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金曜日の随筆:脱成長戦略 追記

また運命を動かしていく金曜日がやって来ました。2021年のWK12、弥生の参です。一週間が経つのは早いと感じます。

先週の記事で、『脱成長』シリーズには一区切りつけましたが、追記として、私なりのまとめをします。

資本主義の死亡宣告者

資本主義の限界を説く論客に、水野和夫(1953-)氏がいます。水野氏は、経済評論家・エコノミストとして長く活躍されていて、現在は法政大学教授です。資本主義の終焉を説明したとされる"三部作"の他、数多くの著作があります。

歴史からの援用をふんだんに取り入れた説明とマクロ視点に撤した日本経済の現状分析が、私にはわかり易く感じています。ミクロ的視点が強かったり、比喩が多用されている派手な論考は、キャッチーではありますが、問題の真因を誤魔化されている気がします。枝葉末節的論点を意識的に削ぎ落として論述する水野氏の本は毎回楽しんで読んでいます。

あえてレッテルを貼れば、マルクス主義的世界観が強い論客です。水野氏の結論をざっくりまとめると「搾取の対象となる周辺を失った資本主義は最早限界に達している。今の資本主義的世界観のまま無理に無理を重ねれば、搾取の対象は日本国内の下流に向かわざるを得ず、中間層の弱者への転落は避けられない。前向きな未来は来ない。」というものです。

そう考えると、資本主義とは、搾取される対象がいないと成立しない残酷なドグマだ、という気がしてきます。そのような暗くて残酷な未来を提示しつつ、資本主義に代わる新たな思想や経済運営については、「そこは私の守備範囲ではない。以上。」というスタンスを貫いていて、具体的な代替策は示していません。

そのあたりの消化不良感について批判もあるようですが、「それがどうした」という態度を崩していません。「日本経済の症状を、歴史的経緯も踏まえてあらゆる角度から診断し、経過観察もしっかりやりますが、治癒には関わりません。」というポジションなのだと思います。水野氏にしてみれば、自分の分析結果を踏まえて、後は読者側で色々考えればよいでしょう、ということなのかもしれません。

私の自由意見

水野氏のような影響力のある論客でも、「自分からは代替案は示さない」という姿勢を取っているので、私が無責任に自論を語っても、害悪にはならないでしょう。

現時点での私の学びと社会を視る視点を記しておこうと思います。

● 二つの世界大戦を経た後、資本主義と民主主義は相性がよく、社会主義と独裁主義は相性がよかった。
● 国民国家に力があった時代に、資本主義の本性を抑える社会主義的施策が導入された。
● テクノロジーの発達、グローバリズムの進展で、巨大資本は国家を凌駕する存在となり、国家は巨大資本の軍門に下った。
● 権力を手にした巨大資本にとって、国家の利用価値は下がっている。むしろ邪魔な存在になりつつある。
● イノベーションによる利便性拡大が万人の生活に及ぶトリクルダウンの期待できる領域が縮んでいる。
● 宇宙開発事業は、地球の将来性に見切りをつけた世界の上層に属する人々の避難所・投資先として用意されようとしている。厄介で面倒な問題は地球人に押し付けて、宇宙というニューフロンティアで恩恵を受け取る挑戦に踏み出す。
● 日本はいいとこ取りを、割とうまくやってここまでこれた。個人の独裁を許さない共同のリーダーシップはそこそこうまく機能している。
● どういう日本社会が望ましいかの全国民のコンセンサスはないし、今後もなくていい。強力なコンセンサスができると、従わない人、従いたくない人を排除することになり、多様な議論と選択肢の可能性が失われる。
● 現在の日本で、豊かでかつ幸せな生活を送れているのは、上位15%程度。更にこの比率は減る。社会の維持には、恵まれた地位にある人の寛容と恵まれない人への施しの精神は不可欠になる。
● 孤立するのが最も危険。繋がっていること、いざという時に庇護される相手を持つことは重要。政府が弱者の庇護者であり続けられるかは微妙。
● お金だけあっても、自由で好き勝手な生活は維持出来ない。社会への貢献を意識すべき。

今週の格言・名言《2021/3/15-21》

Try starting with something that you can do easily.
簡単にできることから始めてみる
No matter how far-fetched your dreams, it is never out of reach as long as you believe you can achieve it. -Hermann Hesse, writer/Germany
君がどんなに遠い夢を見ても、君自身が可能性を信じる限り、それは手の届くところにある ーヘルマン・ヘッセ、作家/ドイツ

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