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実は3人目の主人公が一番アツい『BLUE/ブルー』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:32/69
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
スポーツ
ボクシング
パンチドランカー
『ダイの大冒険』のポップ

【あらすじ】

誰よりもボクシングを愛する瓜田(松山ケンイチ)は、どれだけ努力しても負け続き。一方、ライバルで後輩の小川(東出昌大)は、抜群の才能とセンスで日本チャンピオン目前、瓜田の幼馴染の千佳(木村文乃)とも結婚を控えていた。

千佳は瓜田にとって初恋の人であり、この世界へ導いてくれた人。強さも、恋も、瓜田が欲しい物は全部小川が手に入れた。それでも瓜田はひたむきに努力し夢へ挑戦し続ける。

しかし、ある出来事をきっかけに、瓜田は抱え続けてきた想いを2人の前で吐き出し、彼らの関係が変わり始める―。

【感想】

今作の監督は吉田恵輔さんです。僕が好きな『ヒメアノ~ル』(2016)や
愛しのアイリーン』(2018)といった、かなりグチャミソした映画を撮っていますが、この映画はおとなしいのでご安心を(笑)

さて、この映画、やられました。瓜田と小川がメインの話だと思ったんですよ。2人の男の青春劇かなって。そうしたら、いたんですよ、もうひとり。いや、自分の中でそう思ってるだけなんですけどね、それが、楢崎(柄本時生)です。

彼は最初、バイト先のパチンコ店で働く同僚の佐藤多恵(吉永アユリ)にいいところを見せたくて、ボクシングジムに入会します。動機が不純(男子としては健康)。体力もないし、度胸もないし、「趣味程度でいいんで~」、
「痛いのは嫌です~」と、ボクシングしてる"風"を希望していました。

ところが、面倒見のいい瓜田の指導の下、着実に実力を伸ばし、なんとプロテストに合格してしまうんですよ。先輩ボクサーを差し置いて。やがて、試合にも出て勝ちたいという欲が出てきます。『ダイの大冒険』のポップかよって。今回の物語で一番成長してますよ、彼。

しかも、楢崎を語る上で外せないのが、「基礎の大切さ」なんですよ。先ほど、先輩ボクサーを差し置いてプロテストに合格したって言いましたが、その先輩ボクサーは「俺には俺のやり方があるんで」と我流を貫いたんですね。人の忠告を聞かず。勝ち負けだけで言ったらその先輩の方が強いかもしれません。でも、基礎を忠実にこなしてきた彼を、楢崎は打ち倒します。『スラムダンク』でも、ずーっと体育館の隅っこで基礎練習をしていた桜木花道も、その後目覚ましい成長を遂げていますよね。スポーツやっている人は特にそうだと思いますが、基礎の大切さが身に染みる瞬間でした。僕も基礎をおろそかにして、すぐ飛び道具に頼ろうとするところがあるので、いい教科書になりました(笑)

ここまで書くと、「楢崎の話ばかりしやがって」って思うかもしれませんが、それも訳があるんですよ。肝心の瓜田の表現に物足りなさを感じたからなんですよねー。なぜ、彼は負け続きなのか。あれだけ分析力があって、ボクシング愛も強いのに。そもそも勝つ気がないのか、それとも実践にとことん弱いタイプなのか、そこは謎に包まれたままです。負けてもヘラヘラしてるから全然心が読めないんですよ。ただ、突如として彼はジムを辞めています。

僕が思うに、きっと、彼は誰よりもプライドが高かったんじゃないでしょうか。本当は勝ちたかったんです、試合に。負けたら誰よりも悔しかったんです。小川にも強い嫉妬がありました。ボクシングでも負け、初恋の人も取られたんですよ。でも、それを声に出して言うのは恥ずかしかった。だから、笑って誤魔化してきたんです。それが限界に来たから、辞めたんじゃないですかね。黄色信号はなく、いきなりの赤信号です。優しい人ほど、キレると何するかわからないって言いますけど、ある意味そういうパターンかもしれません。劇中でもやや匂わせる程度で、明確に瓜田の内面を映すことがなかったので、ここはもう少し、彼の心の内を見られるとよかったかなーって思いました。

ラストもちょっと尻切れトンボみたいで、やや不完全燃焼ではありますが、スポーツに燃える男たちの生き様は、やはり何か感じるところがありますね。

それにしても、ここ最近、ボクシング映画がちょこちょこ作られていますよね。『百円の恋』(2014)、『あゝ、荒野』(2017)、『アンダードッグ』(2020)など。人と人がフィジカルでぶつかる映画ってやっぱり見ごたえありますよね。とはいえ、日本には洋画ほどそういう殴り合う設定って馴染みがないじゃないですか。そこで、正当に殴り合えるのがボクシングだから、
みんな作るんですかね(笑)


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