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祖父母や両親、自分たちの老後をどうするかを考えるきっかけになりそうな『83歳のやさしいスパイ』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:97/143
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ドキュメンタリー
老人ホーム
スパイ

【あらすじ】

妻を亡くして新たな生きがいを探していた83歳の男性セルヒオは、80~90歳の男性が条件という探偵事務所の求人に応募する。その業務内容は、ある老人ホームの内定調査で、依頼人はホームに入居している母が虐待されているのではないかという疑念を抱いていた。

セルヒオはスパイとして老人ホームに入居し、ホームでの生活の様子を毎日密かに報告することなる。しかし、誰からも好まれる心優しい彼は、調査を行うかたわら、いつしか悩み多き入居者たちの良き相談相手となっていく。

セルヒオは無事にミッションをやり遂げることが出来るのか。

【感想】

「スパイ」という邦題にだいぶ引っ張られますが、アクションやコメディではなく、れっきとしたドキュメンタリーです。しかも、老後をどうするかっていうことを考えるきっかけにもなりそうな興味深いテーマでした。

<スパイとは言うけれど>

依頼者は老人ホームに預けた母親が虐待を受けているのではないかという疑念から、セルヒオたちに調査を依頼します。内部を調べるとなると、もう潜入するしかないですよね。スパイと言えばスパイですけど、、、ちょっとそこに引っ張られて欲しくないなと、本編を観ると感じますね。

<セルヒオが施設内で見たもの>

老人ホームの中は快適です。職員も入居者もいい人ばかりで、穏やかな時間が流れていますから。もちろん、盗難があったり、ちょっとケンカ腰な物言いな人もいますけど、それ以外は至って健全な場所です。セルヒオは調査を進めながらも、いろんな入居者と話してあることに気づきます。それは、ここにいる人はみんな孤独を感じているということ。もちろん、入居者同士で友達関係を築く人もいるけど、家族の面会が極端に少ない人や、もはや家族に忘れられたような人さえいるんです。幸いセルヒオには家族がいます。妻には先立たれたものの、3人の子供、5人の孫もいて、彼自身は恵まれた環境ですが、そうじゃない人の方がこの映画では多い印象でした。

<施設に入れることの是非>

これはもう各家庭の事情があるので何とも言えないですよね。ただ、施設に入れるということは、それなりの負担がどこかにかかっていることでもあるから、健康や介護の手間暇のことを考えたら、正しい選択かもしれません。でも、正しさだけで片付けられる問題ではないですよね。

この作品では悲しいシーンや心が痛むようなエピソードはないので、そこは安心して観れるんですけど、それでも老人ホームに入った老人たちが抱えうるであろう孤独に直面するのは確かです。人付き合いをうまくやれる人や、家族と仲悪いから施設に入った方がマシだという人、趣味に没頭できる人とかなら、こういうところに入るのもアリだとは思いますけど、でもやっぱりふとしたときに寂しさを感じるんでしょうか。

<その他>

老人たちがお遊戯会をしたり、ちょっとした色恋沙汰になったりしているのは、まるで小さな子供を見ているような感じだったので、生命の始まりと終わりは、似た雰囲気を持つものなのかもしれません。

僕の家はもう祖父母みんな亡くなっていますが、健康であっても両親だとあと20年、自分もあと50年したら、施設のことは考えなければならないことなので、非常に興味深い題材でした。


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