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マーケターは正社員雇用か、業務委託雇用か論争

こんにちは、菱沼と申します。
事業会社でマーケティング業務に携わってきてはや10年以上、関わった商材は50を超えました。

今は『BtoBマーケティング研究会』というマーケターが集まるFacebookグループでBtoBマーケに関わるTipsの配信や勉強会・交流会を主催したりもしています。

現役でマーケティングを生業にしている者としてマーケティングの記事でも書こうかなーと思って筆を取ったのですが、既に素晴らしい記事がnoteに出回っているので、自分が過去に苦労した"人材・組織作り"についての話を書いた方が面白くなりそう、ということで、

『マーケターを正社員で雇用して組織作りをしていくか、業務委託で雇用して組織作りをしていくか』

というテーマでメリットデメリットを考えてみたいと思います。

本記事では私の過去の体験をベースにしたマーケ組織構築の1つの考え方をまとめてますが、解があるテーマではないので、ぜひご意見やご感想などいただければと思います。
当記事から1フレーズでもお役立ちいただけるような情報を持ち帰っていただければ嬉しいです!

内容的には事業会社のマーケティングマネージャー向けの記事です。

インハウス組織か業務委託組織か

どの企業も優秀な人材採用と雇用維持には苦労しています。
マーケティング組織のマネージャーをされている方なら、優秀な人材に出会うために投資した時間や育成コストに膨大な時間を使ってきたことでしょう。
かくいう私も管理職時代は人材採用の面で大変苦労しました。
事業成長に伴い、業務量が増えたのに人員補充ができない、なんてことは序の口で

  • 半年かけて採用した事業会社のマネージャーだった子がロジカルシンキングでつまずき、3ヶ月でメンタルダウンして退職

  • リソース補填という名目で他の部署で扱い切れないメンバーを同時に部署に回されたことで、報連相から指導することになりさらにリソースが不足

  • チームメンバーが同時期に全員離職することになり、全てのオペレーションを巻き取った上で1ヶ月以内にチームを作り直すミッションが始まる

  • 事例インタビューを依頼していた業務委託人材とインタビュー当日に連絡が途絶える

  • 業務委託で採用した人材が仕事しない

などなど、書いているだけでも自身への反省と苦労した日々が思い出されます。

また、コロナによってマーケターの副業・複業の働き方が一般化したことにより、今までの組織作りを改めて見直すタイミングも来ています。

今までは優秀な人材を正社員で雇用するにはどうすれば良いか、という課題だったのに対し、今後は、優秀な人材にどうやって出会い、人生のリソースをどの程度割いてもらうか、という課題に変わってきているように思います。

では、マーケターを正社員で雇用した組織作りと業務委託中心の組織作りについてそれぞれ考察してみます。

正社員採用で組織作りをするべき?

採用難易度は年々増加傾向に
今後、確実に来る未来として労働人口の減少があります。
総務省のHPに掲載されている「令和4年版高齢社会白書」によると、生産年齢人口は2050年には今と比べて29.2%減少すると見込まれているそうです。

生産年齢人口の減少により、労働力の不足だけでなく、国内需要の減少による経済規模の縮小も見込まれるため、マーケターの需要はより一層増えると同時に、優秀な人の奪い合いがより加速していきそうです。

未経験、若手の成長はギャンブル要素がある
『マーケティング業務』は会社によってかなり業務内容にバラツキがありますが、ビジネス基礎力となるロジカルシンキングや咀嚼力、プロマネスキル、レポーティング能力などはマーケに限らずどの職種でも求められます。
マーケティング業務は守備範囲が広域なので、より高度なビジネス基礎力が求められる職種とも言えるでしょう。

このビジネス基礎力。
若手は通常仕事を通じて鍛えられていくことになるのですが、上司ガチャもある上に、人によってはハードな地獄の修行期間になりがちで、途中でメンタルを壊してリタイアする人も出てくるため、誰でもスキルとして取得できているとは限りません。
また、一気に業績の伸びたベンチャー企業においては、マネジメントに不慣れな管理職の方も多いため、粗い指導になったり、ベーススキルを自力で身につけられない若手は退職に追い込まれてしまうケースもあります。
社会人経験の浅い若手がしっかりビジネス基礎力を得られるかどうかは、ギャンブル性があると言えるでしょう。

