが〉無関係に、精神保健指定医(以下「指定医」と呼びます)または特定医師が、診察後の判断により私の入院を継続させることができる、ということです。
 すなわち、私の自由意志と、指定医または特定医師の判断が異なった場合は、無条件で後者が優先されるのです。
 常識的に考えて、退院申し出から退院するまでの間に診察が行なわれないということは考えられません(「退院するまでの間」がほぼゼロ、つまり申し出後直ちに、ということは考えられますが)。それ自体は正しいことだと思います。そうでなければ何のための医師なのか、ということになってしまいますから。   
 退院申し出したら、必ず診察は行なわれるのです。
 したがって、6項の規定によると、私はいかに退院したいと訴えても、任意(自由意志)によって退院することはできません。医師の継続措置ナシという判断(=退院許諾がなければ、絶対に、良いですか、絶対に、いつまで経っても退院できないのです。
「精神保健指定医又は指定医は、任意入院患者の入院を、(必要と認めれば)強制的に、かつ無期限で継続させることができます」
「お知らせ」⑥項は、明らかにこう言っていることになります。

六法全書を調べてみると


「お知らせ」6項の(B)の文は(A)の文が認めた任意性を完全に否定しているのです。
 こんなもの、全然「任意入院」とは呼べません。

    わが国の法律には、こんなめちゃくちゃで意味不明なことが書いてあるのか、と衝撃を受け愕然となった私は、六法全書で精神保健福祉法を調べてみました。
 
任意入院については同法の
 
第五章 医療及び保護
 
という章見出しに続く、
 
第一節 任意入院
 
にまとめられています。
 当然ながら、この第一節は、すべて任意入院についての記述で占められています。二〇条と二一条の二つの条文から成ります。
 その二〇条は、こうです。
 
第二〇条 精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行なわれるように努めねばならない。
 
「お知らせ」の6項とは真逆のことが書いてあります。
ちなみに「お知らせ」の1項は、こうなっていました。
 
1 あなたの入院は、あなたの同意に基づく、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第20条の規定による任意入院です。
 
 私は病棟で「お知らせ」を受け取ったとき、この1項が何を言っているのかさっぱり分かりませんでした。分からなくてあたり前です。精神保健福祉法を読んだことがなかったのですから。おそらくすべての任意入院患者がそうだったはずです。
 この二〇条は、根幹となる精神を定めた義務規定です。具体的な決まりごと(原則規定や例外規定、具体的手続きの規定)は第二一条に記されており、それらは7つの項目で構成されています。

法律では、きちんと規定されています!


 二一条の①項は長いので、読むのがいささか面倒かと思いますが、「国立病院が違反した」まさにその法律です。
 正確を期すために全文を引用しますが、読み飛ばしてくださって一向に構いません。のちに同じ内容を再度引用しますから。
 
第二一条① 精神障害者が自ら入院する場合においては、精神科病院の管理者は、その入院に際し、当該精神障害者に対して三十八条の四の規定による退院等の請求に関することその他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせ、当該精神障害者から自ら入院する旨を記載した書面を受けなければならない。
 
 これこそ「決定的」な記述なのですが、説明は後段でじっくりするとして、引用を続けます。
 
② 精神科病院の管理者は、自ら入院した精神障害者(以下、「任意入院者」という。)から退院の申出があった場合においては、その者を退院させなければならない。
③ 前項に規定する場合において、精神科病院の管理者は、指定医による診察の結果、当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは、同項の規定にかかわらず、七十二時間を限り、その者を退院させないことができる。

③項で言う「指定医」とはイコール「精神保健指定医」(要するに略称)です(精神保健福祉法一八条①項に記述があります)。
 
④項は長ったらしいので、次の記述は引用ではなく、私が要約した文です。
 
④ ③項で定めた診察を、緊急止むを得ない場合に限り、管理者は、指定医ではない他の医師に行なわせることができる。その医師を「特定医師」と呼ぶ。その場合、③項と同様に、医師が必要性を認めたさいには、管理者は任意入院者の入院を継続することができる。ただし、継続の期間は十二時間に限る。
 
 お分かりですね。
 ②項は義務規定であり原則規定です。
 ③④項は、厳格な限定条件を明記した例外規定であり、時限規定です。
 これならば「任意入院」についての規定として納得できます。
支離滅裂な6項とは大違いで、論理的にも何ら矛盾するところはありません。
「お知らせ」は、入院継続の期限についてまったくふれていないのです。
 人は、知らないことには考えが及びません。
    継続の期限について知らされなければ、「期限についての定めはないのだな」と思ってしまいます。誰だってそう思います(精神保健福祉法もその前提で記述されています)。
 現に、私の知る限り、任意(自由意志)による申し出で退院した人はひとりもいません。申し出ようとした人すらいません。
 すべての患者の退院日は医師が決めていました。

「事実を知らせない」手口は詐欺同然

 もしも、私がこの②③④項の規定を知っていたならば、任意入院後、直ちに退院を申し出ていました。
 いかに体力気力思考力が衰えた状態にあっても、そうしていました。
 理由は、言う間でもないでしょう。
 申し出たならば〈任意入院者である限り〉私は、必ず退院できたのです。
 それが、わが国の法律が明記している規定です。
 それを知らせずに、退院日は完全に医師の恣意(=好き勝手)が決めている。
 これは、詐欺同然(詐欺そのものではありません)の手口です。
 嘘をひとつも吐かなくとも、本当のことを知らせないことによって、錯誤に陥らせ(事実と認識を一致させなくさせ)、「財物を交付させ」たならば、刑法246条が規定する詐欺罪は、成立するのです。
 私は、まさしく「本当のことを知らせない」「お知らせ」の文面に騙されて、錯誤に陥りました。その結果、「直ぐにでも退院したい」という本心を訴えることをせず、反対に、一刻も早く縁を切りたい(既述のとおりこれは私の歪んだ主観から発した感情と受け取っていただいて差しつかえありません)医師に唯々諾々と服することを選択したのです。
「一日でも早く退院したい」がために、取るべき行動と、逆のことをしてしまったのです。
 詐欺同然の手口で患者を騙す病院の、何が「高度専門医療」なのですか。

