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#44「違背実験 ←マーケターの認知率5%未満!?」


違背実験
この調査手法をご存知だろうか?

名前(漢字)からして、何かよろしくない実験なのでは。。?と思う方が多いと思います。駆け出しのマーケターだったころ、私は「違法で社会の背くような実験。。。」と勝手に思っておりました。(笑)


違背実験とは

特定の商品・ブランドのユーザーに、一定期間その使用を強制的に禁止することで、禁止した期間の意識・行動を把握。結果として商品・ブランドの「本質的価値」を明らかにする調査手法です。


実験対象者は、
商品・ブランドのロイヤルユーザー/ヘビーユーザー

商品・ブランドのロイヤルユーザー/ヘビーユーザーであればあるほど、「本質的価値」をあぶりだすことが有効です。
※特定カテゴリで実施するケースが多い傾向がございます。

違背実験に有効的な商品群/カテゴリ(例)
 ・炭酸飲料
 ・コーヒー飲料
 ・アルコール飲料
 ・お米/パン
 ・たばこ
 ・音楽サービス
 ・などなど

つまり、その商品が実験対象者にとって日常に溶け込んでいれば溶け込んでいるほど有効的です。
商品がある世界が「当たり前の世界」となっている状態

故に、その商品を毎日使用している人を実験対象者とします。そうでなければ、効果的な洞察を導き出すことが出来ません。


毎日使う。故に、禁止された時に困る。

禁止されて対象者は振り返ります。そして、その商品・ブランドは“私にとってどんな存在だったか。どんな価値を与えてくれたか。”に気づきます。
人生と同じですね。無くなってから気づく大切なこと

例えば、
あなたは毎朝パンを朝食に食べるとします。そのパンを1週間禁止。と言われたら、、、?
例えば、
あなたは毎日同じ時間にコーヒーを飲むとします。そのコーヒーを1週間禁止。と言われたら、、、?
例えば、
あなたは毎日仕事中に音楽サービスで集中するとします。その音楽を聴く行為を1週間禁止。と言われたら、、、?



違背実験を設計・運営したマーケターは非常に少ない。

それは、お察しの通り、かなり大規模な調査となるためです。
流れとしては、下記の10ステップとなります。

①対象者を選定(※通常10名ほど)
②対象者に1週間特定の商品・ブランドを禁止とする
 (※基本的に1週間が目安です)
③毎日対象者に日記形式のレポートを書いていただく
④内容は、特定商品・ブランドの代わりに何を使用したか/どう感じたか
⑤日記形式のレポートを読み、追加質問がある場合は対象者に都度聴取
⑥1週間の期間が終わった直後に、対象者を招集
⑦対象者から振り返りのインタビューを実施
⑧インタビュー中に、禁止していた商品・ブランドを使用してもらう
⑨改めて、その商品・ブランドの良さに関して聴取
⑩実験での考察・学びをレポート化


日々の対象者レポートを読み込む。期間が終わった直後にインタビューを実施。といった、通常はそれぞれ独立した調査が1つに集約された調査(実験)となるため、準備・運営・まとめに何倍もの時間やスタッフが必須となってきます。

故に、実際に違背実験を設計・運営したマーケターは非常に少ないと感じております。
そもそも、認知率も少ないです。


私は1度、炭酸飲料の違背実験を設計・運営。

私はマーケター人生で1度だけ、違背実験をしました。
周りに違背実験経験者の先輩がたった1人しかいない状況。ひいては、ご一緒した調査会社も数年ぶりに実施。ということで、手探りでしたが、無事大成功でした。
その後、私は違背実験経験者という良い噂が社内外に波及し、「レアマーケター」としてのポジション(?)を確立することができました。

私の実験では「炭酸飲料」が対象商品。
無糖炭酸、有糖炭酸はもちろん、“アルコール”も禁止としました。
夏場だったので、ビールが美味しい季節。。。

印象的だったのは、
「炭酸が無いとストレス発散できない。」
「自分の中で、1日における区切りができない。切り替えができない。」

という声。

そして、禁止期間を終えて対象者を一同に集め、インタビューをした日。
各対象者に、一番最初に飲みたい炭酸は何ですか?と事前聴取していた商品をある種の”ご褒美(お疲れ様です!)”として手渡し、それぞれが開けたときの「プシュー!」という音。
「そうそうこれこれ!!」と、対象者全員が口を揃えて満面の笑顔だった事です。


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このように、当たり前に日々使っている物・食べている物・飲んでいる物。
それがある日突然禁止となったら?
まるで映画のような設定ではございますが、このような手法が「違背実験」となります。

実際に、ネットで調べてもなかなか文献が出てこなかったりしますので、今回自分の経験をもとに、違背実験とは何ぞや?というnoteとさせていただきました!

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