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観劇・読書ログ「リムジン」

自分の公演が終わって、次の公演が始まるまで、大抵2つか3つくらいは舞台を観に行く。友人が出演する舞台に加え、わたしが好んでいる役者さんや団体の舞台を観る。

今回は好んでいる役者さんの舞台である。

生・向井理2回目

初めて向井理(敬称略)を生で拝んだのは、2011年のこと。
今は無き青山円形劇場で上演されて『ザ・シェイプ・オブ・シングス〜モノノカタチ〜』で主演を演じた。

初舞台初主演。特殊な劇場。

当時わたしは関西に住んでいて、役者の勉強を始めたか始めていないかくらいの頃だったと思う。だからこの円形劇場で演じることがどれだけ困難かを考える余地もなかった。

とにかく、向井理を、生で見たかっただけ。

なぜ好きになったかと言うと、2008年春の世にも奇妙な物語で見たのがキッカケだった。

「なんだこのイケメンは・・・!?」

と度肝を抜かれた。
当時、もちろん色んなドラマには出ていたけれど、まだフィーバーと言える売れ方ではなかったと思う。

それからあれよあれよと売れて行って、朝ドラ「ゲゲゲの女房」主演、大河出演、映画やドラマ主演を重ね、気付いたら国仲涼子と結婚していた(それはいいけど)。

一時期(勝手に)気持ちが冷めた時期があったけれど、歳を重ねてからの渋みや深みと(相変わらず顔はツルンとしてるけど)、演じる役のバリエーションも増えて、見ていて楽しい。

『パリピ孔明』も好き。
あれはビジュアルも含め、向井理ととても相性がいい。

そんな彼が本多劇場に立つというではないか。
しかも相手役は水川あさみ、他のキャストもとても魅力的。
チケットも無事に取れて、晴れて12年の時を経て、生・向井理を拝めることになった。

顔ちっちゃ。

初めて見た時と1ミリも変わらないその感想。

『ザ・シェイプ~』の時もそうだったんだけど、ちょっとパッとしない感じの物語のスタート。

向井理の衣装は作業服で、どこかボンヤリしている表情と物言いで、ハキハキを絵に描いたような水川あさみと対照的。

とにかく顔が小さすぎて顔が見えない、っていう不思議体験をさせてくれるのが向井理。7列目だったから肉眼でしっかり見える位置でもよ?

異常なスタイルの良さをまずは堪能し、ストーリにー入っていく。

延期から3年経ての上演「リムジン」

倉持裕の作・演出で、3年前にコロナで延期となり、今回上演。

当時と同じキャストで迎える、とのことだが、一度中止になった舞台を3年の時を経て演じるのはどんな気持ちなのだろう。

脚本はそのままなのだろうか、演出はどうだろう?
3年経てば状況も変わるだろうから、また稽古したのかな。

あらすじはHPより抜粋。

田舎町で小さな工場を営む康人(向井理)は、町の実力者・衣川(田口トモロヲ)から後継者に選ばれる。ところが、その喜びもつかの間、康人は誤って衣川に怪我を負わせた上にごまかしてしまう。そうして濡れ衣を着せられたのは康人の友人・坂(小松和重)。
「全部正直に話そう」と、妻・彩花(水川あさみ)に説得されて、ようやく覚悟を決めた康人だが、いざ衣川を前にすると、夫婦ともども再び迷い出し……。
小さなコミュニティーの中で起こるささいな事件。そのさざ波のような波紋が静かに拡がっていき、康人は、これまでの選択すべてに疑念を抱き始める。

https://mo-plays.com/limousine2023/

ひとつの大きな(小さな?)「嘘」が物語の軸となっている。

大人も子どもだって多かれ少なかれ、嘘をつく。

嘘をつこうと思ってつく嘘、咄嗟に出た嘘、誰かを思っての嘘、相手を騙すための嘘、自分を守るための嘘・・・

嘘の種類はたくさんあれど、どんな嘘であれ、結局は自分を苦しめることがほとんどである。

そしてその嘘は、気付かれていることがままある。
当の本人だけが、気付かれていないと思っているのだ。

「リムジン」は田舎の工場で繰り広げられる、「嘘」から始まる会話劇。

キャスト6人がそれぞれ”いそう”な人たちで、コミカルで、哀愁もあって、人間臭くて、引き込まれ、あっという間の1時間50分だった。

7人で埋める

キャストはたったの7人。

向井さん以外は舞台上で拝見するのは初めて。

手練れの皆さんだと頭では分かっていても、実際に見るとその巧さ/上手さに目を見張る。

わたしは本多劇場に立った時、「ひろー」と思った。
もちろんもっと大きな劇場はたくさんあるけれど、【本多劇場】という歴史が、とても大きくのしかかってきた気がして、5倍くらいに感じたのだと思う。

これまでわたしが本多で観てきた舞台は、比較的セットが大きくて派手だったり、演出効果もふんだんに盛り込まれていたり、キャストも二桁いて迫力がある作品が多かったように思う。

でも今回は工場の、しかも会議室のような、倉庫のような、そんな地味な空間。

その中に、たった7人。
しかも7人が一堂に会すことはなく入れ替わり立ち替わりで、舞台上に4人いるのがMAXくらいだったと思う。

もちろん、それぞれのセリフが多い。
掛け合いのスピード感と勢いは凄まじい。
と言いつつ、舞台上でひとりなのに、セリフも演出効果もない時間もあったりする。
つまり、”間を埋める”力が必要。
7人を感じさせない、幅と奥行きのある仕上がり。

そんなこと当たり前に出来る皆様なのだけど、わたしにとってはこの上なく、尊敬なのだ。

生で拝見したかった皆さんの演技がたんまりと堪能できて、本当に良かった。

大きな事件があったり、派手なアクションがあったり、問題を解決してスッキリしたりするような展開ではないけれど、「リムジン」のような切り取られた日常を覗かせてもらうような物語も、最近楽しめるようになった。

大人になったのね。

キャストみんな好き

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