法律の規定、分かるように「お知らせ」してね


 すでに述べたとおり、「お知らせ」は1項からして、ごくまれにあり得ないとは言えない例外(職業が弁護士とか)を除いて、すべての任意入院患者にとって意味不明の文章です。
 そんなモノ、お知らせされたって患者のほうは困ります。
 ちゃんと分かるように書いてね。
 どう書けば良いか。
 決っています。
「基く」と言っている第二〇条を引用すれば良い。それだけのことです。
「お知らせ」の文面は、その性格および目的からして、論理的に間違っていなければ良いとか(いるんだけど)、法律的に問題がなければ良いとか(大ありなんだけど)いうものではありません。
 できる限り分かりやすく、患者の権利と病院側の義務にかかわることがらについては、努めて正確であるべきです。あたり前でしょ(イラッ)。
 ですから、6項(A)(B)のうち、

(A)あなたの入院は任意入院でありますので、あなたの申し出により、退院できます。

 だって、間違っていないからこれでOK、とはとても言えません。
 なぜか。
「お知らせ」を読んだだけでは、この記述が病院の方針や内規なのか法律の規定なのか、患者には分からないからです。分からなくてあたり前です。
 その点を明確にするためにも、第二一条②③項は引用し、④項は要旨を記載すべきです。
 そうすることはもちろん、インチキで詐欺的な文面を正しいものに直すことになります。
 ④項のみ引用ではなく要旨の記載としたのは、④項の条文を理解するためには、文中に関連づけられている医師法や厚生労働省令までも参照しなければならないからです。それらをもすべて引用するのは、いたずらに煩雑で冗長な記述となりますので、私も現実的とは思いません。
 なお、④項の特定医師について、医師法の規定で定められているのは、要するに「医師であること」という内容です。首っ引きで調べた末にコレを知った私は、あまりのことにガックリと脱力してしまいました。
 何でこんなコトを、わざわざ断らなければならないのか、さっぱり分かりません。
 ちなみに、すぐのちに述べる『四訂 精神保健福祉法詳解』という謎の本では、④項における医師法に関する規定については完全にスルーして、何も書いていません。この点につきましてはマコトに賢明な判断と評価できます(笑)。
 現行の精神保健福祉法は、そんなよく分からないことも書いてある法律なのであります。
 法律は、すべからく尊重し守るべきものに違いありませんが、法律の条文だからリッパなコトが書いてあると思い込み、矢鱈(やたら)と崇(あが)め奉(たてまつ)る必要など、全然ないのです。

怪文書を作ったのは厚労省!


 私の手許に『四訂 精神保健福祉法詳解』(精神保健福祉研究会監修/中央法規、2016年2月20日発行)という本があります。
 これは驚くべき本です。私は本当に度肝を抜かれました。
 それが何故か、ということは後回しにして。
 この本の222ページには、次のようなものが掲載されています。

  これは、私がセンター病院で受け取った「お知らせ」と一字一句同一の文面です。六法全書では「第二〇条」となっているものを「第20条」と表記しているところまでそっくりです。 
 違いは平成の元号が令和になっているくらい。「お知らせ」では、〇 〇 〇 〇 殿 のところに私の名が、病院名、管理者の氏名、主治医の氏名の欄に各々の名が印字されていますが、それらは「違い」ではありません。
 これは「告知文書の様式例」として「精神科病院に入院する時の告知等に係る書面及び入退院の届出等について」(平成十二年三月三十日障精第二二号 厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課長通知)により示されたものです。 
 長ったらしくてご免なさい。
 それにしても、センター病院は「様式1」なんて但し書きまで、患者宛の文書にそっくりそのまんま転載しています。私はマヌケなことだと思います。 
 つまり、私が「任意入院患者を詐欺同然の手口で騙した」と、センター病院に対して憤った文書は、厚生労働省が作ったものだったわけです。 
 要するに厚生労働省が「精神障害者は、詐欺同然の手口で騙すべし」とし、センター病院のみならず、全国の精神科病院にそのように通知していた、ということですね。 
 この「様式1」は、その意味できわめて悪質であるのみならず、明らかに違法な内容を「様式例」とした文書です(精神保健福祉法第二一条①項違反)。
 え? お前何言ってるんだ、と私の正気を疑われる方は多いことでしょう(まあ、確かに私は「自分は間違いなく正気です」とは言いきれない人間ではありますが)。無理もありません。書いてる私だって頭がクラクラしてるんだから。  

謎の本『四訂 精神保健福祉法詳解』とは?


