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Hyvä Joulumieli Keräys:世界一幸福な国の幸福でない事情

Hyvä Joulumieli とは

Hyvä Joulumieliという募金活動に参加してきた。フィンランド赤十字社とMLL(Mannerheim League)という、子どもや子連れ家族がよりよく生きるために活動するNGOとで毎年共同開催している募金活動だ。

MLL(Mannerheim League) についてはこちら

私は赤十字社のベストを着てみたいがためにこの募金活動に参加することにしたのだった。私は赤十字社のベストを着て、お金を集めるための箱を持ちユバスキュラ市内中心部を回って募金を募ったのだ。

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いっぱい写真を撮った気がしてたけど、あとでフォルダを見返したらこれと、Vastaanottokeskusで一緒にボランティアをしている人とのツーショット写真しかなかった。この日はVastaanottokeskusで一緒にボランティアしている人と一緒に市街地を回った。

初めての募金活動はなかなか難しかった。自分から声をかけていくというのがほとんどできなかった。自身の意外と内向的な性格・フィンランド語で話さざるを得ないこと・初めての募金活動という三重苦が災いしたか。

一方で、vastaanottokeskusで一緒にボランティアしている人は「この人イケそう」と思った人にはガンガン声をかけていた。声をかけられた人たちは、見るからに外国人な私に対して「どこから来たの?」と話しかけてくれた。

Hyvä Joulumieli で集められたお金はどこへ

積極的に募金活動を行うのは難しかったが、それでも収穫はあった。Vastaanottokeskusで一緒にボランティアをしている人が、Hyvä Joulumieli についていろいろと説明をしてくれたのだ。

Hyvä Joulumieliで集められたお金は、フィンランド国内の貧しい子どもたち(のいる家庭)に、70ユーロ相当のギフトカードをプレゼントするために使われる。なお、このギフトカードは、貧しい子連れ家庭がクリスマス用の食事を十分に準備できるように使われるという。

ここでいう「貧しい子連れ家庭」は主にひとり親(yksinhuoltaja) 世帯のことを指す。(移民出身かどうかは問わない)今年のHyvä Joulumieliは28000枚のギフトカード贈呈を目指している。

Vastaanottokeskus一緒にボランティアをしている人が、ユバスキュラ市内では昨年、およそ70世帯ほどがギフトカード贈与対象となったようだと教えてくれた(ここら辺の数字はちょっとうろ覚え)。このカードは自治体の社会福祉課・事務局を通して、本当に経済的に厳しい子連れ家庭に対して贈られるということだ。

私は正直少し驚いてしまった。子育て家庭に優しいといわれているフィンランドも、ひとり親世帯の貧困が問題になっているだなんて。私は率直にvastaanottokeskusで一緒にボランティアをしている人に伝えた。「Kelaのサポート(公的な経済的社会保障)があるにも関わらず、ひとり親世帯の貧困は問題になっているのですか?」

https://www.kela.fi/web/en/child-benefit-amount-and-payment

(Single-parent supplement to the child benefitを調べてみた。)

Vastaanottokeskusで一緒にボランティアをしている人によれば、「Kelaのサポートは、例えば歯医者に行ったらその治療費ぶん、といったように目的によって支給される。だからクリスマス用の食事というようなぜいたく品にかけるお金は基本的にはない。そのような状況下にいる子どもたちは、(みんなは楽しいクリスマスを送っている傍ら、)クリスマスにプレゼントもおいしい食事にもありつけない。」だからHyvä Joulumieliのサポートが必要なんだ、というような主旨のことを語ってくださった。

https://www.kela.fi/web/en/social-assistance

(Vastaanottokeskusの方はおそらくこのsocial assistanceについておっしゃっていたのではないか)

自分でフィンランドのひとり親世帯に対する社会保障についてざっくりざっくり調べてみた結果、なるほど確かに、社会保障があれば生活はできるけれどもぜいたくはできないだろう。(親が無収入・低収入だった場合)

https://www.youtube.com/watch?v=2RGKR1FJz-4&feature=youtu.be

(このビデオはフィンランド国内の移民ひとり親世帯の母親の話)

目指すべきは、「最低限の生活」から「健康的・文化的に豊かな生活」へ

私はここで初めて、「最低限の生活ができる社会保障が提供されるというだけが、貧困世帯の子どもたちへの支援のゴールではないんだな」と実感させられた。かつて私は貧困世帯の子どもたちの支援にほんの少しだけ関わっていた。私が携わっていた支援施設では季節行事が盛大に行われていたのだけど、正直当時の私は「それをやったら子どもたちが喜ぶ」以外の利点を見いだせないでいた。

クリスマスというイベントが年中行事の中で最も重要なポジションにあるフィンランドにおいて、クリスマスハムもチョコレートもプレゼントも何にもないクリスマスは、子どもたちにとって苦行でしかないだろう。まして、クリスマス休み明けの学校で他の子どもたちがクリスマスの話題をする傍ら、自分は何も話せることがないなんて。はたまた、作り笑いや作り話でごまかさなきゃいけなくなるかもしれないだなんて。

「最低限の生活が営めるんだから」と突き放すのではなく、家庭の経済事情に関係なく文化的・健康的に豊かな生活を営めるような支援も、貧困世帯の子どもたちには必要なのだなと感じた。

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ところで、vastaanottokeskusで一緒にボランティアしている人が、「そういえばこないだ、ユバスキュラ郊外で日本人学生を見たよ」と話してくれた。「なんでフィンランドに来たの、って日本人学生たちに聞いたら、『フィンランドは幸福度ナンバーワンの国だからです』って言われたよ」とのこと。

そんな『幸福度ナンバーワン』の国の幸福でない事情、あるいはその幸福度を裏で支える仕組みについて知ることのできる、いい機会であった。

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ヘッダーの写真は本題とあまり関係のない、フィンランド赤十字社のポスター。

そんな、皆様からサポートをいただけるような文章は一つも書いておりませんでして…