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1on1に認知行動療法を組み込んでみた

おはようございます。
雇用の流動性が高まっている現代において、結果が出なかったり成長支援が物足りないと感じられてしまうと、大事に育ててきた部下にも容赦無く転職されてしまいます。

企業はヒトモノカネ情報で成り立つと言われていますが、モノカネ情報を使うのは人です。
つまり、人の成長は業績達成に直結する最重要事項の1つなのです。

最近、部下の成長支援の取り組みの1つとして、IT業界を中心に、1on1と呼ばれる部下との定期面談の機会を持つ企業が増えてきています。

しかし、単純に1on1による定期面談を取り入れてみたものの、上手く運用できていない企業はまだまだ多く、取り組みが形骸化しているのも事実です。

私も過去に実施する側もされる側も経験がありますが、人によって驚くほど1on1に対するアプローチが異なります。

勉強しようにも、1on1の指南書になるような読み物は、著者の企業の実践例となっている場合が多く、なかなか自社に応用が効きにくいというデメリットがあります。
私の場合、結局独学で1on1を学ぶことになり、相当苦労しました。

その後、運良くさまざまな方と1on1を実施する機会に恵まれたり、自社に1on1の仕組みを導入する機会にも恵まれ、自分の中でのある程度の成功パターンが固まってきました。

今回の記事では、私の1on1のアプローチで一番汎用性の高い「認知行動療法」を応用した「認知療法的1on1」について、お伝えできればと思います。

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認知行動療法とは

認知行動療法とは、生活の中でのものごとを認知する方向性を修正していく治療法のことです。
心理学の領域のひとつですが、専門家意外にも広く知られており、教育やビジネスの世界でも応用が効く、非常に汎用性の高い考え方です。

認知行動療法のアプローチを私なりに咀嚼すると、「主観と思い込みの排除」です。
自分自身を客観視し、現状を正しく捉えることで、結果として、自分自身の気持ちをポジティブに保てたり、行動をコントロール(自制)できるようになることが認知行動療法におけるゴールです。

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認知療法的1on1とは

上記でご説明した、認知行動療法のエッセンスを抽出して、面談に取り込むことで、人材育成を実現する方法が認知療法的1on1です。

そのため、認知療法的1on1のゴールは通常の1on1と変わらず「人材育成」です。
被面談者が抱えている問題を解決することで相手の成長(人材育成)につなげる場であるため、
取り扱う問題のヒアリングから選定まで、高度なファシリテーション能力が求められます。

しかし、認知行動療法でよく使われているテンプレに沿って進めていくと、ファシリテーション能力が高くなくても、一定の1on1の質を担保することができます。

次項では、1on1を効果的な場にするために、実際に認知療法的1on1で取り扱う内容について、具体的に解説していきます。

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認知療法的1on1の進め方とコツ

1on1で話すべき内容は、相手の業務の進捗確認や問題解決をサポートすることなのですが、
人によっては1on1の場を生かしきれない人も多くみられます。

過去に私が受けて一番驚いた1on1は、着席した瞬間前置きもなく
「今困っていることはありますか?」
という抽象的な問いをされ、どこまでの粒度で話せばいいのか悩みながら
結局中身のない会話に終始した経験
があります。

1on1慣れしていない方は、まず、以下のテンプレをそのまま当てはめてみるところから始めてみるとよいでしょう。

1on1実施における前提条件としては、以下を想定します。

頻度:週一回
時間:1セッション45分

内容
・導入パート(5分)
まずは、アイスブレイクとして、答えやすい質問から入ると良いでしょう。
質問例としては、現在の自分の気分レベルを尋ねるという質問があります。
最悪の気分を0、最高の気分を10として現時点でどの位置に被面談者がいるかをチェック
します。

その際に、5前後のような平均的な回答をされた場合は、どんないいことがあると10に近付くか、といった具合に話を広げていくとよいでしょう。

2度目以降の面接であれば前回取り上げた問題や気づいたこと、利用したスキルについて簡単に振り返ります。
また、前回のセッションからの仕事の中で起きた問題や悩み前回のホームワークの結果について話し合います。

