見出し画像

休日。ある男の場合

朝、携帯の着信音で目が覚めた。
メール5件、着信2件

やばいやばい、

「はい…」
「ちょっとまだねてるの?今日15:00でしょ!
全然迎えに来ないから、もう向かってるんだからね!」
「あーごめん…!」
「とりあえずあと30分で着くから出かける準備しておいてよ!後タバコ吸わないで!」
「ごめん、本当ごめん」

携帯には15:20
彼女は電車乗り継いでこっち向かってるのか、悪いことしたな。

今俺はソファの上で、
首を横に振ると、テーブルにはタバコと灰皿。
蓋が空いたウイスキーのボトル。

そうか、昨日は仕事の連中と3時くらいまで飲んでいて、家帰って、テレビつけながらちょっとたしなんで、そのまま寝てたのか。

のどがカラカラだ。

すぐにでも喉を潤したいがソファに寝てたから腰が痛くて動けない。
手が届くところにあるのはタバコとウイスキーか。今タバコなんて吸ったら余計に喉が乾くだろうな。

そう思いながらも俺はタバコをひっぱり寄せていた。火をつけて一本吸った。
そういや昨日も夜寝る直前まで吸ってたっけ。

吸い終わると、不思議と喉の渇きが和らいだ。腰の痛みもなくなった気がして俺はソファから起き上がった。
クローゼットから適当に黒いタートルネックとジーパンをだし、一応タバコの臭いがついてないかだけ確認した。

彼女が来るまであと15分か。
こうして休日の朝、俺の時間は起きてから30分で終わるのか。
もちろん休日ずっと1人でいるより彼女と過ごす方がメリハリがついていいとは思う。
でもなんかもっとこう充実した休日みたいのってないのかな。
そもそも充実した休日ってなんなんだ。

また彼女から電話がきた。
「コーヒー買ってく?」
「あぁ頼む」
「わかった。ブラックでいいでしょ?あと朝起きてすぐタバコとか吸ってないわよね?」
「さすがに朝からは吸ってないよ。」
「えらい、えらい。じゃあコーヒー買うからもう少し時間かかるかな。10分くらい」
「わかった。
コーヒーありがとうな。」
「はーい。じゃああとでね。」

彼女は俺の一個上で、俺とは違ってしっかりしてて、面倒見がいい。
彼女はタバコが嫌いでよく俺に叱ってくるが、俺はこうしていうことを聞いてないし、彼女もそれ以上は言ってこない。
少なくとも俺は仕事では結構実力ある方だから、彼女は私生活を大目に見てくれているらしい。ありがたいことだな。

俺はたぶん彼女といる限り、良くも悪くも色々と変わらないんだろうな。

まぁとにかくコーヒーのおかげで俺の朝が10分増えた。10分で出来ることってなんだ。
目の前にはどっかの画廊で衝動買いしたイタリアかフランスかの映画のポスターが貼ってある。海辺のリゾート地があって、
その横の石の瓦礫にコートを着た男が1人でタバコ吸いながら遠くを見てるっていうポスター

こういう休日を過ごしたいよな。
自分でも何言ってるかわからないけど。

とりあえずタバコでも吸うか。
窓の向こうに、彼女が橋を渡っているのが見えた。

この記事が参加している募集

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?