『四訂 精神保健福祉法詳解』は、奥付を見ても監修者名のみ記され、著者名がないという不思議な本です(でも「度肝を抜かれた」のはそんなコトではありませんよ)。 


 では監修者の「精神保健福祉研究会」とはいかなる団体なのか。 
 当然の疑問を抱いた私は、ネットで同研究会の名を検索してみました。しかし、そのホームページも存在しませんでしたし、所在地その他実態に関わることは何ひとつ分かりません。検索して分かるのは『四訂 精神保健福祉法詳解』の監修者である、ということだけです。そりゃ検索しなくとも分かってるって。 
 仕方がないので私は版元の中央法規に電話で問い合わせてみました。そのとき、担当の方は不在だったのですが、「後日担当者から折り返し連絡する」と言われ、お言葉どおりに翌日か翌々日に、私のスマホ宛に編集ご担当の方が連絡をくださいました。 
 とても親切に淀みなくこちらの疑問にお答えいただけたので、満足し、また感謝もいたしました。 
 で、分かったことは。
〇「精神保健福祉研究会」という任意団体は実体的に存在しない。
〇『四訂 精神保健福祉法詳解』は、中央法規の編集部が作成した内容を厚生労働省の担当課が校閲したもので、その内容は「ほゞほゞ厚生労働省の見解」 
 という二点でした。 
 このとき「担当課」の名称も教えていただいたのですが、私のメモにあるそれは、現在の厚生労働省の組織図には存在しないものでした。まあ、この類いの言い間違いや聞き違いは珍しいことではないので、以後「担当課」とします。
「ほゞほゞ」以外の部分が、校閲者の厚生労働省担当課とは異なる中央法規独自の見解、なんてことは金輪際ありっこありませんから、『四訂 精神保健福祉法詳解』の文責は100%厚生労働省にある、と言いきって何ら差しつかえありません。  

意味不明の迷文を分かりやすく直すと


「様式1」の決定的な問題が何であるかは、とりあえず後回しにして。
    どうして6項のような意味不明の迷文を平然と載せたしろものが、センター病院はじめ全国の精神科病院に通知されてしまったかと言えば、『四訂 精神保健福祉法詳解』の次のような記述(考え方)が論理的根拠(というにはあまりにもお粗末なのですが)となっているのでしょう。 
 なお、(ア)(イ)(ウ)は、原文には存在しない、私が挿入したものです。
 
〔7〕(ア)任意入院者につき退院制限を行った場合でさらに入院を継続する場合は、通常は、医療保護入院に切り替えて入院が行なわれることとなる。(イ)したがって、「医療及び保護のための入院の必要があると認めた場合」(第三十三条第一項)に相当するものとして取り扱われるべきであり、退院の申出があった場合、一律に退院制限を行うことは許されない。(ウ)退院制限を行うことができる状態について一例を示せば、病識がなく、幻覚、妄想等の精神症状があり、入院の必要性が認められるような状態が該当しよう。  

 冒頭の〔7〕が何を意味するかは、のちに述べます。 
 ここで言う「退院制限」とは、すでに述べた精神保健福祉法第二一条③④項の時限規定のことです。
 第三十三条は、医療保護入院についての条文です。
(イ)の「したがって」から先は、明らかに(ウ)も含めて退院制限全般の要件について述べている文です。ですから、(ア)の「退院制限を行った場合でさらに入院を継続する場合は」という文言は、部分的条件を全般的条件としてしまっているものです。よって論理的に意味を成さない、ということになります。
(ア)は(イ)の前提または理由として置かれている文ですが、前提にも理由にもなっていないのです。
 ハッキリ申し上げます。日本語として完全に破綻している迷文です。 
 迷文を、すっきりと分かりやすく直すとこうなります。 

(ア)任意入院者につき退院制限を行った場合は、制限時間を限ってという③④項の規定は存在しないも同然と見なし、期限後も退院をさせずに医療保護入院に切り替えることで、さらに入院を継続させるものと想定すべきである。  

法律を牽強付会(こじつけ)で「詳解」


 もっと分かりやすく解説すると「いったん退院制限をしたら、もう入院の任意性など無視してしまえ」ということですね。 
 まあ、この程度の日本語力しかない方々なのですよ。厚生労働省担当課の皆さんは(いちいち例示しませんが、この『四訂 精神保健福祉法詳解』は、ツッコミどころ満載の、おかしな日本語の宝庫です)。 
(イ)(ウ)では、退院制限を行なうことができるのは、すなわち第三十三条の規定による医療保護入院の判定基準に相当する診断がなされた場合である、と述べています。
(ア)(イ)(ウ)を続けて読めば、二一条③④項の規定は、任意入院患者を医療保護入院患者にしてしまうための経過措置(=家族のうちひとりの同意を得るまでの、時間稼ぎのためのツナギの決まりごと)に過ぎない、「退院制限」は手段で「医療保護入院」が目的だ、と言っていることは明らかです。 
 言う間でもなく、精神保健福祉法には、そんなこと書いてありません。(時間を限って)「退院させないことができる」(=その限りを超えれば退院させないことはできない)と書いてあるのです。 
 繰り返します。 
 それらは例外規定であり時限規定です。 
 経過措置についての規定では、ありません。

 (ア)(イ)(ウ)みたいなおバカな屁理窟(理窟になっていない理窟)を「牽強付会」というのです。小学生にも分かる言葉に置き換えれば「こじつけ」ですね。
 まったく精神保健福祉法をどう研究なさって、何を「詳解」しておられるのですか(笑)。

患者は蚊帳(かや)の外で、並べている御託

「一律に退院制限を行うことは許されない」なんて、こんな本(税別6,400円)で詳解されても意味がないのですよ、患者にとっては。
 そもそも自分に「退院制限がなされることがある」という規定をまったく知らないのですから。
 みなが、なされることがあるのは「退院申し出の却下」だと思い込んでいます。ミスリードを目的としていること、あからさまな(インチキな)文面で「お知らせ」されているからです。
 
ちなみにこの『四訂 精神保健福祉法詳解』、私が住む杉並区の区立図書館(13館)には、一冊の在庫もありませんでした。 

条文は「任意入院者の退院制限」なのです!