経験者でもスキル、文化マッチも変数が多い
一方で、ビジネス基礎力もしっかりあるし、過去に実績も出しているマーケターだとしても、正社員採用で上手くいかないケースもあります。

要因の多くは企業の文化マッチ。

いくら面接で好印象でも、一緒に働く人との相性や会社の文化に馴染むかどうかは、正直入社してみないと分からないものです。
鳴物入りで入社したマーケターが自分のやり方を押し付けすぎて3ヶ月くらいで辞めてしまう、なんてこともあります。(私も経験ありますが、人事からは怒られるわ渡した仕事が戻ってくるわで地獄でした)
中途採用もまた、入社して一緒に仕事をしてみないとマッチするかが分からないギャンブル性があると言えます。

以上を踏まえると、
『採用母集団が少ない中で自社に興味を持ってくれる確率』×『文化マッチする確率』(若手ならこれにプラスで『こちらの意図通りに育ってくれる確率』
という因数分解が考えられ、マーケティング組織を正社員中心に作っていくというのはなかなかハードルの高い取り組みになってきていると言えそうです。

業務委託中心に組織作りをするべき?

それでは正社員の組織作りが難しいとして、業務委託中心の組織作りは障壁が少ないのでしょうか。
こちらも複数の切り口からメリット・デメリットを探っていきましょう。

本来の意味でのフリーランスは減った?業務委託もピンキリの時代に
先日、広告代理業の経営者の友人と、フリーランスの定義についての話で盛り上がりました。
本来フリーランスは『傭兵』という意味で自らの専門技能をサービスや成果物を通じて提供する人物を指しますが、
最近では単純に労働力を提供するような"なんちゃってフリーランス"が増えてきた印象があるよね、という話です。

フリーランス自体を否定しているのではなく、会社や場所にとらわれない"働き方"の側面がフューチャーされがちで、プロとして果たすべきミッションを遂行できる能力があるか、という本質的な話が二の次になってはいけないよね、という着地で終話したのですが、営業を取るためにできないことも"やれます!"と言ってしまう方も増えて来ているように思えます。(営業スキルとして無を有にすることの重要性も分かりますが)

マーケポジションが不足している背景やフリーランスの働き方・リモートワークの一般化、WEBマーケのナレッジが手に入りやすい環境から、経験が少なくてもマーケティング領域での独立がしやすい状況になってきています。

その反面、マーケターのレベル感もよりピンキリ化しており、採用する側にとってはスキルセットの見極め難易度が上がってきているように思えます。

業務委託する側にもスキルが必要
業務委託を採用したのに上手くいかないケースとして、『依頼者側のディレクションスキル不足』があります。

そもそもマーケティングの業務委託は

  • コンサルとして戦略立案のアドバイスや壁打ちだけを行う場合

  • 上記に加え、状況によってはマネジメントやディレクションまで行う場合

  • 戦略上実施したいが実行リソースが足りないので切り出した業務を行う場合

この3パターンが一般的な依頼内容になります。

しかし、業務委託の活用に慣れていない依頼者だと、上記の定義を意識せず、目の前の課題をなんとかしてもらうために『業務委託』に依頼しがちです。
結果的に、本来業務委託者が得意ではないアウトプットを求められ、結果が出せないということにもなりかねません。
傾向として、部下をマイクロマネジメントできるレベルまで業務解像度の高いマネージャーは要件定義が上手く、業務委託も上手く活用できているように思えます。(使い倒しすぎて業務委託者が離れる場合もありますが、、)

合わなければ契約を切れば良い、と割り切ることもできるけど・・・
正社員と異なる、業務委託活用のメリットは契約期間の柔軟性でしょう。
一般的には依頼内容によって下記のいずれかで契約することになります。

  • プロジェクトベース、納品物ベースで報酬を支払う請負型の契約

  • 明確な納品物はないが、事前に取り決めたリソースを提供する準委任型の契約

いずれも契約期間を設けることができ、正社員と比較すると必要な時に必要なリソースを活用できるという雇用の柔軟性を担保できます。

ただ一方で、業務委託者サイドも慎重に案件を受けたり継続するかを常に見極めているため、雇用継続したいのに契約を打ち切られる場合もあります。
優秀な人ほど他社からも引っ張りだこになるので、仕事のやりやすい環境を整備することや適正報酬を渡すことは最低限必要なマナーとなります。

