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2023箱根駅伝(復路)観戦記

駅伝観戦三昧の最終日は、第98回東京箱根間往復大学駅伝競走(復路)の観戦記です。

第6区 20.8㎞ 芦ノ湖〜小田原

狙い通りに往路優勝を果たした駒澤大学が、8時に箱根町芦ノ湖畔をスタートしました。2位の中央大学とは30秒差、3位の青山学院大学とは2分3秒差で、まだまだセーフィティリードとは言えません。

初の山下りに挑む駒澤大学のルーキー、伊藤選手に対し、中央大学は、四年連続で6区を務める主将の若林選手です。経験豊富な若林選手が、ある程度差を詰めることが予想されたものの、層の厚い中から抜擢された伊藤選手は堂々たる走りを披露し、本格的な下りが始まる箱根山中では、じわじわと差を開いていきます。平地に変わる最後の3㎞もしっかりと粘り、7区中継では2位との差を47秒へと広げる殊勲の走りで、見事に区間賞を獲得しました。

復路での逆転優勝を狙った青山学院大学は、箱根初出場の四年生、西川選手が前半から精彩を欠き、区間最下位のブレーキに終わりました。首位とは、7分4秒差の7位まで転落し、この時点で二連覇は絶望的となりました。

3位には、北村選手が二人抜きを演じた早稲田大学が進出してきたものの、首位との差は4分59秒へと広がり、優勝争いは、駒澤大学と中央大学に絞られてきた様相です。

区間賞 伊藤蒼唯(駒澤大1年)58分22秒

第7区 21.3㎞ 小田原〜平塚

首位の駒澤大学は、駅伝経験豊富な三年生の安原選手が起用されました。昨年3区16位のブレーキに終わった汚名返上に燃える積極的な走りです。後半はやや伸びを欠いたものの、区間5位にまとめました。2位の中央大学・千守選手に3秒詰められたものの、44秒差を確保しています。

國學院大學のルーキー上原選手が、早稲田大学の主将・鈴木選手を逆転して3位に上がり、4位に早稲田大学が続きます。5位には、出雲(2区)、全日本(2区)で区間新記録をマークし、今季駅伝シーズン好調の創価大学・葛西選手が、貫禄の区間賞獲得で進出してきました。さらに後方では、同タイムの区間賞を獲得した明治大学・杉選手が、チームをシード権圏内の10位へと再び盛り返してきました。

法政大学・宮岡選手が6位で粘り、青山学院大学はエース格の佐藤選手が区間7位に終わり、順天堂大学・浅井選手に抜かれ、8位へ後退しました。

区間賞 葛西潤(創価大4年)・杉彩文海(明治大3年)1時間2分43秒

第8区 21.4㎞ 平塚〜戸塚

コース後半に遊行寺の急坂が控える8区は、近年レースの勝敗を決するポイントとなることも多くなっています。

首位の駒澤大学は、箱根初出場の三年生・赤星選手が落ち着いた走りです。昨年同区間3位の中央大学・中澤選手が逆転を狙って積極的に走るものの、殆ど差は詰まらないままレースは推移します。遊行寺の坂を越えると逆に差は徐々に開き始め、9区中継では、1分5秒差としました。

後方では3位争いが接戦となっており、3~7位の國學院大學、早稲田大学、法政大学、創価大学、順天堂大学が、15秒差内で続きました。区間賞は法政大学・宗像選手と、シード権獲得に向けて上位を猛追した東洋大学・木本選手が同タイムで獲得しました。

区間賞 宗像直輝(法政大3年)・木本大地(東洋大4年)1時間4分16秒

第9区 23.1㎞ 戸塚〜鶴見

「花の2区」を逆走する復路の最長区間です。

首位の駒澤大学は、ハーフマラソン学生記録保持者で、主将の山野選手が三年連続で起用されました。安定感のある走りが特徴の山野選手が区間3位にまとめ、10区中継では1分33秒差とリードを上積みしました。2位の中央大学・湯浅選手も、昨年同区3位と好走していた力のあるランナーでしたが、この区間の主将の堅実な走りが、ほぼ決定打となりました。

3位争いは熾烈を極め、先行する國學院大學・坂本選手に、創価大学・緒方選手、早稲田大学・菖蒲選手、法政大学・中園選手、順天堂大学・藤原選手が取りついて、5人の集団を形成して進みます。そこへ、8位でタスキを受けた青山学院大学のエース格、岸本選手が割り込み、一気にかわして3位に浮上しました。岸本選手は、区間記録更新こそならなかったものの、昨年の7区に続く連続区間賞で、気を吐きました。