 第二一条③項には、確かに「医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたとき」という文言がありますが、そのことをもってイコール「医療保護入院させる必要があるとき」である、と言う理窟はまったく成り立たないのです(この点につきましては、厚労省担当課やセンター病院も先刻ご承知だと思います)。
 それは、この③項には、医療保護入院の核心的成立要件(キモ)として第三三条①項が規定している「当該精神障害のために第二十条の規定による入院(筆者註・本人の同意に基づく入院)が行なわれる状態にないと判定され」の記述が存在しないからです。
 ところが、この記述を③項に挿入すると、条文自体が、自動的に「任意入院者に対する」退院制限の規定ではなくなってしまいます。すなわち、決定的な論理矛盾をきたし、意味不明なものになってしまう、ということです。
  平成10年3月3日に旧厚生省大臣官房障害保健福祉部長ほか同省三局長名で都道府県知事などに通知され、直近では令和3年1月13日に改正された「精神科病院に対する指導監督等の徹底について」の「任意入院制度について」には、こう明記されています。

人権に配慮しつつ適正な医療及び保護を確保するため、本人の同意に基づいて入院が行なわれるよう努めることは極めて重要なこと

 「医療及び保護」と「医療保護入院」。
 たしかに紛らわしいですね。しかし「医療および保護」は、そもそもがすべての精神障害者を対象に行なわれる行為を指す、広範な概念なのです(精神保健福祉法(この法律の目的)第一条)
 先に述べたように、第一節 任意入院 に記されている二一条の七項目が、すべて任意入院についての規定であることは言を俟(ま)ちません。
 医療保護入院については、「第三節 医療保護入院等」に、節をあらためて規定されているのです。
 第一節の中に「医療保護入院」という言葉はありません。
 ここまで読まれて、しかし、医療制度をつかさどる中央官庁の官僚の解釈や解説なのだから、精神障害者のお前の言うことなんかより当然正しいはずだ、と思われる方は多いことでしょう。当然だと思います。
 私も一般健常者だったら、おそらくそのように考えて、ワタシに対して「オマエちょっと待てよ」と思ったはずです。
 しかし、ハッキリ申し上げます。
 厚生労働省担当課の皆さんは、信じ難いほどに、思考力も日本語力もお粗末な人たちです。
 私が「度肝を抜かれた」のは、まさにその点です。
 以降の記述をお読みになれば、必ずやそのことをご納得いただけるものと確信しています。

これが問題の二一条①項!


『四訂 精神保健福祉法詳解』217ページにこうあります。
 

 お分かりのとおり、これは、すでに引用した精神保健福祉法第二一条①項に傍注を加えたものです。
 先に私がその論理破綻を指摘した〔7〕は、この本が、第二一条③項に、このように加えた傍注のナンバリングだったわけです。
 細かいことを言うと、私のほうが六法全書から忠実に引用しています。
 六法全書では「第二十一条」ではなく「第二一条①」となっています。六法全書では①②③…と表記しているコトを、この本では単なる算用数字で表記しています。どちらも、まあどうでも良いことでしょう。
 さて、決定的大問題です。
 ご丁寧に(3)と傍注が示されている「厚生労働省令で定める事項」とは何か。
 221ページに記載されています。
 このとおりに。
 

 お分かりですね。
 第五条の四をお読みください。
 第二一条②項の「申し出たら退院させねばならない」という原則規定、③項および④項の、それについての例外規定(による措置に関する事項)。
 これらは、厚生労働省の施行規則第五条で告知事項(第二一条①項により「知らせなければならない」とされていること)と定められているのです。
 そりゃ知らせるのがあたり前ですよ。逆に、知らせない理由は、一体何ですか(見え見えなんだけど、「衣の下に鎧が見える」なんてことは、私は申しません。鎧、ムキダシになっていますよ)。
 もしも「お知らせ」6項後段(私が(B)とした箇所)の、本当のことを隠している文、

ただし、精神保健指定医又は特定医師があなたを診察し、必要があると認めたときには、入院を継続していただくことがあります。その際には、入院継続の措置をとることについて、あなたに説明いたします。
 
を、「『規定による措置に関する事項』を書いてはいるのだから、それで良い」などとおっしゃる方がいたら、それは「子どもの屁理窟」です。
 そんなタワゴトが通用するのなら、(B)の文を単に、
ただし、あなたに入院を継続していただくことがあり、その際にもあなたに食事は提供されます。
 に置き換えたって、たしかに「規定による措置に関する事項」を書いてあるのだからそれで良い、ということになってしまいます。「お知らせ」6項は、これと大差ないことを言っている、デタラメなしろものでしかありません。
 入退院の権利にかかわる国法の明文規定を患者にきちんと知らせる、なんてことはあたり前ではないですか。
 わざわざこんなことを書くのは面倒だし疲れるし、ほとほと嫌になってしまうのですが仕方がない。
 中央官庁にも権威ある国立病院にも、常識的判断力をおもちかどうか、疑わざるを得ない方々がいらっしゃいますので。
 

