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ガスストーブ

春分の日を過ぎて、早咲きの桜はすでに葉桜になっているけれど、
今年は三寒四温ならぬ、五寒二温くらいのペースで変化しているような気がしている。

去年の11月にバス通を挟んで反対側というこれまでで最も近距離な引越しを終えた我が家は、実は1階の暖房器具は小さな電気ヒーターのみでこれまで過ごしていた。

12月と1月は寒がりな主人は温暖な地域に出張し、寒いと元気になる私と老犬が家にいたので、青森秋田仕様の1人とドイツDNAの1匹は、朝晩の冷え込みは旧居から2階に移設したエアコンで凌いできた。犬が冬山で人を温める話はよく聞くが、我が家は人が犬を布団ごと抱きしめて温めていた。我が家の老犬に、人を温めてあげようなんて気概は微塵もない。むしろ寒いからなんとかしてくれと、服の中にまで入り込もうとする始末であった。

さて2月。流石に毎年最も冷えるという2月は私も寒いと思っていたし、夫なんて寒い寒いの連呼でどうにもならなそうな様子だった。しかも今年は湘南には珍しく雪までしっかり降り積もった。その頃、もう観念して暖房器具を買おうという話になり、あれこれ検索したり中古ショップを巡ってみたりしたのだが、いざ買おうと決心するとちょうど良いものが見つからないもので、買えず仕舞いになってしまった。

3月。あれやこれや片付けて、でももう春になるんだよな、場所を塞ぐ暖房器具は来年買えばいいんじゃないだろうか、なんて悠長なことを思っていたのだが、どうにも寒い。
我が家の一階は構造上あまり日が入らないので、余計寒く感じるのかもしれない。
寒い日は2階に上がって太陽の恩恵を受けていたのだが、1階もやっぱり温めたい。
そうこうしている間に、友人のインスタグラムに欲しいと狙っていた暖房器具に似たようなものが写っているのを発見した。
とりあえず、買う前に性能や使い勝手の率直なレビューをもらおうと連絡すると、大層使いやすくておすすめだという話。我が家の事情を話すと、なんと彼女の実家で同じタイプのものが1台余っているというではないか。
神降臨。

我が家と友人宅はかつて徒歩数分の距離に住んでいた時期があり、老犬ともどもたくさん助けてもらっているお宅なのだが、今はお互い江ノ島を挟んでちょっとずつ左右に離れ、車で1時間半くらいの距離に暮らしている。

週間天気予報を確認した友人が週明けからまた寒くなると気がつき、忙しい中慌てて実家から都市ガス用ヒーターをもらってきてくれ、我が家は先日それを彼女の家まで受け取りに行ってきた、というわけで、今は1階が温かくなった。

雪国育ちの私は、暖房といえば石油ストーブと炬燵という概念なので、都市ガスのヒーターは初めての試みだ。友人のおすすめの通り、匂いもほとんどないし、エアコンほど空気も乾燥せず、本体は薄型だし、背面を壁からかなり離さなければならないなんてこともない。もっと早く導入すればよかったと思うものの、このタイミングじゃないと友人から新品同様のこのヒーターが巡ってくることもなかったはずなので、やはり物事上手いこと順番に発生しているものだなと頷く。そんなわけでこの1週間はガス代の請求に慄きながらも、温かくて便利な都市ガスストーブが、連日大活躍している。

お犬様は早速このストーブを使いこなし、ヘルニア爆弾を抱えた自らの腰をヒーターに当て、顔面には熱風がかからないような体制を獲得。ヒーターの前から一歩も動かない猫のような暮らしを満喫されている。

暑い時期を毎年疎ましく思い、冬が終わるのを心底残念に感じるのだが、この春を待つ優しい日差しと、まだ固まっている底冷えの寒さの、絶妙なバランスがある3月の終わり頃というのは、意外と好きだったりする。

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