原作にない新しいエピソードも追加された『ホムンクルス』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:69/73
ストーリー:★★☆☆☆
キャラクター:★★☆☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★☆☆☆
映画館で観るべき:★☆☆☆☆
【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
サスペンス
ホラー
漫画原作
ホムンクルス
【あらすじ】
一流ホテルとホームレスが溢れる公園の狭間で車上生活を送る名越進(綾野剛)。過去の記憶も感情も失い、社会から孤立していた。
そこに突然、奇抜なファッションに身を包んだ研修医・伊藤学(成田凌)が目の前に現れる。
「頭蓋骨に穴を空けさせて欲しい」
突然の要求に戸惑う名越だったが、“生きる理由”を与えるという伊藤の言葉に動かされ、第六感が芽生えると言われるその手術<トレパネーション>を受けることに。
術後、名越が右目を手で覆い、左目だけで見たのは、人間が異様な姿に変貌した世界だった。その現象を「他人の深層心理が、視覚化されて見えている」と説く伊藤。彼はその異形をホムンクルスと名付けた。
ホムンクルスと化した人々の心の闇と対峙していく中で、名越の過去が徐々に紐解かれ、自らの失った記憶と向き合うことに。
果たして名越が見てしまったものは真実なのか、脳が作り出した虚像の世界なのか?取り戻した記憶に隠された衝撃の結末とは?!
【感想】
この映画を観るにあたり、原作漫画も読みましたが、よくこのオカルトチックな世界観を実写化したなっていう意味では拍手を送りたいです。原作のイメージに合う配役に、バケモノじみたホムンクルスの再現など、世界観としてはうまく作られているなーって。
ただ、個人的には原作のよさが薄れてしまったようにも受け取れたんですよね。そもそも、ホムンクルスというのは、人間の深層心理に根付く自己認識、不満、トラウマなどが表面化した姿形をしているんです。太っていても中身がない人はペラペラの紙のようだったり、日常生活に生きづらさを感じている人は水の中にいるように見えたり、といった具合に。
名越はそんなホムンクルスと関わり合うことで、自らの過去と向き合っていきます。だから、人間の内面の深い部分をえぐり出すようなストーリー展開がよくて、自分に置き換えても共感できるところが多いんですよ。
しかも、名越は自分のつまらない人間性を外見のせいにして、整形手術までしてしまうも、手に入れたのは物質的な豊かさのみで、本当の自分とは何かと虚無感に襲われる流れは、彼の心の闇を語る背景として非常に魅力的です。
しかし、やはり映画は尺が限られていることもあって、表面的な部分しか描かれていないように感じたんですよね。これはもう仕方ないことんだとは思いますが。
エピソードも原作と同じ、組長と女子高生の話がありますが、オチは同じものの、展開の仕方は異なりました。そこに、名越が彼らと関わる中での考察や心理描写もほぼなく、かなり駆け足でサラッと描かれているのみなので、漫画を読んでいる人にはわかるだろうけど、初見だったらかなり唐突な感じがするんじゃないですかね。
後半で描かれていた話は映画オリジナルの新しい展開ですが、原作の世界観に沿った話というよりは、普通のサスペンス映画っぽく感じたので、ちょっと消化不良感はあります。もっと、精神的にグチャミソした感じを期待していたんですけど(笑)
この作品は、本来であれば人間の深層心理に潜む闇と真っ向から対峙していくのがウリとなるはずなんですが、映画版ではそこが弱かったので、物足りなさを感じる人はいるかもしれません。
2時間の映画じゃなくて、ネトフリとかで連続ドラマにした方が原作のよさがもっと出そうかなって思いました。
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