悪質・拙劣な違法行為をそそのかした厚労省


 繰り返しますが、国立精神・神経医療研究センター病院は、私の任意入院時に、③④項の規定をまったく知らせませんでした。
  つけ加えておきますが、「書面は別紙で見せたけど、お前が忘れただけだよ」という言い訳は、通用しません。
『四訂 精神保健福祉法詳解』の同じ221ページには、こうあります。
 
なお、告知制度が設けられた趣旨が、権利事項等を患者本人に知らせて入院患者の人権を確保することにあることから、『書面』を渡しただけで説明もしないという行為は、法の趣旨に反するものと解される。
(この文は、のちにもう一度示します)
 
 渡しただけではダメですよ、ということは、「見せるだけではなく渡すものだ」ということが、自明の前提とされているわけです。
 つけ加えますと、私は「お知らせ」について一切の説明を受けていません。

 国立精神・神経医療研究センター病院の管理者である院長(当時)中込和幸氏が、違法行為を行なっていたことは明らかです。
 精神保健福祉法二一条①項に「知らせなければならない」と明記されていることを、まったく知らせていなかったのですから、これは一切疑念の余地なく、不作為の(何かをしないことによる)違法行為です。
 それはすなわち、「入院患者の人権を確保する」精神が、欠落していた、ということに外なりません。
 では、中込院長(当時)は、なぜこのような悪質きわまりない、なおかつ拙劣な(阿保みたいな)ことを仕出かしたのか。
 厚生労働省が、知らせないようにしてね、と指示していたからです。
 私自身、キーボードを叩きながら頭がクラクラしてくるような奇々怪々な話なのですが、事実です。

衝撃のページ全文を転載


『四訂 精神保健福祉法詳解』221ページに、前掲二一条①項中の「書面で」という文言の註として、こう記してあります。
 
告知文書の様式例については、「精神科病院に入院する時の告知等に係る書面及び入退院の届出等について」(平成十二年三月三十日障精第二二号 厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課長通知)の様式1で、次のとおり示されている。
 
 この長ったらしいタイトルは先にもご覧いただきましたね。
 で、その「様式1」なるものですが、それはイコール、すでに全文をお示しした様式1なのです。
 あの、二一条③④項を知らせないことで任意入院患者たちを騙した詐欺的様式1のことなのですよ。
 では、この221ページの全文を転載してみると。

一体、何を言っておるのですか!?


 お分かりですね(何だか『本当にあった呪いのビデオ』のナレーションみたいですね。もっともあの番組より、担当課の皆さんのなさることのほうが、はるかにスゴイ「本当にあった」怪談なのですが)。
 精神保健福祉法第二一条③④項の時限規定について、同じ本の同じページの、同法第二一条①項の註として
 
〔3〕では「文書で知らせるべきことがら(=告知事項)」と
 
〔4〕では「全然知らせない(告知文書の)様式例を示すね(つまり文書で知らせないでね)」と
 
 記しているのです。
 法律が「書面で知らせなければならない」とし、厚生労働大臣が「知らせなければならないことですよ」と定めていることを、平成十二年=2000年当時(厚生労働省設置の前年)の厚生省精神保健福祉課長は、「知らせないでね」としていたわけです。
 それらを、厚生労働省の担当課は、ともにそのまま現行の精神保健福祉法の「詳解」として説明なさっておられるのです。
 一体何が言いたいのですか。
 私が「度肝を抜かれた」と書いたのは、まさにこの点です。
 本を読んでこんなに仰天したのは、九歳のときにモーリス・ルブランの『813』を読んで、フランスのルノルマン国家警察部長の正体が大怪盗ルパンだった、と知ったとき以来です。ああ、頭がクラクラする。
 これはもう、「愚昧」とか「悪辣」といった言葉で理解できる域を超えています。夢野久作『ドグラ・マグラ』の世界です。何が何だか訳が分かんない。
 再び明言いたします。
『四訂 精神保健福祉法詳解』を監修された担当課の皆さんは、日本語力も思考力もお粗末きわまりない人たちです。
 私は、医療(治療)を必要とする精神障害者のひとりとして、ハッキリ申し上げます。
 あなたたちなんかに、精神科医療に関わる行政を、担当してほしくありません。

知らされないから騙された


 ここで問題点を整理しておきます。
 七十二時間(または十二時間)の入院継続期間中に指定医(または特定医師)の医学的判断により、患者の任意入院を中断または終了し、医療保護入院させる、ということは。
 本稿は、「悪法も法なり」という大前提の下に、なおかつ指定医の専門的技量は常に信頼に足るという現実離れした仮定を前提として、書いております。
 したがってあって良い、当然あり得べきことと言わざるを得ません。
 即時退院を認めず任意入院を時限的に継続させるということは、申し出後の診察時に当該患者の病態に何らかの問題が疑われたということであり、医療保護入院への切り替えを要する蓋然性(必然性ではなく)があり得ることも、認めるほかありません。
 しかし。
 それがどうして、精神保健福祉法に明記された時限規定を、すべての任意入院患者に対して一切知らせなくて良いということになるのですか。
 私には理解できません。
 誰か分かる人、説明して頂戴。
 きちんと知らせたうえで、本人の同意を重んじてはいられないほどに疾患が悪化したとの医学的判断がなされたならば、法に則り、粛々と医療保護入院させれば良い。それだけのことではありませんか。
 繰り返し述べます。
 人は知らないことには考えが及びません。
 知らされぬことにより、事実の認識を阻まれた任意入院患者たちは、「要するに医師の退院許諾がなけりゃ出られないんだな(=退院日は医師の恣意が決めるものなんだな)」という〈認識の錯誤〉に陥ります。つまり、騙されるのです。
 法律の規定では、退院日を医師の恣意(=好き勝手)が決めて良いはずなど、ありません。
 それまで認められていた任意入院患者の任意性を否定してまで医療保護入院させるためには、医学的にきわめて重大な診断の変更が必要なはずです。その判断に厳格さと慎重さが求められることは、言う間でもないでしょう。(『四訂 精神保健福祉法詳解』300ページにも「医療保護入院は、本人の同意を得ることなく入院させる制度であることから、その運用には格別の慎重さが求められる。」とあります)
 条文の規定(ここでは精神科病院に対するシバリを意味します)は、そのためにあるのです。
 ところが「お知らせ」の文面は、そして実態は、その適正手続き(デュー・プロセス)を、まったく存在しないものとしています。
 すでに述べたとおり、私の知る限り、任意入院患者たちの中に、申し出により退院した人はひとりもいません。そもそも申し出をしなかったからです。すべての患者の退院日は、医師の恣意(=好き勝手)が決めていました。

