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役所広司の演技が凄まじい『すばらしき世界』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:7/23
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が好きなら楽しめるかも】

ヒューマンドラマ
ヤクザ
極道
ヤメ暴

【あらすじ】

殺人を犯し、13年の刑期を終えた三上(役所広司)。彼は、目まぐるしく変化する社会からすっかり取り残され、身元引受人の弁護士・庄司(橋爪功)らの助けを借りながら自立を目指していた。

そんなある日、生き別れた母を探す三上に、若手テレビディレクターの津乃田(仲野太賀)とやり手のプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)が近づいてくる。

彼らは、社会に適応しようとあがきながら、生き別れた母親を捜す三上の姿を感動ドキュメンタリーに仕立て上げようとしていた。

肩身の狭い社会に翻弄されながらも、懸命に生きる三上に降りかかる運命とは……。

【感想】

いい映画でした。元ヤクザが“普通”を得るために、もがき苦しみながら社会に適応しようとしていく話で、『ヤクザと家族 The Family』と近しい設定です。

でも、こちらの方がより生活に密着した作りになっていて、元ヤクザが普通の生活を送るためにどれだけの苦労があるのかが伝わってきますね。仕事もないし、世間の目も冷たいし、それでいて瞬間湯沸かし器のような性格だから、何かと問題を起こしてしまう三上。とはいえ、根っからの悪人というわけではなく、まっすぐな性格ゆえの行動だから、どこか憎めないというか、むしろ好感度は高い方です。

そんな役を演じきる役所広司の演技が、この映画の一番の見どころと言えるでしょう。元ヤクザというだけあって、ドスの効いた声と怖い表情は鬼気迫ものがありますし、そう思えば本当に元ヤクザなのかと疑いたくなるぐらいの親しみやすい笑顔も見せてくれて、改めて彼の演技は素晴らしいなと思いました。この2つを見事に演じ分けることができるのがすごい。僕は、三上の感情が爆発して、カップラーメンをぶちまけてしまうシーンが一番好きでした。あんなに吹っ飛ばしちゃうんだって(笑)

ただ、母親を探すくだりが弱いかなって感じました。今回、三上にとっては母親を探しあてるというのがひとつのミッションみたいになっているんですが、なぜそこまで母親に固執するのかの深掘りがなされてなかったから、そこはもう少し知りたいところでしたね。原作読めばわかるのかな。。。

あと、もう一人注目したいのがか田村健太郎っていう役者さん。いろんなドラマや映画に出てて、今回も終盤で障害を持つ役どころで出演してるんですが、この人もいつも幅広い役を演じていて、しかも、どの役もピッタリハマってるんですよ。最近けっこう好きな役者さんです。

そういえば、『ヤクザと家族 The Family』でヤクザを演じていた北村有起哉が、今回ケースワーカー役で出演しているのがなんか面白いですね。まったく真逆の立場の人間を演じるって。しかもこの短いスパンで。

ちなみに、英語のタイトルは“Under The Open Sky”って言うんですよ。これ何でかなーって思ってたんですけど、劇中でキムラ緑子演じる極道の妻が、「シャバは肩身は狭いけど、空は広いって言いますよ」っていうところがあるんですね。まさにこことリンクしてるんだなーって思うと、素敵なつながりだなって思いました。

ストーリーはもちろんのこと、役所広司の演技だけでも観る価値がある映画なので、これはオススメしたいです。


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