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シリーズで最も暗く静かな『るろうに剣心 最終章 The Beginning』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:11/102
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★★
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★★

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

アクション
ヒューマンドラマ
週刊少年ジャンプ
るろうに剣心
幕末

【あらすじ】

動乱の幕末。緋村剣心(佐藤健)は、倒幕派・長州藩のリーダー桂小五郎(高橋一生)のもと、暗殺者として暗躍。血も涙もない最強の人斬り・緋村抜刀斎と恐れられていた。

ある夜、剣心は助けた若い女・雪代巴(有村架純)に人斬りの現場を見られ、口封じのため側に置くことに。

その後、幕府の追手から逃れるため、巴と共にに農村へと身を隠すが、そこで、人を斬ることの正義に迷い、本当の幸せを見出していく。

しかし、ある日突然、巴は姿を消してしまうのだった…。

【感想】

まずはこの10年に及ぶ歴史に終止符を打ったことに拍手でござるよ!
僕の好きな『るろうに剣心』をここまで原作に近く、かつ+αの要素も加えた形でシリーズ化するなんて感謝しかなかったです!!日本の漫画原作の実写映画で、5作品も続いたのってこれまであったのだろうか。

<今作はまさしく"エピソード0">

さて、今回の映画は剣心の秘められた過去に迫るストーリーとなっています。原作では、雪代縁が襲ってきたとき、それまでずっと語って来なかった過去を仲間たちに明かす形で展開されていましたが、映画では回想ではなく、前日譚や"エピソード0"的な感じで楽しむことができます。まさに、『スター・ウォーズ』シリーズで、エピソード4~6をやった後に、エピソード1~3を観る感覚ですね。

<過去作とは一線を画す作り>

今作は過去4作品とはまったく違う作りになっているのが印象的です。とにかくね、暗いんですよ。画の色も、そして剣心の心も。仲間と呼べる存在は皆無で、新時代が来ることを信じて、ひたすら人を殺め続けるだけですからね、明るいシーンもなければ、笑いの要素もないですよね。そんな場合違いますよ、と。まあ、原作漫画では巴のくだりをいじるところで、ちょっとコメディタッチな部分もありましたが、映画版には一切ないです。

<注目して欲しい"音">

今作が他と大きく違うなというのがもう一つ。それは、剣心が手にしているのは逆刃刀ではなく、真剣だということ。これで何が変わるかというと、"音"なんです。これまでは逆刃刀を振るっていたので、人を斬るときは斬撃ではなく打撃に近い感じですよね。なので、金属を肉に打ちつけるかのような「ドンッ」って音が特徴的でした。

それに対し、今回は普通の刀なので、まさに鋭利な刃物で肉を斬る「ザシュッ」って音に変わっているんですよ。刀で斬るんだからそりゃそうだろうって話なんですが、これまで"不殺"の誓いを守り、人を殺さなかった剣心の経緯を踏まえると、とても大きい違いじゃないですかね。

<"倒すべき敵"の不在>

ちょっと語弊があるかもしれませんが、今回の映画には、特定の敵ってのがいないんですよ。過去には鵜堂刃衛や志々雄真実、雪代縁のように、剣心と因縁のある敵キャラがいて、彼らをを倒す目的がありましたが、今回はそれがありません。

もちろん、夜な夜な人を殺したり、今作のラスボスである"闇乃武"のメンバーはいますよ。けれど、いずれも剣心とのつながりは薄く、あくまでも新時代を作るための「通過点としての敵」という印象が強く、「到達点としての敵」っていう感じはしません。

そういう意味では、今回の映画は戦い自体に興奮し、楽しむというアクション映画的な要素はあまりなく、剣心と巴のやり取りを通じて、愛しさと切なさを感じるヒューマンドラマに近いかなって思いました。人によってはそれがちょっと地味に映るかもしれません。特に過去シリーズと比べてしまうと、ね。

<物語の精度の高さ>

※少しネタバレ入ります。

この映画で「やってくれるぜ!って思ったのは、原作の改変は行わず、この映画で重要でないところをうまくそぎ落とし、さらにファンならうれしい+αを入れ込んでくるところです。前作でも、剣心と宗次郎の共闘というサプライズがありましたが、今回にもあります(まあ、ニュースになっていたので知っている人も多いかと思いますが)。

そぎ落とした部分について思うのは、正直、原作が好きな身からすると、ちょっともったいないかなってことです。原作では、剣心が巴を斬り殺してしまったことで、縁がショックを受け、白髪になってしまうシーンがあるのですが、今作ではそういうシーンがありません。せっかくなら縁の恨みつらみにもう少しつなげてもよかったなとは思います。まあ、まあ、前作を観ていない人もいるから、縁にそこまでフォーカスしなくても、、、と思ったのかもしれませんし、何よりも今作は剣心と巴がメインなので、他の要素は極力減らしたのかもしれません。

でもねー、それなら白梅香は入れて欲しかったなー。あの香りで剣心がいろいろ気づくことも多かったので。とはいえ、映画は映像で見せるから、香りは観客に伝わりづらく、カットされるのもわかりますけど。まあ、もともと原作よりはOVAの『追憶編』をベースにしてるっぽいので、原作とは違って然りかなって気もします。

追加シーンについては、新選組にきちんとフォーカスしてくれたのがうれしかったです。特に、"彼"との戦いはファンにはたまらないですよね!

<その他>

全体的に、超絶アクション満載の前作の方が個人的には好きですが、剣心の暗い過去、そして、巴が彼に対して想った、「この人は私の幸せを奪った人…そして、もう一つの幸せをくれた人」と思えるエピソードを観れたのはとても満足です。

一面の銀世界に映える鮮血の色合いは脳裏に焼き付きます。
シリーズ完結編はぜひ劇場で!


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