法の規定を空文化した陰険姑息なやり口


 それが目的なんでしょ。
 患者たちが、自由意志による退院の申し出なんてメンド―なことを言い出さないよう、本当のことを知らせないで、あらかじめ口封じしておくことが。
 患者の人権確保のために法律に明記されている規定など、空文化してしまうことが。
 それ以外に何が考えられるというのですか。
 事実、姑息と拙劣、そして卑劣(弱い立場の人間の無知につけ込むのは卑劣そのものです)の標本みたいなやり口によって、それは達成されたわけです。
 それは、精神保健福祉法第二〇条の精神を、端(はな)から無視しているということに外なりません。
 そういう料簡違(りょうけんちがい)の連中だったのですよ。
 センター病院の中込院長(当時)や厚生労働省担当課の人たちは。
 この人たち、要するに精神障害者のことを舐めきって、医師の管理と支配に従っていればそれで良い、思っているのです。

刑事事件で明るみに出た精神科医療の闇

 今年(令和5年)2月24日、精神科病院の滝山病院(東京都八王子市)に、監督する東京都が二度目の立ち入り検査を行ないました。
 一度目は、警視庁が、入院患者への暴行容疑で同院の看護師の男を逮捕した翌日(2月15日)のことでした。
 被害者の代理人となった相原啓介弁護士は「虐待が病院全体に蔓延(まんえん)しているのでは」との疑念を語っています。
 滝山病院については、他にもいくつもの問題が取り沙汰されていますが(その中のひとつに「死亡退院」の顕著な多さがあります)、ここでは詳述しません。 
 この病院の実態が、警察の刑法犯罪に対する捜査によって、はじめて明るみに出、世に報道されたという事実に、この国の精神科医療が抱える闇の深さがあらわになっています。

厚労省は精神障害者を人間扱いしているのか?

 看護師の逮捕以前に、都は同院に対し四回にわたる聞き取り調査を行なっていたのですが(暴行場面の映像が流出していますので、まず内部からの情報提供があった、と見るべきでしょう)、状況は何ひとつ動かず、報道もされませんでした。
 それはそうですね。
「お宅の病院では患者を虐待していませんか」
 と聞かれて、
「ハイ、しています」
 なんて答える奴、いるわけがありません。
 精神保健福祉法の規定や都による監督は、何らチェック機能を果たしていなかったのです。
 
滝山病院の問題につきましては、noteに次のような見解を公開された、現役精神科医の先生がいらっしゃいます。
「家族も福祉も行政も厚労省も滝山病院のような不正が行われる病院を黙認するどころかむしろ積極的に利用していたと見られる点が多々あります。」
 これは、行政や厚労省が精神障害者に対する人権意識を喪失している(すなわち精神障害者を人間として見なくなっている)という現状を端的に表した言葉です。
 上記の言葉が私の捏造ではないことを証するために、その記事のリンクを貼っておきます。
 
 
https://note.com/higashi1979/n/n54e745dd8a44
 

悪法の下のとめどなき暴走


「指定医の患者に対する権限は絶大だ。」『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』風間直樹、井艸恵美、辻麻梨子 著/東洋経済新報社)
 私が精神保健福祉法を悪法である、と断ずる理由はこれに尽きます。
 現実的に考えれば、あらゆる職種における場合と同様に、指定医(というより精神科医)にも、当該の職にあってはいけない人間が、その任に就くリスクは、当然存在します。私が身を以て経験しました(既述のとおり、この点は私の歪んだ主観に過ぎないと思われても結構です)。
 指定医が行なう診断や治療や処方や、身体拘束と呼ばれている行為(私はこれは「身体強制固定」という呼称に改めるべきだと思っています)などには、一切のチェックがなされません。
 明らかな誤りを犯しても、その責任を問われることは、まず考えられないのです。
『なぜ、日本の精神医療は暴走するのか』(講談社)は、反骨のジャーナリスト佐藤光展さんによる告発の書です。
 このタイトルが投げかけた問いに、私は答えることができます。
 そりゃ暴走しますよ。
 外部や他者の視線もなく、チェックのシステムも一切存在しない病棟という閉鎖空間の中で、無制限の権限を与えられた人間は。
 すべての精神保健指定医が、人並みの欲動を超越した聖人君子、なんてことは、あるわけがないでしょう。

旧統一教会問題の比ではない!


