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【鑑賞ログ数珠つなぎ】東京ゴッドファーザーズ

ある作品を観たら、次はその脚本家や監督、役者の関わった別の作品を観たみたくなるものである。まるで数珠つなぎのように。
前回:https://note.com/marioshoten/n/n47d9b625e04c

【数珠つなぎ経緯】

前回の『浅草キッド』と『東京ゴッドファーザーズ』。繋がりと言ったら、日本の作品ってことくらい?と思っていた。しかし、繋がりを改めて考えてみたときに、「血のつながり以外で生まれる絆の話」だなってふと浮かんだ。師匠と弟子も血のつながりがない場合が多いし、東京ゴッドファーザーズの主人公であるホームレスの3人も赤の他人だが一緒に生きている。そういう恋愛以外の、「血」を越えた愛の物語っていうのはわたしはとても好きだし、その繋がりがあるからこそ、生きてるんじゃないかとさえ思うのである。

【あらすじ(ネタバレなし)】

ホームレスのギンちゃん、ハナちゃん、ミユキは、クリスマスの夜にゴミの山の中で生まれたばかりの赤ちゃんを発見する。子どもを持つのが夢だったオカマのハナは喜び、勝手に“清子”と命名し育てようとする。ギンとミユキは警察に届けるよう説得するが、ハナは「親を探して捨てた理由を聞きたい」と懇願し、3人の親探しの旅が始まる。
3人と清子が行く先々で事件に巻き込まれたり、不思議な出会いや再会があったり…その中で3人の過去が次第に明らかになり、それぞれが抱える罪や後悔と向き合わざるを得なくなる、というお話。
ゴッドファーザーの意味は「名づけ親」。他にもマフィアのボスの意味もあるそうだが、ダブルミーニングではなさそう(途中やくざのボスは出てくるけど)。

【感想(ネタバレあり)】

何の前情報もなくて見たから驚いたのだが、偶然にもクリスマスの話だったということ。クリスマスの夜、キリスト教の講和を聞き、炊き出しをもらうシーンから始まる。わたしは以前ニュースで見た、公園で行われている弁当の配給を思い出した。取材を受けていた中には若い人もたくさんいて、どうしてだろうと不思議でならなかった。そうならざるを得ない事情はきっとあるだろうが、頼る家族や友人、働く場所は本当になかったのか、と思ってしまったのである。(否定しているわけではなく、想像できなかった。それはわたしが恵まれているということになるのだろうが)
この作品は2003年に公開されているが、それから20年近く経って、変わらない状況があり、ましてや現在の方がもしかすると酷くなっているかもしれないと初っ端から考えていた。

このログを書くにあたって、監督/原作/脚本の今敏さんを調べた。2010年に46歳という若さで亡くなっており、それにも衝撃を受けた。ご本人のブログを読むと涙があふれてきた。死の受け入れと後悔と感謝と、でもやはり未練も感じられて…死は誰にでもやってくる。人間の致死率は100%なんだと、頭では分かっていても、やるせないな、と。

さらに今さんのブログには東京ゴッドファーザーズ制作についての、詳しい説明もあって、アニメーション業界の方は目を皿にして読んでいるだろうし、作品づくりの流れ(企画、プロット、脚本、芝居について)や自身の考えも細かく記されており、わたしも同様に目を皿にして読んだ。読みやすくて、愛のある文章。経験や知識を余すところなく伝えようとしている心の広さ。今さんが大好きになった。(作品を観てから読むことをオススメします)

作品の話に戻ろう。
今さん自身も書いていたが「御都合主義の出来すぎた話」をコンセプトにした話である。偶然に偶然が重なり、最終的には人やモノがあるべき場所に収まり、大円団で終わる話である。大きく括るとハッピーエンドで、良かったぁ~楽しかったぁ~という感想が大多数になるだろう。
しかし作品をつくるにおいて、ご都合主義というのは本来避けて通るべきである。もしくは、そう考えられている。
今思い浮かべている相手からちょうどよくLINEが来たり、営業先に昨日合コンで会った男がいたり、生き別れた母がバイト先のカフェに現れたり…こういう「いやいやないでしょ」と突っ込みたくなるような偶然やナイスタイミングな出来事は、相当計算された上で「あり得るかも」と思わせる演出が施される必要がある。
でも意外と、この奇跡と思えるような偶然は日常に溢れている。「なんでこんなとこで会うのよ!?」みたいな経験って人生で何度もあるし、実際わたしも先日本当に奇跡と思えるような再会があった。

東京ゴッドファーザーズは、ベースはホームレスたちの珍道中であり、悲しみと笑いを存分に散りばめつつ、ちょこちょこ伏線を張り、視聴者が「ん?」と思うか思わないかの絶妙なラインで偶然を繰り広げる作品だ。最後の奇跡の連打は逆に気持ちがいいくらいであった。そう思えたのは、キャラクターの魅力や画の美しさもあってのことだ。
ギンさんハナちゃんミユキが幸せになったのか分からない。彼らにとっての幸せも想像がつかないし、今が不幸だとも感じられない。彼らはホームレスを抜け出したいのか、家族や仲間の元に戻りたいのか、金持ちになりたいのか…。
彼らの後日談が気になりつつ、今さんの他の作品も観たいと心から思った。

【次の作品】

未定。

メリークリスマス!!

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