・相談、アジェンダ設定パート(15分)
アイスブレイクが済んだら、相談者の状況を具体的に聞き、アジェンダを設定するパートに入ります。
ここでは、9:1で被面談者に話をしてもらう意識を持ちましょう。

被面談者は自分で問題に気付いていないこともあるので、様々な切り口から質問してあげると答えやすいです。
フレームワークの一例をご紹介します。

1、職務に関するパフォーマンス
・売上、プロジェクト進捗
・顧客フィードバック
・予算

2、他部署との関係
・社内の人間関係はどうか
・〇〇部門と〇〇部門の関係はどうか

3、マネジメントとリーダーシップ
・部下を指導、コーチングできてるか
・採用に全力を尽くしているか
・勇気ある行動を部下が取れるようにしているか

4、イノベーション
・常に前進してるか
・新しいプロダクト、テクノロジー、手法を試しているか

あたりが回答しやすいでしょう。

共感する相槌を打ちながら、喋りやすい雰囲気を作っていきましょう。
ここで出てきた「うまくいってないこと」が、被面談者にとっての「問題」です。

出た問題の解決方法を考えるのが今回で言うアジェンダですが、設定する上で1点だけ注意が必要です。

それは、1on1の実施目的に沿って、必ず「解決することで相手の成長(人材育成)につながる」ものにするということです。

また、時間の制約上、取り扱うアジェンダは必ず1つに絞るようにしましょう。

アジェンダ設定に慣れてきたら、事前にお互いが本日話すことを3つ準備しておき、面接される側から発表してもらいましょう。
そうすることで、お互いの考えのズレを確認することもできるので、オススメです。

特に話し合いたいアジェンダがない場合は(今回一緒に取り組むと役に立つ問題は何でしょうか)と共同作業に向けた意味を含んだ声かけを行います。

決めたアジェンダは、ホワイトボードや紙に書くなどして可視化するとその後の議論がブレにくくなるのでオススメです。

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・対処パート(15分)
アジェンダの設定が済んだら、問題解決につなげる対処パートに入ります。

まず、問題に対して、相談者が工夫したことをヒアリングしましょう。
その工夫に対して、いくつかのパターンで新しい切り口を提示してあげると効果的です。

問題の発生原因として大きく、「考え方の問題」「行動の問題」「そもそも解決法がわからない問題」に当てはまる場合が多くみられ、複合的に絡み合っていることがあります。

被面談者は、現場として問題解決ができていないため、上記の3つの考え方のアプローチが間違っていると考えられます。

例えば、一人で多くの仕事を抱えて業務が回らない、という問題を抱えている人に対しては、支援者の検討や誰かに頼む際のコミニケーションスキルの問題と置き換えることになります。

このパートでは、具体的な解決法を必ずしも出す必要はありません。
その代わり、被面談者に新しい視点や考え方をインプットしたり、考えさせたりすることを意識しましょう。

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・終結パート(10-15分)
最後に10-15分前後かけて、今回のセッションのまとめに入ります。
1on1を通じて、身に付いたことや気づいたことをまとめ、次回1on1までのホームワークを決めます。

ホームワークの内容は、1on1の中でtodoを設定してもいいですし、次回のアジェンダを決めてくる、などでも大丈夫です。
重要なのは、1on1を定期的に継続することですので、次回の1on1との接合となるホームワークは必ず設定しましょう。
そして、面接に対する相談者の考えや疑問を尋ね、面接を終了します。

45分の面接の場合30分を過ぎたらまとめを意識し、残り時間が30分を過ぎてからは新しい話題に入らないようにしましょう。
仮に、30分を過ぎてから重要な課題が出てきたときには少しだけ話してホームワークに組み込むか、次回に話し合うようにすると良いでしょう。

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今回はこの辺で終えますが、実際に私が行った認知療法的1on1の例(会話形式)とかも追記で紹介できればと思います。

実践した!既にしてる!みたいな方がいたら、ぜひコメントいただけると嬉しいです。情報交換しましょう。

10年以上事業会社でマーケティング/事業開発に携ってきました。昨年立ち上げた『BtoBマーケティング研究会』は参加人数700人規模まで成長。マーケター向け勉強会や懇親会を主宰し企業とマーケターの最適なマッチングやマーケターの繋がりを活発化させるべく奮闘中。