 ここで、お断りしておくことが二つあります。
 ひとつは、センター病院は、わが国の精神科病院の中で、比較相対的にましな病院である、ということです。
 もうひとつは、精神科病棟の入院患者(とりわけ任意入院患者)の問題を考えるさいには、私をモデルケースとすべきではない、ということです。私はかなり例外的な患者だったのですから。
『ルポ・収容所列島』のプロローグは「日本の精神科医療が抱える深い闇」と題されています。どのような闇か。それは、この本のタイトルが何よりも雄弁に物語っています。
「医療ではなかったと思っています。収容所のような場所でした。」
 これは、同書中に引用された、精神科病院に入院した経験をもつ人の言葉。
 引用元は、日本弁護士連合会が、全国の入院経験者1040人を対象に行なった調査です。これによると、入院中に「悲しい」「つらい」「悔しい」などの体験をした人は、8割を超えています。
 声にならない怨嗟(えんさ)の声が満ちみちている所。それが日本の精神科病院です。
 それらは、日本国憲法による統治の及ばぬ闇黒の無法地帯と言っても過言ではありません。
 言語に絶する患者虐待や人権蹂躙が罷(まか)り通っています(例えば医師に性的関係を強要され、複数の患者が自殺に追い込まれる、など)。
 医療の名の下に、営利目的で独裁国家のような拉致監禁が白昼堂々と行なわれ、精神疾患のない人が、悪意にみちた家族と悪徳医師の謀議で監禁されてしまう事態も起きているーー私はそう思っています。医療保護入院の規定が、そのような犯罪的行為(というより実態は犯罪そのもの)を〈合法化〉している、と確信しています。
 その被害者数と被害(人権蹂躙)の深刻さ、確信犯的な悪逆非道ぶり、そのすべてにおいて旧統一教会問題の比ではありません。
 センター病院で私が経験し、見聞した人権侵害や患者虐待(具体的なことは本稿では割愛します)は、それらの事例と較べれば痴漢行為とレイプ以上の懸隔があります。
 本稿は、厚生労働省並びに私の入院当時センター病院々長だった中込和幸氏(現理事長)の責任を問うものです。
 しかし、中込氏も「医療を行なう」意識はおもちだったと思います。そのことは認めておく必要があるでしょう。

センター病院の官僚的・前例主義的体質


 本稿のはじめに述べた法律により設立されているセンター病院は、良くも悪くも官僚的であり、形式主義(より正確にいうなら前例主義)的な組織です。患者個々人の病態や病状よりも(つまり適切な治療よりも)、「この病院ではこうなっている」という決まりごと、すなわち慣例のほうが優先されていました。
 告白します。
 私はこの形式主義・前例主義のお陰で、結果的には大いに助かったのです。
 すでに述べたとおり、私は約3カ月の医療保護入院、約1カ月の任意入院ののちにセンター病院から退院しました。
 ハッキリ申し上げます。
 この2つの入院期間は、診察や医学的判断によるものではありません。
 少なくとも医療保護入院期間については、間違いなくそう断言できます(根拠すなわち物的証拠があります)。
 なぜか。
 病棟の主治医は、診察も何も、私とまったく会いもしないうちに、3カ月間の「入院診療計画書」なるものを作成してしまい、家族が同意のサインをしていたからです。
 任意入院に際しても、同じタイトルの文書が作成され、それには私がサインしました。このときの1カ月という期間も、おそらく同様の決まりごとだったのでしょう。
 要するに、私という患者の病状とは無関係に、センター病院の慣例を器械的に当てはめたものだったわけです。
 まあ、そのお陰で私は早く(もちろん本当はもっと早く退院したかったのですが、そのことは措きます)退院できたわけですが。
 ああ、良かった(本音です…)。

「ましな事例」だからと見逃してはならない


 国立研究開発法人であるセンター病院には、私立病院のような営利目的の長期収容は、皆無です。
 2020年9月、群馬県在住の伊藤時男さんは、福島県の精神科病院に約40年(!)にわたる長期入院を強いられたことについて、国の責任を問う損害賠償請求の訴訟を起こしました。
 精神分裂病(当時の呼称、現在の統合失調症)は早期に改善したのに、途方もない年月にわたり、入院生活を強いられていた伊藤さんが、社会に出られた転機は2011年の東日本大震災でした。被災した福島の病院から茨城の病院に転院すると、翌年には退院できたのです。震災がなければ伊藤さんは今でも精神科病院に閉じ込められていたかも知れません。
 私立病院では、奸計によって人権を奪い、患者を文字どおり死ぬまで収容しておくケースがざらに起きているのです。
 センター病院は、比較するならばずっと短期間の入院で、患者を早く退院させることを方針としています。
 この一点だけでも、センター病院は、数多(あまた)ある想像を絶する悪質な精神科病院より、はるかにましな病院です。
 そのことは認めておきましょう。
 しかし、「はるかにましな病院」だからといって、明白な違法行為や詐欺的行為を等閑視して良い、看過して良いという理由にはなり得ません。
 最悪の集団レイプを筆頭とする、あらゆる性暴力を根絶するためには、身近でしばしば起こり得る痴漢行為からして、断じて黙視すべきでないことは言うまでもないでしょう。

なぜ、法改正が必要なのか


 先述のとおり、この国では多くの精神科病院が、医療施設ならぬ収容所と化しています。
 しかしながら。
 私には、個別具体的に、どのケースが医療ではなく強制収容(監禁つまり犯罪)なのか、立証することはできません。まことに慚愧(ざんき)の念に堪えぬことなのですが。
 それは、必ずしも私が、前掲書の単なる一読者、無力かつ無知な一個人だからではありません。
 私が仮に強制捜査権限をもつ捜査機関の有能な人間だったとしても、長年にわたり事実上の治外法権状態が牢固として保たれている、病棟という閉鎖空間内で行なわれた行為が、医療ではなく犯罪であると立証することは、非常に困難と言わざるを得ません。。
 私が精神保健福祉法の改正を訴える理由は、まさにここにあります。
 闇黒の無法地帯と化しているわが国の精神科病棟の正常化を、〈現行法の正しい運用〉によって達成することは、できません。不可能です。
 法改正による抜本的改革こそが、必要とされているのです。

