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"さようなら"がない『ノマドランド』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:26/55
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ロードムービー
ドキュメンタリー風
ノンフィクションベース
ノマド
キャンピングカー

【あらすじ】

企業の破綻と共に、長年住み慣れたネバタ州の住居も失ったファーン(フランシス・マクドーマンド)は、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込んで、〈現代のノマド=遊牧民〉として、季節労働の現場を渡り歩く。

その日その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流と共に、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく──。

【感想】

広大な土地を行き交うロードムービー。と、一見思いますよね。確かにそうなんです。そうなんですが、自由気ままな生活とは程遠い現実がそこにはあります。

本作は、『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』 というノンフィクション本を映画化したものです。2000年代後半から2010年代初頭に起きたグレート・リセッション(世界的な経済衰退)を原因に、生活が苦しくなり、職を求めて各地を転々とせざるを得なくなった人たちの話になります。

ファーンたちはキャンピングカーに乗って、様々な場所に出向き、安い賃金で過酷な肉体労働に従事していて、その状況を細かく伝えてくれる点において、ドキュメンタリーに近い内容でした。ね、自由気ままに旅をしている人たちとは違うでしょう?

しかし、彼女らがその不安定な状況を嘆く様子はなく、新しい出会いや助け合いをある意味楽しんでいるようにも見られ、たくましさを感じられる作品でもあります。自ら誇りと意志を持って行動しているからでしょうね。

こうした、いわゆる「ノマド」のような生き方を目の当たりして、作中のファーンたちは生活のためにそうせざるを得ない状況ではありますが、リモートワークが当たり前となってきた今の時代、モノや場所にこだわらないのであれば、こういう生き方もアリなのかなと思いました。僕は映画館で映画を観るという趣味があるため、やっぱり都心に暮らす方が便利なんですけどね。地方にもシネコンはありますが、やっぱり単館は都心に密集しているので。

また、本作に出演している人たちの多くは、現実にノマドとして生活しているんですよ。アメリカでは、まさにこういう人たちがいるから共感されやすい映画だと思いますけど、日本だとどうでしょうねー。海を越えた地での話だと、現地の人よりは現実感薄いかもしれません。それでも、面白い作品ではありますが。

あと、この映画、リアルな描写も印象的でした。フランシス・マクドーマンドが野ションしたり、簡易トイレで用を足したり、素っ裸で川で泳ぐ姿など、そういう露なシーンを惜しげなく映し出しているところにリアリティを感じますし、そこまでやる彼女のスタンスにも驚かされました。邦画でここまでやってる映画、観たことないですよね。そういうシーンは隠すか、そもそも入れないですよ、作品の中に。でも、これはありのままを映し出していますから。

そんなフランシス・マクドーマンドなんですが、ずっと観ていると大竹しのぶに見えてくるんですよね。多分、ショートヘアってところが似ているからだと思いますが(笑)

現代のノマドの現実を知りたい方はぜひ観てみてください。彼らの素敵な考え方のひとつに、「さようならがない」っていうのあがるんですよ。別れるときは「またどこかで」。だから、死んだ人ともまたどこかで会えるって信じてるんです。なんか、心が洗われる感じがしますね。

なお、広大な土地を感じるために、映画館で観ることをオススメします。


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