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心を沈めてくれるもの。

最近の私の心は、いつも忙しない。あれもしなきゃ、これもしなきゃ。明日は息子とどこへ行こう、晩ごはんは何作ろう…やることや考えることは山ほどある。だから時間ができても、頭がフル回転して、心は全然落ち着かない。

でも最近、心を落ち着かせてくれる本と出会った。午後さんの『眠れぬ夜はケーキを焼いて』。

たまたま夜に読んだのだけれど、まさに夜がぴったりのような、優しいエッセイだった。

この本を読むと、すん、心が落ち着いていく。まるで、深い深い海の底に心が沈んでいくような。水の表面でいつもバタ足をして溺れそうだった私の心を、大丈夫だよ、と救ってくれるような、そんな優しい午後さんの言葉とイラストたち。

エッセイの中の世界へ入り込むと、いつの間にか私も午後さんの猫みたいに隣に座っている。真夜中の、明け方の、雨の日の、午後さんが感じること、考えること。それは、私もたまにふと思ったり、考えたりするそれと似ている。

真夜中だけの特別な雰囲気、明け方の静かな街を歩いて思うこと、雨の日に味わう不思議な感覚。私は夜眠れなくなったり、その時間に外に出ることはあまりないけれど、なんとなくそれらの感覚はわかる気がする。

そしてそんな日に、午後さんが作るお菓子がどれもおいしそうで。夜なのに、お腹がぐぅと鳴りそうになる。私もいつか作ってみたいな、と思う。

甘くておいしいお菓子は、私たちの不安や悩みを忘れさせてくれる。ホッとして幸せな気持ちをくれる。それを自分の手で作れたら、どんなに楽しいだろう。

また心が忙しなくなったら、この本を開いてみよう。きっと私の心に優しく寄り添って、そっと深い、青い海の中へ溶かしてくれるから。


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