天才ここに極まれり『マックイーン:モードの反逆児』

2019年公開映画54本中38位。

希代のファッションデザイナー、
アレキサンダー・マックイーンのドキュメンタリーです。
ドキュメンタリーなので、他の映画と比較しづらいけども。

これを見て思ったのは、
どういう環境にいたらああ育つのかということ。

本名はリー・アレキサンダー・マックイーン。
(アレキサンダーはまさかのミドルネーム)
6人兄弟の末っ子。
幼い頃に虐待された経験あり。
初コレクションは失業保険で。
彼と働きたいがために、
お金のない彼にお金を工面してあげてまで働くという人もいるほど。

とにかく普通であることが嫌。
ショーも、観客は絶賛するか酷評するかのどちらかでいい。
それ以外は認めない。

そういう性格を反映してか、
1995年のショー「ハイランド・レイプ」では、
女性がまさにレイプされたかのような服装をモデルに着させ、
ランウェイを歩かせる。
髪は乱れ、服は破られ、おっぱいも露わに。
当然、酷評ではあるけど、注目を浴びるという点では大成功。

その他にもサランラップでモデルをぐるぐる巻きにしたり、
半ケツで陰毛が見えるような格好をさせたり、
蛾まみれの太った女性を使ったり、
「ファッションとは」と考えさせられるものばかり。

ただ、天は二物を与えずなのか、
極度のストレスによるものなのか、
恋人が側にいないと浮気だと疑い、
自分の元を去る人はみんな敵視するという、不安定な精神も。
さらに、大金を得るようになると薬に手を出したり、
脂肪吸引をしたりと、極端な行動にも出る。

そんな彼でもいっしょに働きたいと思う人がいるぐらい、
情熱と才能に満ち溢れている。

1年に10回以上もショーがあったらしいからね。
本人もかなり大変だったろうが、
従業員のために自分が働かないと彼らが路頭に迷うという、
想像を絶するプレッシャーもあった模様。
ただ服が好きなだけだったのに、影響力が大きくなると、
それ以外のところで押しつぶされそうになるんだな。

しかし、自らを見出してくれたイザベラ・ブロウの死、
そして最愛の母親の死もあり、
リー本人も2010年2月11日、40歳の若さで自殺。

彼と関わった人もインタビューで言っていたけど、
「あんな人は滅多に現れない」と。
彼のデザインや言動を見るとわかるけど、
ああいうのを本当の唯一無二って言うんだろうなと感じる。
もはやデータや客観性とは真逆に位置する感じ。
存在そのものが、普通の人間とは違う別の生物のよう。

ああいう芸術家タイプの人は、
自ら創り出すものは素晴らしいのに、
精神が不安定だったり、
対人関係が複雑というのはよく聞く話だ。

一体、なぜなんだろう。
もはや感覚が違いすぎるから憶測でしかないけど、
例えば一般人が対人関係にパワーを割くところを一切割かない代わりに、
創作活動にすべてを注ぐからなのか。

自分が何かに欠けていると認識しているから、
それを埋め合わせる意味も込めて創作に力を入れすぎるからなのか。

なんにせよ、価値観や感性がとてつもなく振り切れていて、
ある意味うらやましいです。

それにしても、ファッションデザイナーのドキュメンタリー映画って
ちょいちょいあるなと思ってて。
去年も『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』とか
『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』とか。

ファッションは好きだけど、
ドキュメンタリーはあんまり興味ないなあと思って見てなかったものの、
アレキサンダー・マックイーンは
10年近く一貫して好きなブランドだったから、
その本人の動く姿や声を実際に見聞きできてうれしかったです。

何年か前からか値段が高くなって、
最近ほとんど買えてないけど。。。(笑)

ちなみに見に来ている客層は当然ながら、
この前の『L♡DL』とは大違い。
むしろその2つにハマる自分のような人も、そうそういないかも?(笑)

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