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清水真砂子さんオススメの『秘密の花園』を読んで

『小公子』『小公女』の作者、フランシス・ホジソン・バーネットによって書かれた童話です。
子どもの頃、この本を読んだときには、百ぐらい部屋のある古いお屋敷や、そこで隠されて暮らしている癇癪もちの少年、誰も知らない秘密の花園、小鳥や動物と話をする天使のような男の子等の謎めいた魅力に引き込まれ、時を忘れて読みふけったことを覚えています。
成長するにつれ、話の内容はおぼろげになってしまいましたが、とにかく面白いお話として、頭の中にずっとインプットされていたのです。

ですから、久方ぶりに清水真砂子さんの本でこの題名を見つけたときには、ワクワクしてもうどうにも読まずにはいられなくなってしまいました。

数十年ぶりに出会ったストーリーの中には、謎めいた魅力も勿論健在でしたが、それだけでなく新しい出会いもありました。

それは、作者のバーネットがこのお話に託した、自然こそが人に素晴らしい未来を提供してくれるという、人生観を感じられたことです。

10年以上も閉鎖され、日の目を浴びるのことなかった秘密の庭が、やせっぽちでおこりんぼうの主人公メアリと、病気ですぐにも死んでしまうと思われていた癇癪持ちのいとこコリンと、天使の心を持ったディコンの手によって、だんだんと息を吹き返していきます。
そしてまた、わがままで自己中心的だったメアリとコリンは、庭を作り植物を育てることによって癒され、人間として大きく成長していくのです。
心も肉体もどんどん健康になった二人は、これまでの諦めと失望の気持ちから解放され、明るい希望と未来を見つめられるようになっていくのです。

バーネットが辛苦を乗り越えて、61歳の時に出版されたこの本には、彼女の人生観が最も色濃く投影されていて、特別な作品と考えられているようです。

子どもは子どもなりに楽しめる児童文学ではありますが、人生の失望や喪失を経験した大人にしか触れられない琴線が、このストーリーには秘められていると言えるでしょう。

成熟した大人の貴方にも、是非読んで頂きたい一冊です。


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