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親友の死に人誅をくだすリベンジ映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:23/146
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

スリラー
復讐
レイプ事件

【あらすじ】

30歳を目前にしたキャシー(キャリー・マリガン)は、ある事件によって医大を中退し、今やカフェの店員として平凡な毎日を送っている。その一方、ごとバーで泥酔したフリをして、お持ち帰りオトコたちに裁きを下していた。

ある日、大学時代のクラスメイトで現在は小児科医となったライアン(ボー・バーナム)がカフェを訪れる。この偶然の再会こそが、キャシーに恋心を目覚めさせ、同時に地獄のような悪夢へと連れ戻すことになる……。

【感想】

これは面白いです!いい歳したビッチの話かと思いきや!レイプ事件を苦に自殺した友人の仇を取る話だなんて!

いじめたやつらがのうのうとその後の人生を平和に生きていることに対する制裁という意味では、共感もしやすいし、オリンピック関連のニュースを見ていると、ちょっとタイムリーな内容かなとも思いました。

ネタバレはしないようにしていますが、少し内容に踏み入った感想になっているので、知りたくない方はここでそっ閉じしてください。

<お持ち帰りオトコたちへの制裁>

今回の映画、最初の1/3と残りの2/3で、話の方向性がだいぶ変わるんですよ。最初は、キャシーがクラブで泥酔したフリをして、お持ち帰り"させている"描写です。これも後に続く大事な前フリなんですけど、ここでは彼女を食べようとする男たちのクズっぷりが露呈されています。男性の中には耳が痛い人もいそうですが(笑)

意識が朦朧としている(フリをしている)キャシーをうまく丸め込んでお持ち帰りし、セックスに持ち込もうとする男の多さときたら。彼女は手帳にカウントしているんですが、1ページあたり120人いて、何ページかありそうだったので、少なくとも200人以上はそういう男がいたんじゃないでしょうか。でも、彼女はあくまでもシラフなので、途中で真顔になって聞くんですよ。「何してるの?」って。これから事におよぼうとしていた男性は「えっ?」って。彼女がシラフだと知るや否や、急にビビって逃げ出すやつもいて、何ともダサい描かれ方でした。

<旧友との再会が運命を決定づける>

ある日、キャシーが働くコーヒーショップに、医学部時代のクラスメイトであるライアンが偶然訪れます。久しぶりの再会に心躍る両者ですが、彼から他の同級生の近況を聞いて、キャシーの声がこわばります。そして、ついに復讐を実行することを決意します。

<昔何があったのか>

キャシーには親友のニーナという女性がいました。ニーナは同じ医学部で優秀な生徒だったらしく、まさに前途有望な人物だったそうです。ところが、彼女は酒を大量に飲まされ、意識が朦朧としている中で性行為をさせられ、しかもそれが動画に残ってるという、かつてのスーフリ事件みたいなことの被害者になってしまいました。

その事件をきっかけにニーナは退学し、やがて事件を苦に自殺してしまうんですね。彼女を支えるため、キャシーもいっしょに退学しています。

ニーナや自分がそんな辛い目に遭いながらも、加害者たちは何事もなかったかのように平和で成功した人生を歩んでいるのが、キャシーには許せなかったんですよね。それがこの映画の見どころで。昔の過ちに対する罰は当然なんですけど、加害者がのうのうと楽しそうな人生を送っていることへの怒りとかやるせなさを感じさせてくれるところが作品として面白いんです。

こういうのは経験した人じゃないと絶対にわからない感覚ですが、「された」側はずっと覚えていますからね。軽度の「いじり」だろうが何だろうが、不快に感じたことは一生忘れません。何年経った後でも、被害者は加害者に対して一生消えることのない怒りや悲しみを抱え続けるし、その報復があってもおかしくないということを知らしめたこの映画は、他の復讐映画よりも共感度が高いんじゃないかなと思います。

また、実際の加害者だけでなく、「私は悪くない」と傍観者であることを決め込んだものや、加害者をかばった大学側や弁護士にも怒りの矛先を向けているのもよかったです。「された側」からすれば、傍観者も援護者もまるっと加害者と変わりませんから。

<復讐の仕方もポイント>

普通、復讐といったら暴力でやり返すことをイメージされるかと思いますが、今回に関しては、ニーナがされたことをそのままやり返そうとするのが、相手に自らの罪の重さを知らしめる点において効果的だろうなと思いました。まさに目には目を、歯には歯をってやつです。暴力でも一定のしてやった感はあると思いますけど、やっぱり同じ苦しみを与えたい気持ちはありますよね。特に今回はケースがケースなだけに。

<自分のしたことは一生背負わなければならない>

僕は終盤のキャシーのセリフがすごく心に残るんですよ。

「事件があった後から、ニーナにアンタの名前(加害者のアル)がついてまわるようになったけど、アンタにこそニーナの名前がついてまわるべきだ」

みたいな感じだったんですけどね。これ、それまでニーナはニーナで、彼女ひとりの、唯一無二の存在だったんですよ。作中では明言されていませんが、おそらく事件後、「アルとヤッたニーナ」みたいに言われたんでしょうね。ニーナの名前に必ずアルがつくようになってしまったと。これはもうかなり屈辱的ですよ。僕だったら絶対に許せません。だからこそ、アルにも「ニーナを殺したアル」と、彼にも一生自らの罪を背負わせてやるみたいなところが、とても印象深かったです。

<今まさにタイムリーな話題>

日本だったら、まさにスーフリ事件が近しいかなって思うんですけど、今話題の小山田圭吾という方の件も彷彿とさせますよね。障害者をいじめていたという。別にネタにするわけじゃないですけど、あれだって、今回の映画のように、いじめたことはただの武勇伝になっていて、今は普通にミュージシャンとして活動されているじゃないですか。でも、きっとされた側の心には傷が残っているでしょうし、この映画みたいに報復されてもおかしくはないと思うんですよね(SNSで第三者が制裁を加えるのは違うと思いますが)。そういう点を踏まえると、ある意味タイムリーな映画だと思いました。

<その他>

それにしても、キャシーは年齢の割にずいぶん私服が若くて、ちょっと違和感あったんですよ。作中では30歳を目前にしている年齢ですが、どうも20代前半の服装な気がして。これ、もしかしてニーナが亡くなったタイミングで、キャシーの中で時間が止まったとか、そういう設定ななのかなーって勝手に推測しています。


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