トップ通過から20分以内の制限時間内に、久々出場の立教大学はしっかり母校のタスキ渡しを完了したものの、専修大学、国士館大学、関東学連選抜の3チームが無念の繰り上げスタートとなりました。

区間賞 岸本大紀(青山学院大4年)1時間7分27秒

第10区 23.0㎞ 鶴見〜大手町

六郷橋を渡り、東京都心を走り抜ける10区では、過去首位交代も行われており、1分33秒差があると言えども油断は禁物です。

駒澤大学のアンカーは、二年連続同区起用の三年生、青柿選手です。前半から緩めることなく快調なピッチを刻んでいきます。終始危なげのない走りで、確実に大手町のゴールまで母校のタスキを運び、高々と三本指(三冠)をかざしてゴールテープを切りました。

2位には、往路で見せ場を作った中央大学。3位は青山学院大学となりました。以下、國學院大學、順天堂大学、早稲田大学、法政大学、創価大学、城西大学、東洋大学までがシード権を獲得しました。

予選会からの出場組では、3区井川選手の快走で波に乗り、復路も粘り強く走った古豪・早稲田大学、5区の山本選手の区間新の勢いを復路でも活かした城西大学がシード権を確保し、区間新をマークしたヴィンセント選手以外の区間で全て二桁順位に終わってしまった東京国際大学(11位)、前半出遅れて波に乗れず、後半巻き返したものの及ばなかった帝京大学(13位)が、次回のシード権を失いました。第100回記念大会予選会には、日本各地から有力大学が参加することになるため、例年以上に厳しい出場権争いとなりそうです。

区間賞 西澤侑真(順天堂大学4年)1時間8分42秒

最終結果

【総合】
① 駒澤大学 10時間47分11秒
② 中央大学 10時間48分53秒
③ 青山学院大学 10時間54分25秒
④ 國學院大學 10時間55分01秒
⑤ 順天堂大学 10時間55分18秒
【復路】
① 駒澤大学 5時間24分01秒
② 中央大学 5時間25分13秒
③ 法政大学 5時間26分35秒
④ 創価大学 5時間26分40秒
⑤ 順天堂大学 5時間27分37秒

勝手に寸評

復路は、駒澤大学が一度も首位を譲らず、同校初の大学駅伝三冠を達成しました。6区に起用されたルーキーの伊藤選手が、チーム唯一の区間賞で弾みをつけ、以降の選手たちも着実に走って、タスキを大手町のゴールまで運びました。大エースの田澤選手の調子が万全ではなく、出雲、全日本で好走を見せてきた準エースの花尾選手、スーパールーキーの佐藤選手という主力を欠き、圧倒的な勝利とはいかなかったものの、『情熱に勝る能力なし』を信条に、きめ細かい指導で大八木監督が鍛え上げた選手達が、全ての区間で5位内で走破する総合力で勝ち取った勝利でした。

各選手が順当に力を発揮し、堂々の2位に食い込んだ中央大学は、名門完全復活と言ってよいでしょう。吉居兄弟、3区区間賞の中野選手ら、学生トップレベルの主力が残る来年度は、優勝候補に挙げられることでしょう。

優勝候補の一角、青山学院大学は、予定していた選手を起用できなかった5区、6区で順位を落としたことが悔やまれるレースでした。一時は、8位まで転落したものの、最後は地力を発揮して3位まで挽回したのはさすがです。長らくチームの主力を担ってきた四年生が大量に抜ける来年度は、試金石になりそうです。

國學院大學は、四本柱のひとりで、チームの大黒柱である主将の中西選手の欠場が痛かったものの、4位に入り地力があるところを印象付けました。5位の順天堂大学は、往路前半のエース格の選手達の出来が今一歩で、5区の四釜選手の区間新の力走を活かせなかった印象です。

2023年の駅伝三昧の日々は本日で幕を下ろし、明日からは通常note投稿に戻ります。

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駅伝観戦歴40年超の経験を活かし、中長距離、マラソン、駅伝に関する観戦記や備忘録のnoteを書いています。

ご興味あれば、私がこれまでに書いた記事を集めた『Markover 50の中長距離・マラソン・駅伝コラム』も御覧下さい。


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