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北朝鮮の知られざる実態に迫った『トゥルーノース』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:36/107
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
アニメ
北朝鮮
強制収容所
脱北

【あらすじ】

1960年代、平壌で幸せに暮らすパク一家は、父の失踪後、家族全員が突然、政治犯強制収容所に送還されてしまう。

過酷な生存競争の中、主人公ヨハンは次第に純粋で優しい心を失って他者を欺く一方、母と妹は人間性を失わず倫理的に生きようとする。

そんなある日、愛する家族を失うことがキッカケとなり、ヨハンは絶望の淵で「人は何故生きるのか」、その意味を探究し始める。

やがて、ヨハンの戦いは他の収監者を巻き込み、収容所内で小さな革命の狼煙が上がる。

【感想】

これはものすごく社会的意義のある映画ですね。そのまんま実話ではないですが、様々なリサーチをもとに構成された本作は、とてもショッキングな内容です。

<北の国の実態>

日本でも、北の国による拉致被害者問題や外交的な事象など、ニュースで見聞きすることは多いですよね。独裁体制で自由がなさそうという何となくのイメージはあるものの、その実態については知る由もない人も多いのでは。それが、今回の映画で明かされています。

幸せに暮らしていた家族が、ある日突然、強制収容所に連れて行かれるんですよ。トラックの荷台に押し込められ、夜中から明け方までノンストップで移動。着いた場所では粗末な住居が与えられ、過酷な肉体労働が課せられ、大した食事も与えられないという劣悪な環境です。

看守たちの命令は絶対で、抗おうものならひどい仕打ちを受けるばかりか、収容者に対する人権はないに等しいです。看守に犯された女性収容者は、望まぬ妊娠をしても、「働かずに不埒なことをした」という罰で射殺されてしまいますし、土砂崩れが起きて、大勢の人が地中に埋められても、労働優先で人命救助は行われません。人を人とも思わぬ光景が広がっているんです。

<まわりは全員敵>

収容者には十分な食事が与えられません。でも、日々の肉体労働で体は酷使しているので、彼らは常に空腹状態。ルールに違反している者をチクれば、褒美に食料が与えられるということもあり、食料につられ、優しさや思いやりも失くしていく人が多いんです。もう全員敵ですよね。誰も信じることなんてできません。そんな状況なので、主人公のヨハンも心がすさんでしまい、他者を欺く側にまわってしまいます。

<地獄の中で見つける小さな光>

極限状態に陥るような過酷な環境なので仕方ないのかもしれませんが、人の心を失いかけたヨハンも、家族の死をきっかけに、徐々に元の優しい青年に戻っていきます。彼は妹といっしょに、収容所にいる人々の最期を看取ることに意義を見出していくんですが、憎しみと懐疑心が蔓延した収容所において、唯一温かさを感じるところでした。

そこから、現状を打破するために、彼が起こした小さな革命は思わぬ方向へ広がりを見せ、映画としても十分楽しめる内容になっていました。僕だったらもうあの状況に疲れ果てて、抗うことすらあきらめてしまいそうですが、愛する家族のために踏ん張れる主人公の強さは印象に残ります。実際にモデルとなる人物がいたんでしょうか。

<その他>

絵は一昔前のCGという感じで、『ウゴウゴルーガ』を彷彿とさせるタッチに懐かしさを感じますが、監督いわく、実写だとホラーっぽくなってしまうということで、あえてそうしたのだとか。

個人的には、実写でも観たい気もしますけどね。

全体的に、あくまでも映画なのでフィクションとなる部分もあるんでしょうけど、北朝鮮の政治犯強制収容所がどういうところであるのか、イメージをつかむ上では非常に有意義な映画だと思いました。


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