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最後まで観ないとわからないけど、最後まで観るとさらにわからない『くれなずめ』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:58/86
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
青春
佐々木、イン、マイマイン

【あらすじ】

優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌)。
劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)。
既婚者となったソース(浜野謙太)。
会社員で後輩気質の大成(藤原季節)。
唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹)。

高校時代の帰宅部仲間がアラサーを迎えた今、久しぶりに友人の結婚式で再会。満を辞して用意した余興は、かつて文化祭で披露した赤フンダンス。赤いフンドシ一丁で踊る。

そして迎えた披露宴。まさかのだだスベりで終わった。こんな気持ちのまま、二次会までは3時間。長い、長すぎる。

そして誰からともなく、学生時代に思いをはせる。でも思い出すのは、しょーもないことばかり。

「それにしても吉尾、お前ほんとに変わってねーよな。
 なんでそんなに変わらねーんだ?まいっか、どうでも。」

そう、僕らは認めなかった、ある日突然、友人が死んだことを─。

【感想】

亡くなった友人を軸に話が進んでいくので、昨年公開された『佐々木、イン、マイマイン』に似た雰囲気の映画だなーと思いました。同じ藤原季節が出ているから余計にそう感じますね(笑)

<ほとばしる男の友情と30代のモヤモヤ>

男同士の友情。しょーもないノリ。昔を懐かしむおっさんになった仲間たち。あー、これこれ。この感じ。思うんですけど、30歳に差し掛かる頃ってそういう年頃なのかもしれませんね。例えば、60歳を過ぎて、学生時代を懐かしむっていう物語はあまり見ない気がします(僕が知らないだけかもしれませんが)。

30代に突入すると、仕事も板についてきて、人によっては結婚もして、子供も生まれて、ライフステージが変わる頃ですよね。現実的なことが増えて、楽しいことばかりじゃないですよ。そんなときふと、何も考えずにはしゃいでた昔を思い出します、僕も。あのときの些細な日常は、今となっては映画や小説に出てくるようなファンタジーの世界になり替わりますよね。

こういう懐古的な行為というか現象自体に共感を得る人は少なくない気もします。そして、こういうのがおっさんの青春でもあるのかもしれませんね。昔を懐かしむということ自体が。歳を取りすぎると、はるか遠い思い出にしかなりませんが、30代だとちょっと手を伸ばせば戻ってくるんじゃなかろうかって思える絶妙な年頃ですよ。

こういう、何か目的があるわけでもなく、難題を乗り越えるわけでもないんですけど、誰もが感じるであろうアンニュイな部分、モヤッとした部分を描くのが非常にうまいですし、ノスタルジックな気分に浸れるのは心地よいです。

<監督の手腕>

今作で監督を務めた松居大悟監督は、ご存知『バイプレイヤーズ』を手掛けたことで知られていますね。他にも『男子高校生の日常』とか『君が君で君だ』など、行き場のない想いを抱えている人たちがよく出てくる作品を撮られているんですが、この松居監督と、先日公開された『街の上で』の今泉力哉監督というのは、主に20代~30代らへんの人たちをメインに、心の中にある言葉では言い表しづらいものを、作品とそこに生きる登場人物を通じて、観客といっしょに体験していくことを描くのが上手なんですよね。同世代の身としては、自分を見ているようで気恥ずかしく感じる部分もあるんですけど(笑)悪を倒すとか、世界を救うとか、そういう映画もわかりやすくて僕は好きですが、普通の人生でそんなことほとんどないじゃないですか。むしろ、先のお二方の映画に出てくるような、答えの出ないモヤモヤを抱えていることの方が多いじゃないですか。だからかな、共感を呼べるんじゃないかと思うんですよね。

<光る役者さんの演技>

もちろん、役者さんの演技も素晴らしかったです。個人的にはメイン6人よりも、ジャイアン感しかない城田優と、男勝りすぎる前田敦子のキャラクターの方が印象的でしたね。「こういうやついたなー」って懐かしさと、「おういう人いたらめんどくさいよなー」っていう嫌悪感がバランスよく出ていました(笑)終盤、畑で感情をむき出しにしている若葉竜也の演技にも涙が出ましたね。

<それでも僕があまりハマらなかった理由>

確かにいい映画でした。でも、個人的な順位があまり高くないのは理由がります。

まず、前半の内輪ネタ。仲間内で盛り上がる映画なので仕方ないのですが、第三者から観ると置いてけぼり感あるんですよ。まあ、これは他人の内輪ネタほど冷めた目で見てしまう僕の性格ゆえかもしれませんが(笑)

あと、終盤の展開がいろいろぶっ飛んでて謎すぎたことです。例えるなら、ずっとおいしい蕎麦を食べていたのに、いきなり激辛麻婆豆腐をつゆの中にに流し込まれた感じと言いますか、、、まあむせますよね(笑)ちょっと展開がわかりづらかったので、これは好みが分かれそうかな~。


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