また、業務委託者の周りは業務委託者の知人が多いため、対応が悪い企業の噂はすぐに広まります。
雇用形態に関係なく、真摯に向き合うことが長続きの秘訣と言えるでしょう。

結局正社員中心の組織と業務委託中心の組織はどっちがいいの?
冒頭に述べたとおり、この問いに対する解は存在しませんが、その企業の事業フェーズやサイズ感、労働環境によって、適した解は存在すると考えます。

この記事の結びとして、私が過去に見てきたケースから業務委託中心組織が向いているフェーズ、正社員中心の組織作りが向いている事業フェーズについてご紹介したいと思います。

業務委託中心の組織作りをした方が良いフェーズ

大企業内での新規事業の立ち上げフェーズ
大手企業内で生まれた新規事業の1→3くらいのフェーズは業務委託中心組織がおすすめです。
このフェーズの特徴は事業投資していくことは決まっていて予算もあるが、とにかく実行の手数が足りないという一方で、
まだ事業が安定しておらず、撤退のリスクもあるため、正社員の採用には慎重になります。
やると決めた業務を代行してくれる業務委託を採用できると、事業スピードが一気に上がる可能性があるフェーズとも言えるでしょう。

一方、0→1のフェーズで業務委託を採用するのはあまりお勧めしません。
細かな事業ピボットが多く発生するため、業務委託者とのコミュニケーションコストがかかる上、コミュニケーションエラーの発生確率も上がるためです。
戦略を固める目的での有識者とのディスカッションであれば有意義な時間を過ごすことができるでしょう。

IPOを目指す上で正社員への教育と事業成長を同時に実現させる必要があるフェーズ
事業の方向性が決まり、オペレーションも安定、追加の出資を受けて組織の地固めをしたい。
が、社員が若く、経験と知見が足りない、、
しかしIPOスケジュールは決まっており、事業成長待ったなしの状況。
こんな状況下でも業務委託中心組織が上手く機能する可能性があります。

このフェーズになると、会社内で求められるポジションやスキルが固まってくるので、要件定義の得意なメンバーがいれば部分的な業務を外に出しやすくなっていきます。
また、依頼にマッチした業務委託者と出会うことができれば、育成やマネジメントも省力化できるため、非常に効率の良い事業運営が実現できます。
IPOを目指す上では組織化、企業文化の醸成も進める必要があるので、並行して社員の採用は行う必要はあるものの、正社員では採用できないレベルのリソース補填ができる可能性もあるでしょう。

正社員中心の組織作りをした方が良いフェーズ
先ほども触れましたが、IPOなど組織拡大を前提にしたスタートアップ初期。いわゆる0→1のフェーズは正社員中心の組織作りが良いでしょう。
以前、VCの方にシードフェーズで業務委託を使っている組織は多いのではないか?という質問をしたところ、
『上手く使えないことが多い』という回答でした。
理由としては以下の3つのうちどれかで問題が発生するとのこと。

・業務全てがコア業務となり、業務委託者が役割としてコミットしにくい
・事業成長に対する温度差が出る
・業務委託者業務のブラックボックス化が起きやすい(依頼する方も多忙になり、放置しがち)

確かに仮説と検証を高速で繰り返す必要のあるフェーズでは、業務委託サイドもかなり事業にのめり込む必要があり、ある程度業務の型が決まってこないと依頼しにくいというのは非常に納得感がありました。

業務委託比率を増やしていくタイミングとしては、

・事業に関するオペレーションの再現性が増した時
・順調にコア業務を行う正社員採用が進み、属人化業務の比率が3割程度になった時

あたりを指標にすると良いでしょう。

最後に

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▼会社概要
https://bgrowth.jp/

マーケター確保の難易度は今後さらに上がっていく中、クラウドワークスやYOUTRUSTで自分でも見つけることが出来ますが、探すのに時間がかかる上、スキルに加えて人間性の面でもマッチするか見極めるのは難しいし、手間もかかるもの。
ご紹介マーケターとの面談は無料ですので、マーケティング業務のリソース確保にお困りの方は、ぜひお気軽にお声がけください!

10年以上事業会社でマーケティング/事業開発に携ってきました。昨年立ち上げた『BtoBマーケティング研究会』は参加人数700人規模まで成長。マーケター向け勉強会や懇親会を主宰し企業とマーケターの最適なマッチングやマーケターの繋がりを活発化させるべく奮闘中。