見出し画像

結婚して改めて感じる家族とは

 お久しぶりです。
 先日結婚しました。相方とは12年目の付き合いの末、ついに法律上の家族になる必要性を感じてのことです。実際私は2度目の結婚なので、結婚式やら披露宴やら考えることすらストレスで、コロナという言い訳のもと誰も呼ばずにあちらの両親に婚姻するのに必要最低限必要な証人二人になってもらい、なんとか乗り切りました。相方は結婚に対して熱く反対しており、法律というシステム自体を疑う未来人的思考を持った人なので、今この現在地球に生きている事が難儀で、よく「生まれてくる時代を間違った」と言っている。
 生まれてくる家にも恵まれなかったようで、今回コロナの自粛の末、やっと親族が久しぶりに集まったのにも関わらず、家族との溝がより深くなってしまった。
「We are very different people」(全く性質が違う人間なんだよ)
というのがここ数年の彼の口癖だ。父親はEU離脱押しの超保守ミソジニストで、成金の物質主義者とゴルフクラブでハングアウトし、高級車やクルーズボート、豪邸のために子供や妻をよそにストレス過度に働き倒した。ヴィーガン(菜食)の息子の前でどうゆう訳かソーセージやステーキなど肉の話をする。高血圧の薬を飲みながらビールは止まらないし、最近やっとヘビースモーカーを卒業したが、ヴェイパーはひっきりなしに吸っている。食事は肉(だけ)を食らうか、食事の代わりにビスケットやポテチで済ませる。緑も赤もなんの色もない茶色い食事。生涯主婦の母親は、そんな旦那の食事を見てもバランス良い食事を作るわけでもなく、クリスマスに皆が「料理好き」だと勘違いして贈られた何十冊ものレシピブックは彼女の食に対する「熱」と全く釣り合わない。
「料理好きじゃないのよ」
 ある日彼女はそう言い、私はすっかり驚愕してしまった。勝手に料理好きだと思っていたのだ!!なるほど、カップボードの中のたくさんのレトルトソースや冷凍食品の数に納得がいった。
 すぐ下の弟もこの度ベルリンから帰ってきた。コロナの為に1年半ほどあっておらず、音楽という共通の夢があったこの兄弟は近い存在だった。子供の頃は一緒にバンドもやったし、音楽や本など文化的な話ができる家族で唯一の存在だった。
 二人は似ているようで真反対の性格だ。弟は昔から親に迷惑をかけてばかりでその度に親が尻拭いをしてきた。酔っ払ってバス停に車で突っ込んだ時も、衝動的に家を飛び出して夜行バスで無銭でベルリンまで行った時も、数年間引きこもった時も、相方はもし自分がおんなじ事をしたらタダじゃ済まないと口癖のように言う。
「しかもいつも笑い話で終わるんだ…あいつは何をやったって皆んなに好かれるみたいだね」
 相方は真反対に金銭的にも感情的にも親に頼らない。頑なさに少し違和感を感じるほどだ。彼は自己の煩悩をコントロールする事に大きな喜びを見出している。ヴィーガンである事も楽しんでいるし、無駄使いもしない。それを人に押し付けることもしていない。アルコールも無駄だと判断してやめたし、もちろんタバコは吸わない。(アル中でヘビースモーカーの祖母を軽蔑していたこともある)環境や地球や動物とバランスよく共存したいと思っている。彼は自分がどう生きて行きたいかがはっきりとしている。
 イギリスでは毎年クリスマスに家族が集まる風習があるが、覚えている限り毎年何かが起こり喧嘩となる。そのほとんどがこの弟のわがままとそれに甘んじる家族と父親の不安定さに関係している。
 
 相方は自分の生き方にハッピーだけれども、ただ彼の家族がそれを許さない。結婚式用に好きなネクタイが見つからなければTK Maxで買えばいいだの、硬くなったからと無造作に捨てられたパンとか(実際は耳だから)あの家で目の前で無造作に捨てられる食料品の数といったら…。もったいないお化けが出るぞと育った日本人には理解不能領域。家の内装も数年ごとに変わるし…。内装って壊れたから変えるものだと思っていたけど、新しい壁紙だのリモコン付きのブラインドだの、ランプだのカーテンだの置物だの食器だの、きりがない。10年選手の持ち物って私たちけっこう持っているんですけど、そんな事を言おうものなら白い目で見られる。そんなマテリアリスティックな毒が充満した家で彼はいつもイライラ、そわそわしている。そんな姿を辛そうに見る母親。彼をわかってあげる事が一番の解決策なのにそれができないのか、しないのか、結局私も匙を投げた。「あの子はいつも難しいのよ」帰り際にこそっと私に言った母親の言葉が頭の中を回ってムカついた。こいつらもうムリ。何も通じない。この状況を作ったのは自分たちじゃなく、相方のせいだと思ってる。
 ストレスや確執だらけのウェディングウィークが終わり、ロンドンへ向かう車中で彼はどんどん機嫌が良くなって行った。軽やかに、前を向いて。彼は私と色んな会話を楽しんでいた。彼の家族とは彼がどんな話をしてもあまり反応がないのだ、フットボールかゴルフの話以外は。家族って何?ほんまマジでクソめんどくさいわぁ。もう2度とああ言うシチュエーションになることは避けてちょうだいね。でもこれからは私があんたの正式な新しい家族、ワイフやよ。
「んーマイワイフッ」と彼はイギリスのあるコメディアンの口癖を真似て笑った。

末永くお幸せにさせていただきます。

よろしければサポートお願いします。皆様のご好意が新しい記事を書ける糧となります。どうぞよろしくお願いします。