変えねばならない日本の精神科医療


 この国では、最も権威あるとされている(そう言って差しつかえないでしょう)精神科病院が、違法な詐欺的文書を手交して、入院患者を騙していたのです。
 厚生労働省が、その行為を働くように指示していたのです。

 それは、この国の精神科医療を覆う深い闇と次元を異にする世界のできごとではありません。
 行政が、権威ある国立病院が、立法の精神を蔑(ないがし)ろにし、入院患者・精神障害者のみならず全国民をも舐めきった行為を働いて恥ともしない料簡違だから、この国の精神科医療には、人権侵害、人権蹂躙、脱法行為、そして乱暴無法が横行、常態化しているのです。
 本稿をお読みの皆さん。
 この国の精神科医療の実情に目を向けてください。
 この国の精神科医療は、変えなければなりません。
 私は本稿を、ささやかではあっても、その端緒のひとつとなりますことを願いつつ綴っています。

重要なのは、一般的な任意入院患者のこと


「入院(任意入院)に際してのお知らせ」の違法性、詐欺的文面の悪質さを問うさいには、私のケースをモデルにすべきではありません。決して。
 なぜならば、私が自殺企図を理由とした医療保護入院から任意入院に移行した患者だからです(自殺未遂者が、再度同じことを試みたり、ときに既遂となったりする確率が統計的に有意であることを、私は認めます)。
 多くの任意入院者たちは、まったくそうではありません。
 たとえば私が病棟で知り合った人たちの多くは、近くの精神科クリニックで不調を訴え、紹介状を書いてもらってセンター病院に入院していました。
 モデル(典型例)とすべきは、ずっと一般的なそうした患者の事例です。
 精神面の不調を感じる。あるいはそれをこじらせてしまう。
 それらは、一般の健康な人にとっても、いつ起きてもおかしくないことです。
 そのように感じた人たちは、不調(疾患)の改善を望んで自ら入院すると同時に、ひとりの例外もなく全員が「精神障害者」になります。精神保健福祉法がそう規定しているのです。
 その人たちすべてに法が認めている自由意志で退院する権利を、詐欺的手口で奪い、騙し、退院を言い出させないようにしてしまう。
 そんなふざけた料簡違の人間たちが、厚生労働省担当課の官僚であり、この国で最も権威ある精神科病院のトップなのです。

中込和幸氏に、勧告します


 平成十二年当時、厚生省の精神保健福祉課長が通知したのは、『四訂 精神保健福祉法詳解』の記述を信ずるならば、「様式例」でした。ということは、当然ながら「指定様式」ではないわけです。
 ところが、その通知文書『精神科病院に入院する時の告知等に係る書面及び入退院の届出等について』(障精第22号、平成12年3月30日)を読んでみると、下記のとおりに「『入院(任意入院)に際してのお知らせ』は原則指定様式であり、例外として準じた内容の異なる書面も可」としていることは明らかです。

法第二十一条一項に規定する精神科病院の管理者が任意入院者に対して退院等の請求に関すること等を知らせる書面については、別添様式1(任意入院に際してのお知らせ)によるものとすること。ただし、個別の精神科病院において、別添様式1に準ずる書面により適正に患者に知らせることとしている場合においては、当該様式によらないことができるものであること。

 言ってることが違うでしょ、ちゃんと詳解してね。
 そもそも様式1が、「適正に患者に知らせ」てはいないのですから、お話になりません。
 いずれにせよ、精神科病院には、「だって厚生労働省がこう言ってたんだもん」などと言う言い訳は、まったく成り立ちません。
 私が受け取った、インチキで違法な「入院(任意入院)に際してのお知らせ」の文責は、そこに管理者として記名されている中込和幸氏にあります。
 あたり前です。
 中込氏が、私を、そしておそらくほぼすべての任意入院患者を騙したのです。悪質きわまりない詐欺的手口(詐欺そのものではありません)で。
 医師法第七条【免許取消し等、再交付】①項に、こう記されています。
 
医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあったときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の医業の停止
三 免許の取消し
 
 これが全文です。
 中込氏は現在、センター病院理事長で、現役の精神科外来医師です。
 私は厚生労働大臣が中込氏の医師免許を取り消すべきだとは思いません。
 中込氏は、一日も早く、自ら医業から退かれるべきです。
 

(本名・池田直也〈東京都杉並区〉/無職・元文筆業、六十三歳)

【附記】本文中に記したとおり、私は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の通称が「精神保健福祉法」とされていることは、はなはだしく不適切だと思っています。
「精神障害者法」、これで良い。
 国民全般のメンタル・ヘルスについての法律じゃないんだから。
「(この法律の目的)第一条」と「(国民の義務)第三条」には「国民の精神的健康の保持および増進に努める」といった文言があるのですが、以降の全文を読み通してもこれに対応する具体的規定は皆無なので、お飾りのようなコトバです。そう言いきって差しつかえありません。
『四訂 精神保健福祉法詳解』401ページでも、この法律の目的は「精神障害者等の医療及び保護」にある旨が明記されています。

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